しんがり 山一證券最後の12人
清武英利(著)
/講談社文庫
作品情報
負け戦のときに、最後列で敵を迎え撃つ者たちを「しんがり」と言います。戦場に最後まで残って味方の退却を助けるのです。
四大証券の一角を占める山一證券が自主廃業を発表したのは、1997年11月のことでした。店頭には「カネを、株券を返せ」と顧客が殺到し、社員たちは雪崩を打って再就職へと走り始めます。
その中で、会社に踏み留まって経営破綻の原因を追究し、清算業務に就いた一群の社員がいました。彼らの一部は給与も出ないまま、「しんがり」を買って出て、無一文に近い状態になっています。この中心にいたのは、会社幹部に裏切られながら業務の監査をしていた人間たちで、証券会社では「カネを稼がない、場末の連中」と陰口を叩かれていた人々でした。・・・
山一證券の破綻を、記者会見で号泣した社長の姿とともに記憶している方も多いことでしょう。「社員は悪くありませんから!」という絶叫でした。
社長までが泣く、その大混乱にあって、「しんがり」の彼らはなぜ筋を通そうとしたのでしょうか。逆襲なのでしょうか、意地でしょうか、優しさなのでしょうか。
山一が消えたあとも、彼らは不器用な人生を送っています。しかし、決して不幸ではないと言います。「会社の破綻なんて人生の通過点に過ぎないよ」「潰れたって、何とかなるんだ」と。
一生懸命生きていれば、きっと誰かが見ていてくれる。――そんな彼らのメッセージは、どんな会社が潰れても不思議のない、リスク多き時代を生きる人々の励ましとなるのではないでしょうか。
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商品情報
- シリーズ
- しんがり 山一證券最後の12人
- 著者
- 清武英利
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2019.11.14
- Reader Store発売日
- 2019.11.22
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 448ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
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俺はまたも便利や使いされようとしているのか!
山一証券の破綻に際し前例のない企業内の詳細な調査を実施し、報告書を公開したのはそれまで日のあたらない場所にいた業務管理本部長の嘉本隆正常務をリーダーとする七人の調査委員とそれを助ける少数のメンバーだっ…た。
会長の行平は捜査が本格化した後も「うちには違法行為はない」と言張り会長の座も日本証券業協会長の座も降りようとしなかったが8月6日後任社長人事に乗り出す。山一にはこれまで企画室の室長をしていなければ社長につけないという不文律があった。また法人営業部は山一の主流派であり社内権力と呼ばれている。行平は引責辞任の後も権力を手放すつもりはなく、社長選びは難航した。まず総会屋事件に関わっていたり監督責任を問われるものはだめだ。次に企画出身では内部の抵抗が大きい。その上で自分たちの言うことをきかせられる人物。一方で傍流のリテール部門や若手の役員たちは体制の変更を望んでいたがそれを自分がやるというものは結局現れず社長候補を擁立できなかった。そうして選ばれたのが自主廃業の発表時に「社員は悪くありませんから!悪いのは我々なんですから!お願いします。再就職できる様お願いします。」とテレビの前で泣き叫んだ野澤だった。
11月18日嘉本は経営企画室を所管する常務の藤橋から唐突に切り出される「実は、当社には含み損が約2千6百億円あります。」そして業務管理部がSESCの窓口として報告書を提出して欲しいと。翌19日には大蔵省から自主廃業を通達され22日には日経がスクープした。そしてその日の臨時取締役会で野澤社長がこう言った。「(不良債権が発生した経緯は)嘉本常務に依頼して調査を開始しました。」社長がこの調査を依頼したのはほんの1時間前の話だった。
俺はまたも便利や使いされようとしているのか!
怒りを腹の内ににしずめ嘉本は徹底的な調査を決意する。全権委任をこの場で取り付け嘉本と業務管理部が会社の中枢と山一の看板部門の法人部門に喧嘩を売った瞬間だった。取締会では立派なことを言いながらさっさと見切りを付け再就職した若手取締役に対し嘉本を含めた数人の取締役は調査委員として無給で働き始めた。一方で菊野は会社の清算を引き受ける。顧客から預かった株券や資産の返却、再就職の斡旋、そして債務隠しの真相をあばく社内調査それが12人の「しんがり」の山一での最後の仕事だった。
結論から言うと飛ばしの実態はバブル期以前に遡る。当時社長候補だった行平の部下が複数の架空子会社の決算期の違いを利用して債務を飛ばし、ある問題が発覚したとき行平が責任を取って海外に飛ばされた。行平復権を狙う法人部門はこれまで以上に利益追求に走り、顧客からの預かり資産を裁量で運用し、損失が出れば補填し利益が出れば他の損失を埋め合わせた。時には利益を個人で着服し、ある元副社長は年間5百万を越える飲食費やゴルフ代を会社につけまわした。役員たちは会社の金で遊んでいた。嘉本の元にはさまざまな内部通報が届いたがそこまで手は回らない。密告者は自分は表に出ず嘉本らに丸投げしようとした。リテール部門もそんなに上品なわけではなく目標達成のためによく分かってない相手に無理矢理売りつけるケースもあった。しかしそう言うことが出来ず疎まれたものが流されてきたのがこの業務管理部だったのだ。
嘉本らの調査の結果90年過去最高の決算を出した年に既に簿外債務は1300億ほどに膨らんでおり破滅的状況だった。ヒヤリングでは当時の大蔵省証券局長が飛ばしの支持をだしたとの証言が得られている。「私たちは私たちを変えてゆきます」91年秋に山一はこう新聞広告を出し業務管理本部を新設したが首脳陣の意識と行動は何も変わらず、行平の権力基盤は強化され、その一方で行平自身も当事者能力を失っていた様子がうかがえる。社長の三木はこう言った「行平さんがこれしかないと言うからしょうがないでしょう」後の副社長で経理担当常務だった白井はこう言う「会長と社長のハラが固まっていなかった。どんな意見具申をしても、上のハラが固まらないとどうしようもなかった」白井を含めて代表権を持つ副社長は5人もいたのだが何のための代表権だったのか。
そして最後にハラを決めたのがあぶれものの嘉本たちであり、自分も株主代表訴訟に会うことを覚悟で実名の報告書を公表したのだ。山一が自主廃業に追い込まれたのはスケープゴートになった面もあるが会社の幹が腐っていたからだ。何も知らない現場の社員にとっては迷惑な話だがその多くが再就職できたことが救いだ。続きを読む投稿日:2019.12.12
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経済小説としても読みごたえがあった。その後、粉飾決算で世間を騒がせた多数の企業と同様で、組織がだめになる時って、ある意味共通点があると思う。
投稿日:2023.01.26
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