台湾生まれ 日本語育ち
温又柔(著)
/白水Uブックス
作品情報
3歳の時に東京に移住した台湾人作家が、台湾語・中国語・日本語の3つの母語の狭間で揺れ、惑いながら、自身のルーツを探った感動の軌跡。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作に、刊行後の出来事について綴った3篇を加えた、待望の増補版。
「子どもの頃も含めると、あなたの母語は何ですか? と数えきれないほど訊かれてきた。同じ質問をされるのが苦痛な時期もあったが、いまのわたしは、待ってました、とばかりにほほ笑む。
――タイワン語とチューゴク語の織り交ざったこのニホン語のことですよ。
この答えにたどり着けたのは、約四年の月日をかけて“失われた母国語”を求めつつ、自分にとって言葉とは何かと徹底的に考えぬいた成果なのだと思っている。」――(「Uブックス版に寄せて」より)
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商品情報
- シリーズ
- 台湾生まれ 日本語育ち
- 著者
- 温又柔
- 出版社
- 白水社
- 掲載誌・レーベル
- 白水Uブックス
- 書籍発売日
- 2018.09.13
- Reader Store発売日
- 2018.12.21
- ファイルサイズ
- 8.3MB
- ページ数
- 308ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (14件のレビュー)
-
難しい漢字や読めない漢字があって読みにくいですが、学びにはなりました。台湾の事、日本の事歴史を色々と知ることのできる内容でした。海外の方々の言葉の問題など気持ちを知る事ができる内容でした。色んな葛藤が…あるんだなと。新しい言葉を流暢に喋る事がどれほど大変か。続きを読む
投稿日:2023.10.12
このレビューはネタバレを含みます
台湾で生まれ3歳で日本に移住、中国語・台湾語を混ざった言葉から日本語へと言語の主軸を移していく中で、後天的に日本の中国大陸式中国語を学び出したりしつつ、色々と悩んでいる様子が描かれている。台湾式中国語…を学び、”I have Taiwanese accent and I am damn proud of it"を連呼してきた身には発音やら表現についての著者の葛藤(自分は葛藤しなかったけど)がわかる。チーファンがツゥーファンとなるし、シーがスーになり、確かに音は違うが、慣れるとわかるようになるのが不思議。多分、表面的な音そのまま以外の部分で意味を把握するなにかがあるんだろうな。
レビューの続きを読む
自分自身は、ここの登場する母親や妹のようにあんまり気にしないたちなので、最後の章の葛藤は少々読んでいてしんどい。日本語の母語が確立してからいったから同じではないかもしれないが、幼い頃海外で育ってもアイデンティティに悩んだことはなかったな。
Pl121(李良枝:イ・ヤンジについて)
彼女たちの言葉群は、複雑の言語を行き来し、決して唯一絶対の「国語」に縛られない。
彼女たちの放つ言葉に共通しているのは、生きているほんものの言葉とは、たった一つの国家に収束されるような言葉などではなく、あくまで個人に属するものなのだという事実を、すがすがしく焚き付けてくることだ。
とりわけ、日本語で、そのように書いた(生きた)李良枝の著作に、わたしは没頭した。
その美しい作品群にこもる熱量は、当然、わたしを掻き立てた。自分も、このような小説を書いてみたいと激しく渇望した。
小説に先立って修士論文を書いた。テーマは「日本人として生まれなかった日本語作家・李良枝の主題と作品」。評価はB -。口頭試験では「あなたは李良枝を通して自分自身を語ろうとしているに過ぎない」との指摘をうける。「これは論文などではない。作家への恋文だ」。
教授人からの叱咤を激励として都合よく受けとめると、わたしは修士論文から溢れ出したものを掻き集めて、自分の小説を書くことにした。
P.130
自分は台湾人である、と自覚したときの、その過程を改めて改装しようとすると、それらにまつわる私の記憶の数々は、整然とした、「はじめ」と「おわり」に綴じられた、ひと繋がりの、わたしだけの物語として束ねられることを激しく拒み、身をくねらす。まるで、わたしの回想の仕方次第で、それは異なる物語になり得ることを示すかのように。そこでわたしは、わたしではないだれかを想定して、わたしの経験を生きてもらうという方法をとる。わたしの記憶を生きるのは、わたしでなkれば、だれでもよかった。この方法で、自分にとって決してささやかではない経験の記憶と向きあうとき、わたしは、永遠の遊び場が、自分の中にできていく感じがする。(中略)その経験の過程を、わたしは、わたしだけのこととして、日記の中に閉じ込めておきたくなかった。
それを描き終えた瞬間、読まれないという欲望が、書きたいという衝動を、はっきり上回ったことを鮮明に覚えている。
P.158
馬祖はやはり、媽祖にあやかった地名だった。(中略)「媽」ではなく「馬」となっている理由には、二つの説がある。一つは、神様と同じ地名は畏れ多いので、わざとずらした。もう一つは、対岸に「匪區」を控える「最前線」の島として「媽祖」という名は女々しくてけしからん。もっと戦地らしい勇ましさを出すために、女偏を外して「馬」にしろ、と軍が命令をくだした。
P.203
教師や学校という「上」からの圧力に留まらず、「横」、すなわち同級生である日本人生徒との間に生じる感情的なもつれも深刻だった。日本人の生徒の内には、非支配者の台湾人を、自分たちよりも一段低く扱い、差別する者も少なくなかったのだ。もちろん日本人と台湾人の間に育まれた友情や師弟愛もあった。しかし、それはあくまでも個人の問題である。あの頃の台湾を生きた日本人と台湾人の背後には、支配・被支配の宗主国・植民地体制が動かしがたい現実として聳えていた。要するに、同年代の少年同士が、片方は「帝国」の一員として誇り(威張り)、そのことによってもう一方が「植民地人」として屈辱をおぼえる(憤る)、という状況を容易に促す構造があった。
P.207
歴史の可能性の一つとして、征服者の言語であった日本語は、朝鮮、台湾、旧満州地域等における「国際共通語」となる可能性を孕んでいた。大定帝国の植民地だった地域で紡がれる英語、あるいは、マルティニック島およびグアダループ島で育まれたフランス語といったような、複数のニホンゴが、アジア各地で芽生えつつある・・・日本語には、そのような禍々しい希望を放っていた過去がある。
P.218
日本語で執筆した台湾人作家とその作品は、台湾と日本のどちらの文学史からも黙殺され、忘却の彼方に追いやられていた。
国民党一党独裁下の台湾では、「中華民国」こそが「正統」かつ「唯一」の「中国」というイデオロギーに基づき、自国の文学史が編まれた。そこで中国文学が主流の地位を占め、戦前に活躍した作家たちの日本語作品は、「皇民化教育」による負の遺産として不当に貶められた。一方、日本では、たとえそれが日本語で書かれた作品だとしても、その作者が「日本人」でなければ、日本人による日本人のための「正統」な日本文学史からは除外された。続きを読む投稿日:2024.03.29
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