もうひとつの曲がり角
作品情報
野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化賞大賞、IBBYオナーリスト賞など数々の賞を受賞する岩瀬成子氏の最新長編作品。
柵には半開きになった木の扉がついていて、その扉に「どうぞお入りください」と青色のマジックで書かれた板がぶらさがっていた。
「いやだ。あたしはそんなところへは、ぜったいに入らないから」ときこえた。
えっ。どきんとした。
庭木のむこうからだった。わたしにむかっていったんだろうか。
わたしは耳をすまして、木々にさえぎられて見えない庭のようすをうかがった。
しんとしていた。
だれがいるんだろう。
わたしはぶらさがっている板をもう一度見た。
それから足音を立てないようにして、そっと扉のあいだから庭に入っていった。しかられたら、すぐににげだすつもりだった。ちょっとだけ、のぞいてみたかった。──本文より。
小学五年のわたしと中一の兄は二ヶ月前、母の理想の新しい家、市の西側から東側へ引っ越してきた。この町で通い出した英会話スクールが休講だったので、わたしはふと通ったことのない道へ行ってみたくなる。道のずっと先には道路にまで木の枝が伸びている家があり、白い花がちらほらと咲いて・・・・・・。
日本絵本賞、講談社出版文化賞、ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、オランダ銀の石筆賞など受賞の酒井駒子氏による美しい装画にも注目!
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
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岩瀬成子さん、好きなのだけど、子どもの心情を描くのが上手すぎて、辛くなってしまうことも度々ある。
これは『マルの背中』や『ぼくが弟にしたこと』みたいに、明らかに問題のある家庭の話ではないのだが、どこに…でもある普通の家庭の息苦しさが伝わってくる。
第1子が中学生になる時期に、賃貸マンションから一戸建て(中古をリフォーム)に引っ越した家族。父は通勤時間が長くなり、母はパート、家事育児、近くに住む老父の世話と、ゆとりのない生活。中古ではあるが新居の手入れもある。中学生の息子と、小五の娘は思春期となり、親の言うことを聞かなくなる。こういう家庭は日本中どこにでもあり、戦争中の外国の家庭や貧困、DVに悩む家庭に比べれば、幸せと言えるくらいだが、じゃあそこにある問題はとるに足りないどうでも良いことかといったら、そんなことはない。本人達にとっては重大で、時には生命の危機にもつながりかねない危険を孕んでいる。
語り手は小五の女の子なので、彼女が感じ取れる範囲で描かれているので、表現はソフトだが、リアルだった。まざまざと思い出すなあ。全く同じシチュエーションじゃなくても。
特に、通勤仕事で疲弊している父親が、パート勤めの妻に子どもに関することを丸投げ。妻は子どものためにと家計の負担となっても塾に通わせたり、部活の道具を揃えてやったりしているのに、二人ともやめたいと言い出す。つい口うるさくなる。父親はたまにしか子どもと会わないから、子どもの味方をする。私が悪いの?という母親の怒りとイライラが分かりすぎる。
でも、岩瀬さんは子どもの心を描くのも上手いので、そんな時子どもはどういう気持ちでいるのかもちゃんと描かれている。
「学校ってね、そういうところなんだと思うよ。おれ、そういうことがわかったの。生徒は競争させられてんだなって。番号をつけられるの。テストの点数で、あなたは何番目の人だよっていわれるの。それは点数のことなのに、人間の番号みたいな感じがするよ。くやしかったら負けるな、勝て、勝ちつづけろっていわれてる、みたいな」(P79)
「そんな理由でやめるってお母さんにいったら、『だめ』って、きっと反対されると思うの。(中略)『そんなことだと将来困る』って、お母さんにまたしかられると思う。お母さんは、わたしが将来ちゃんと生きていけるようにって心配してるんだと、それはわかってる。ても、わたし、自分がしたいかどうかわからないことをがまんしてつづけたくないの。」(P180)
「こうしたほうが」というときのママは、心のなかでは「こうするべきだ」と、ほんとうはすっかり考えを固めているということが、小学生のお兄ちゃんにはわかっていたんだと思う。「うーん」とか、「そうだなあ」と、お兄ちゃんはぼんやりした返事をして、それから最後にはたいてい「わかったよ」と、ママの考えを受け入れていた。(P197)
「なんでも簡単にあきらめてほしくはないの。朋だけじゃないよ、晴太にしても」とママはいった。
「簡単じゃないあきらめ方って、どういうの?いまがそのときって、どうやったらわかるの?」(P200-201)
たいていのおとなは、子どもはいっしょうけんめい勉強するのが一番だと考えている。いっしょうけんめいしたくない、ってことを上手く説明することなんてできるだろうか。(P249)
よその子が同じようなことを苦もなく続けて結果を出していると、比べないでいるのは難しい。親は子どもの将来が少しでも良くなってほしいと思っているだけなのに、その気持ちは伝わらない。
私はつい母親の立場で読んでしまったが、子どもの心を考えたら、子ども達の選択は正しかったと思う。
自分は、子どもの、その時その時の真剣な気持ちにどれだけ向き合っていただろうか。
子どもだけでなく子育て中の親にも読んでほしい。父親にもね。続きを読む投稿日:2019.11.17
英語教室になんとなく行きたくない朋は、近くの路地に入ってみた。細い路地を進むと、不思議なお話を朗読しているおばあさんに出会い、庭に招き入れられる。次の週、同じ道に入ったはずなのに、道の様子が違い、少し…昔風の服を着た女の子と出会う。
現在と過去を行き来しながら、「したいこと、したくないこと」を考えるようになる朋。すぐ隣にある不思議と子どもの成長を自然に描き出す秀作です。続きを読む投稿日:2019.11.11
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