この作品のレビュー
平均 4.3 (6件のレビュー)
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町山智浩さんのいわゆる外国映画講義は何冊か読んでいるのだけど、不思議なことに日本映画については読んだことがない。映画館で年間100-140作観る私が常に感心するのは、町山さんの映画評だけだ。必ず面白い…話が聞けるーそう確信して本書を紐解いた。WOWOWの『町山智浩の映画塾!』の書籍化。
残念なのか、流石というべきか、戦争・パニック映画を講義して大きく扱うのは7作品だけだ。『人間の条件』『兵隊やくざ』『日本のいちばん長い日(1967)』『激動の昭和史 沖縄決戦』『日本沈没(1973)』『新幹線大爆破』『MIFUNE THE LAST SAMURAI』である。2作は未見だが選択は納得する。
『人間の条件』原作者も監督も撮影監督も実体験をフィルムに焼き付けようとした。
『兵隊やくざ』は『人間のー』の裏返し。公開当時、実体験を持つ観客は多かったから、さぞかしスカッとしただろう。会社組織の上司の関係も同じ。風呂場で喧嘩シーン、前貼りなしなのに絶対アレは見せない(大映撮影布陣の技術力)。有田と大宮の関係はBLだ。赤ん坊のために戦闘が一瞬止まる場面は後に『トゥモロー・ワールド(06)』が影響されたに違いない。等々参考になった。
『日本のいちばん長い日』脚本との違いがある。阿南(三船敏郎)の切腹場面と森師団長(島田省吾)の殺される場面は、音だけの描写だっが、血みどろ描写を丸見せした。奇跡的に生き残った岡本監督の出発点だったからだ。『ヒトラー 最期の12日間』に、書類を焼いている所はこの作品のオマージュ。横浜守備隊の隊長がポケットに入れていたのは『出家とその弟子』、『シン・ゴジラ』で『春と修羅』が出てくるのと同じ。
『激動の昭和史 沖縄決戦』71年岡本喜八監督、新藤兼人脚本。未見。戦争を憎みながら、戦争アクションは見事。東宝スタッフ子会社化前の、総力作品。一人ひとりの生き方死に方に描いて、ウエットに描かない。
『日本沈没』(73年森谷司郎監督、中野昭慶特撮監督、橋本忍脚本、そして木村大作の撮影デビュー)タイトルが出てくるまで1時間。『日本のいちばんー』でも20分かけた橋本脚本。この映画によって、二本立て興行が一本立てになった。
『新幹線大爆破』(75年佐藤純弥監督、高倉健主演)80キロに減速したら爆発する。『スピード(94)』『アンストッパブル(10)』で使われた。タイトルを聞いて国鉄の協力が得られなくなったので、遠景は無許可、駅は私鉄だった。元ネタは黒澤明脚本の『暴走列車』。東映は社会的メッセージを入れる伝統がある。博多市民を救うために新幹線を止めて乗客を犠牲にしろ、という選択は「トロッコ問題」。選ぶことができない、というのが正しい(と私は思う)。宇津井健は「私は一回でも新幹線を止めようと思ったから国鉄マンとして失格だ」という。
『MIFUNE THE LAST SAMURAI』(三船敏郎のドキュメンタリー)『椿三十郎』の殺陣は三船が考えた。それまでの殺陣ではなく、お互い切るつもりでやっている。黒澤明が要求した。みんな黒澤に酷い目に遭っている。『蜘蛛巣城』で矢を射られたのは、後々トラウマになったらしい。
日本映画の知識は、圧倒的に春日太一が上。そのせいか、対談のせいか、イマイチ切口が鋭くなかった。続きを読む投稿日:2019.10.13
このレビューはネタバレを含みます
前巻は時代劇映画について語った本で、今回は戦争アクションとパニック映画について語った本。内容は言うこと無いくらい面白い=その映画を見たくなる仕上がりだが、少し思うこともある。
レビューの続きを読む
時代の流れとともに「戦…争」がアンタッチャブルなものとなり、「エンタテインメント」とのハイブリッドが困難なものになってしまった(「不謹慎だ」と怒られる)ようになってしまったのは、悲しむべきか良いことなのか。続きを読む投稿日:2019.10.20
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