ルポ 現代のスピリチュアリズム
織田淳太郎(著)
/アドレナライズ
作品情報
人は何のために生きるのか? 実力派ノンフィクション作家として確固たるキャリアを築きながら、どうしても満たされない人生の難題。著者のまったく個人的な動機からスタートした、スピリチュアリズム世界へのアプローチ。いまを生きる人間と、過去に生きた人間の間を交錯しながら、現代日本におけるスピリチュアルブームの深層に迫る。
第1章 「世間」と超常なる世界の対峙
第2章 スピリチュアルセミナー潜入記
第3章 虚栄とエゴイズム
第4章 「本当の自分」との出会い
第5章 幸福を求める旅路
●織田淳太郎(おだ・じゅんたろう)
1957年、北海道生まれ。ノンフィクション作家。著書に『死が贈りものになるとき 亡きわが子から届けられた「生きる意味」の言霊』、『狂気の右ストレート 大場政夫の孤独と栄光』、『巨人軍に葬られた男たち』、『敗者復活戦』、『メンタル・コーチング』、『コーチ論』、『ラストゴングは打ち鳴らされた』、『医者にウツは治せない』など多数。
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一気に読了。「現代スピリチュアル」と言うだけあって、様々なネームが登場し、そのいくつかには綿密な取材を重ねている。出てくる主なネームとしては、
ユリゲラー、清田益章、ロバート・モンロー(ヘミシンク)…、バグワン・シュリ・ラジニーシ、スタニスラフ・グロフ、ケン・ウィルバー、ニール・ドナルド・ウォルシュ、そして山川紘矢・亜希子など。
本書のタイトルだけ見ると「現在スピリチュアル批判」ように思われがちだが、必ずしもそうではない。ジャーナリストらしく、極力主観を排し、きちんとした取材を重ねながら、現代の「スピリチュアリズム」について探求している。
その取材対象として興味深かったのが、かつて超能力少年としてマスメディアに祭り上げられた清田少年、バグワン・シュリ・ラジニーシの著書を日本に紹介した和田禎男、そして日本にスピリチュアル本を次々と翻訳紹介した山川夫妻について。
まず清田少年については、様々なメディアで取り上げられ、大部分から「インチキ」として片づけられ、その後も麻薬所持で逮捕されるなど、過去の人扱いされ、アンチスピリチュアルの連中からは「してやったり」と思われている。
私も本書を読むまでは単なるインチキ超能力者とみなしていたが現実はそうでないようだ。ある番組にて動物実験のようにホテルに缶詰めにされ、あまりのストレスのためスプーン曲げさえもできなくなる。それは超能力に限らず、普通の仕事でも調子悪くなることがあると言えばその通りで、その言及がゆえに逆にリアリティを感じさせた。
結局のところ、「できない」と言うと、プロデューサーから「困る」と言われ、やむなく手で曲げたところ「だけ」をクローズアップされて、いつの間にか「インチキ暴露番組」に変わってしまっていたのが事の顛末である。ある意味、メディアに殺された悲劇の超能力者と言えよう。
和田氏については、出版社勤務を経て「めるくまーる」という出版社を立ち上げ、バグワン・シュリ・ラジニーシ(オショウ)の本を次々と出版し、日本にも一大ブームを築き上げた。しかしながら出版不況にやられ、和田氏はうつを経験し、今はベトナムでひっそりと年金生活を送っている。
山川夫妻については第四章がまるまる紙面が割かれいる。大蔵役人だった時に「アウト・オン・ア・リム」を翻訳し、持病の喘息に苦しめられつつ、これからと言う時に大蔵省を去ってしまうが、それがために次々と精神世界の名著を日本に発表し続けるようになる。
その導きたるや、サンジェルマン伯爵という「精霊」によるものだと言うあたり、さすがは日本のスピリチュアルリーダーである。また、日本に招待したチャネラーの様子が変わっていったエピソードなども裏話的で面白かった。宗像大社にUFOが・・・など個人的に身近な地名が出てきてリアリティを感じた、
このようにだいたい1970年代から現代に至るまでの「スピリチュアリズム」の系譜を辿りながら、綿密な取材を通じて、いわば「心の時代」を淡々とつづっている。ただ、江原啓之に代表される、昨今のスピリチュアルブームについてはほとんど言及されていないが、実はそのブームなどは、これまでの延長上、おまけのようなものであり、紙面を割くに値しなかったのだろう。確かにそうかもしれない。
個人的にはヘミシンクのセミナーの話、LSDを覚醒のために研究したグロス博士の話、インドのグルに大量のLSDを飲ませて何ともなかったのを見て傾倒してしまったラムダスの話などが興味深かった。
まさに「現代スピリチュアルリズム」の系譜を俯瞰するには、非常によくまとまった一冊であった。続きを読む投稿日:2010.10.04
著者もなかば欝で、自らの心の問題を解決するための研修参加と本を書くという実益を兼ねた取材により成り立っている。明治期の福来友吉の念写の実験、ユリゲラー旋風、清田君のスプーン曲げ、宜保愛子の心霊現象の透…視、山川夫妻の翻訳活動などが、ふわふわっと書かれている。
福来博士以降の何十年もの歳月、スピリチュアル研究にも、さすがに何か動きがあったろうに、何もふれていない。このあたりで新興宗教がはやるのか。続きを読む投稿日:2012.04.26
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