澤野工房物語 下駄屋が始めたジャズ・レーベル、大阪・新世界から世界へ
澤野由明(澤野工房代表)(著)
/DU BOOKS
作品情報
下駄屋が始めたジャズ・レーベル!?
「広告なし、ストリーミングなし、ベスト盤なし。」
そんな破天荒なやり方で、
世界中で愛されるインディ・ジャズ・レーベルを
20年運営し続けられる理由とは……!?
浪速の新世界、通天閣のお膝元にある老舗下駄屋の四代目店主。
趣味が高じて始めたジャズレーベルが、世界のジャズ・ファンに愛されるまで。
「これからの時代、最大公約数的な商品ってあり得ないと思うんです。
みんながみんな同じ方向を向くことは絶対ないのだから、
こちらを向いてくれる人にだけはきっちり届けなければいけない。
うちにしかない商品を提供し続けなければいけない。」──本文より
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この作品のレビュー
平均 4.3 (5件のレビュー)
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▼「澤野工房物語 ~下駄屋が始めたジャズ・レーベル、大阪・新世界から世界へ ~」2018年、澤野由明、DU BOOKS。
タイトルの通りの本で、大阪新世界に親の代からの下駄屋さんがあって、そこの息子さ…んがこの本の著者で、ジャズを扱うレコード会社「澤野工房」代表の澤野さん。この澤野さんの自伝のような一冊。
僕はジャズを聴くのが割と好きなので、「大阪に、下駄屋さんが兼業でやっているジャズレーベルがあって、いっぱいCD出している」というのは聞いたことがあったんです。
▼つまりは。下駄屋さんの御曹司(そんなに零細でカツカツ貧しいような下駄屋さんではない。更に言うと厳密には履物屋さんのようですね)がいまして。1950年生まれ。
御曹司、と書いたのは、若い頃に小銭に不自由はしなかった育ちなんですね。それで趣味でオーディオに凝って、それでジャズに凝った。マイルス・デイビスとか、そういう。ジャズです。
御曹司なんで若い頃からガバガバ湯水のようにレコードを買って聞いた。大学生を終えて実家に戻って家業を継いだ。引き続きガバガバ湯水のようにレコードを買って聴く。立派な、恐らくは日本でもTOP10かTOP20には入るような、「商売としてのジャズ業界と全く関係ない素人という範疇では超トップクラスのマニア」ですね。
何しろ、「もう買うレコードが無い」というくらいだから、何万枚持ってんだ!というレベル…。
▼この澤野さんに、弟さんが居はったんですね。同好の士だったんですね。弟さんが(あまりジャズと関係なく)フランス人の女性と結婚されてフランスで暮らし始めた。フランスで男一匹働かねばならぬのだけど、色々あって結局趣味を活かしてジャズレコードの日本への輸出とか輸入とかに手を染める。兄も一緒にやる。マニアなら喜ぶようなレコードの輸入とか。
▼そのうちに、「廃盤聞きたいやん、もうプレス自分たちでしちゃおうか」みたいにこれがつまり「インディーズ的なレコード会社」になり、プロの仲間入りをする訳です。だんだんに、「あのアーティスト好きやなあ。うちで出そう」みたいになります。兄弟二人三脚のインディーズ・レーベル。主に欧州のジャズアーティストの新盤を、自分たちで出資してスタジオ抑えたりギャラ払ったりして新盤作っちゃう。そのうち日本のジャズ業界(多分そんなに巨大ではないんだろうなあ)の中に独特の地歩を築いてしまって、日本人ジャズアーティストも手掛ける…。
▼なんだけど、「さわの履物店」はずっと経営続けている。というかそっちの好景気に支えられている道楽商売、という時期もある。直接の関係者はあくまで自分、弟、そのうち娘も、というような家内制手工業。大手と一線を画したマニアックな好みのはっきりした人選と制作と販売。ところがこれがマニア受けして、20年以上続いちゃう。しんどい思いもいっぱいしたけれど、「ジャズ好きやなあ」ということで、恐らくはもう人生のやりがいになって…。
▼と、いう苦労話、自伝ですね。関西人らしい(超偏見)肩の凝らないユーモアのある語り口。もうこの人はジャズについては僕のような「よちよち歩きの入門入り口で20年うろうろしているような浅いファン」は何が何だか分からない知見レベルになっているわけなんで、そのあたりは読んでいても全然分からないことがいっぱいあります(笑)。
▼ところがこれが面白い。読み物として。なにしろとにかく行動原理の第1歩が「自分が、ジャズ聴くの好き」という阿保な理由(失礼)なので、なんだかジャズ業界のビジネスマンとして専門的になってきても
「1000円借りるために1500円かけてタクシーに乗る」
みたいなレベルの諧謔味が付き纏って、ついつい笑ってしまう。もちろん、見方によっては「所詮は御曹司だからできる道楽なだけやんか」とひねくれた物言いも出来る訳ですが、行間から匂い立つのは「それはそのとおりやねんで」という謙虚さと開き直り(笑)。なんだか半生が痛快なドタバタ喜劇のようです。
(もちろん、そういう風に本として表現されているわけであって、実態がどうなんか、例えばご身内からしたらそんなことでは済まされない横暴さとか暴虐さとか身勝手さがきっとあるんでしょうが。でもそのあたりも「いや、ほんまそれもそうなんです」という「開き直った自己否定感」が明るく漂っている風味)
▼結局のところ「音楽、ジャズ聴くの、気持ちええやんかー」という、言って見れば人生全部つまるところは暇つぶし…的な、それ以上の意味づけをイサギヨク否定した乾いた虚無な人生観の彼岸で「同じ阿保なら踊らにゃ損、損」という、地獄で暮らす楽観主義みたいな多幸感が溢れていて、この人のファクトとしての人生航路がひょっとして本で書かれていることがあらあら創作であったとしても、この本の醸し出すオモシロサはなんだか胸を打ちます。ジャズを聴きたくなる強烈な一冊でした!
▼この本は確か相当以前にどこかの書店で見つけて衝動買いして、長らく「積ん読」になっていたんです。なんだかぼーっと読み始めたら惹きこまれてしまった。ジャズも素敵なんですけれど、これだから読書の快楽っていうのもタマラナイですね。続きを読む投稿日:2023.03.12
このレビューはネタバレを含みます
大阪の下駄屋さんが始めたジャズ・レーベルのお話。本編に出てくるWAVEやディスクユニオンでこのレーベルのことは知りました。ちょうどレーベルの発展をリアルタイムで見ていたことになります(^^)「hand…-made JAZZ 澤野工房」のシールは目立っていたんですよね。
レビューの続きを読む
カッコつけのない、語り口の本でした。
ところで、出版しているディスクユニオンの方もいろいろ面白そうなエピソードを耳にするのですが、こちらの本はないのかしらん?続きを読む投稿日:2021.02.14
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