万波を翔る
木内昇(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ
開国から4年、攘夷の嵐が吹き荒れるなか、幕府に外交を司る新たな部局が設けられた。実力本位で任ぜられた奉行は破格の穎才ぞろい。そこに、鼻っ柱の強い江戸っ子の若者が出仕した。
先が見えねぇものほど、面白ぇことはねぇのだ――
安政5年(1858年)幕府は外国局を新設した。しかし、朝廷が反対する日米修好通商条約を勅許を待たず締結したため、おさまりを知らぬ攘夷熱と老獪な欧米列強の開港圧力という、かつてない内憂外患を前に、国を開く交渉では幕閣の腰が定まらない。切れ者が登庸された外国奉行も持てる力を発揮できず、薩長の不穏な動きにも翻弄されて……
お城に上がるや、前例のないお役目に東奔西走する田辺太一の成長を通して、日本の外交の曙を躍動感あふれる文章で、爽やかに描ききった傑作長編!
維新前夜、近代外交の礎を築いた幕臣たちの物語。勝海舟、水野忠徳、岩瀬忠震、小栗忠順から、渋沢栄一まで異能の幕臣たちが、海の向こうと対峙する。
2017年~18年の日経夕刊連載が、遂に単行本化!
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商品情報
- シリーズ
- 万波を翔る
- 著者
- 木内昇
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2019.08.23
- Reader Store発売日
- 2019.08.28
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 560ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (17件のレビュー)
-
大河ドラマ『青天を衝け』のパリ万博シーンで、見事薩摩藩に出し抜かれて悔しがっていた印象しかなかった外国奉行支配役・田辺太一を主人公に、幕末から明治を外交という目線で描く。
幕末ものなのに物騒な戦争シ…ーンは殆ど出て来ない。しかしこれは紛れもなく外国との戦争の物語であり、しかも負け戦ばかりの物語でもあった。
何しろ日本はそれまで二百年以上、外国とまともな交渉などしてこなかったのだ。逆にアメリカ、イギリス、フランスなどの大国は強大な武力と強かな交渉術で日本を食い物にしようとしている。
なのに日本は公儀と天朝との足並みが揃わないだけでなく、攘夷派だの開国派だのの横槍に加え薩摩藩や長州藩が勝手に外国と争いを起こす。
それでも外国方の面々は必死に戦っていた。
洋銀引換の不平等を何とかしようと戦い、輸入税輸出税を何とか日本有利にしようと戦い、港を開かせようと押しきられそうになるのを何とか抗い…そして破れ去った。
田辺太一は外国方の書物役や調役などのいわば下っぱ役人。だが物怖じせず上役の外国奉行にもガンガン意見する。何だか『青天を衝け』の渋沢栄一のようだ。
中盤まではやる気ばかり逸っているようで微妙なキャラクターだったのだが、様々な人たちや様々な交渉の場に接していくうちに成長していく。
『こののち、もしそなたが勤めを究めたければ、批難に刻(とき)を割かぬことじゃ。(中略)批難する暇があるならば、代案を考えることじゃ。よりよい先を見据えることじゃ』
と外国方に勤める上での心構えを教えてくれた堀利煕外国奉行。
『私が信ずるのは、確実に責任をとれる立場にある人物だけだ。(中略)責を負える人物から、こちらの思う条項を引き出してはじめて、外交と言えるのだ』
と外交の基本を諭したアメリカのハリス。
『おぬしは常に逸り過ぎじゃ。機を待つことも時には大事じゃぞ』
と見守ってくれた兄・孫次郎。
水野奉行のようにアクの強い上役もいたが、彼もまた太一を成長させてくれた。
これだけ厳しい状況でまともな外交など難しかっただろうと同情はするが、幕府側も大切な人員を急に職から外したり間違っていると分かっていながら意固地に進めたり、太一同様ガッカリすることも多く、これでは外国だけでなく薩摩や長州などからつけ入れられても仕方ないかという部分が多かった。
そんな中抗う太一が憎めないのは、そうした『しくじり』の歴史をきちんと記し、外交において『してはならぬこと』を示し勝海舟に託したところ。
何故公儀が外交に失敗し、引いては公儀自体が消滅することになったのか、それをきちんと評価したところ。
物語は外国方の『しくじり』だけに終始したが、こうした太一らの努力があったからこそその後の建て直しもあったのだろうし、太一の外国方としての復帰もあったのだろう。分厚いページ数の割に公儀のやられっぱなしの物語なので痛快さはないが、何故か読後感は清々しい。渋沢栄一もチラッと出て来る。続きを読む投稿日:2021.08.22
攘夷の嵐が吹き荒れる中、欧米列強の開港圧力が高まる幕末に外交の礎を築いた幕臣たちの物語。
主人公田辺太一は、鼻っ柱の強い若者。長崎の海軍伝習所から江戸に戻り、新設された外国局で、いつも機嫌が悪く、皮肉…屋の奉行・水野忠徳の下、横浜開港事務に関ることになる。水野や岩瀬忠震、小栗中順、渋沢栄一といった傑出した家人と交わり、持ち前の波乱を厭わない推進力や主張力を生かしながら太一は成長していく。
だが、腰が定まらない幕府、薩長のしたたかで、不穏な動きに翻弄され、受難の道を歩む。
長崎海軍伝習所で西欧の航海術や兵学をじかに学んだ太一は、日本を豊かにするためには、国を開いて異国の知恵や技術を取り入れるべきだと考えていた。その上で、この国の岐路を異国に委ねず、迎合もするべきでないという確固たる持論を持っていた。
しかるに、なかなか、外国に渡って見聞を広める機会に恵まれず、外国人の領有に対抗するため、小笠原島開拓に派遣されたり、ようやくの渡仏でも横浜鎖港交渉を命ぜられたりと意に反することばかり。
慶応3年(1863年)のパリ万博に出展した幕府の派遣施設に随行した際も、薩摩藩が幕府を出し抜いてフランスと結託、出展していた。抗議も実らず、苦悩しながら帰国の途につくが、そこで、大政奉還の報に接する。
そんな失敗の繰り返しを指南書にして、それが勝麟太郎に認めらたり、日頃厳しい兄の孫次郎がひそかに感心していたりと、太一の国を思う一貫した姿勢を評価する人物も多く登場する。
全体を通して、太一の進歩的な考え方や外国との交渉論理の組立てに合理性を覚え、自分が納得する人生を貫く姿に清涼感を感じた。
幕末の歴史を楽しみながら勉強することができたし、幕臣の会話の中に現代にも通じる処世術が盛り込まれていたのも面白かった。続きを読む投稿日:2022.11.09
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