内戦の日本古代史 邪馬台国から武士の誕生まで
倉本一宏(著)
/講談社現代新書
作品情報
古代国家はいかに建設され、中世社会はいかに胎動したのか?倭王権に筑紫磐井が反乱を起こした理由は?蘇我馬子と物部守屋の国際的な路線対立とは? 古代史上最大の戦乱「壬申の乱」勝敗の分岐点は?桓武天皇の「征夷」を生んだ国家観「東夷の小帝国」とは? 天慶の乱はどのように中世へと時代を転換させたのか?――古代の戦いから日本のかたちが見えてくる、画期的な一冊。
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商品情報
- 著者
- 倉本一宏
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2018.12.19
- Reader Store発売日
- 2018.12.19
- ファイルサイズ
- 27MB
- ページ数
- 320ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (13件のレビュー)
-
「日本は戦争を(ほとんど)しなかった国である」と著者は言う。やっとそのことに気がつく人が現れた。と私は思った。「もちろん、個々の合戦の現場における実態は苛烈なものであり、犠牲になった多くの人たちは気の…毒としか言いようがないが、たとえば中国・韓国やヨーロッパの研究者が見たら、おそらく笑うのではないだろうか。何と平和な国だったのだろうかと」(4p)「外国ではんざつに起こった民族同士の戦争のような徹底的な殲滅戦は」日本では起こらなかったのである。そこまでは私も同意する。しかし、我が意を得たりの本ではない。「何故なのか」ということは、この著者は(ほとんど)分析できていないのである。
概観は「おわりに」で突然示される。「中国大陸や朝鮮半島から離れた島国であったために海外勢力からの侵略を想定せずにすみ、強力な中央集権国家建設の必要性をそれほど感じなくても良かったこと、逆に日本列島からも海外へ武力進出する可能性も低かったために、強力な軍事国家建設の意思を持つこともなかったのであろう。また、周辺にほんとうの意味での異民族が存在しなかったために、国土が侵攻されるという危機感も薄かったはずである。さらには、易姓革命を否定して世襲を支配の根拠とした王権を作ったために、本気で王権を倒す勢力も登場せず、王権側も革命に対応する武力を用意していなかった事も大きな要因である。加えて、王権を囲繞する支配者層も、その中枢部のほとんどは王権を擁護することを旨とした藤原氏によって占められ、軍事をになった氏族も王権から分かれた源氏と平氏、そして藤原氏の末裔によって占められたために、武力行使勢力さえも世襲された」(303p)。しかし、本書の大部分を占める歴史的記述の中で、「この時点で、この人が、こちらを、この為に、選択した為にこうなった」という事は(ほとんど)書かれなかった。何故この人がこれを選んだか、ということを内戦の事象ごとに詳しく分析することこそが、この本の役割だったのではないか?何のためにこの本を書いたのか、意味がわからない。
著者は邪馬台国九州説を採る。私は畿内説だが、それはどうでもいい。邪馬台国や、やがて出来る大和政権がまさに一国を殲滅させるような全面戦争を回避して倭の国を作った「選択」については、一切分析しない。本書が文献にたよっているので、考古学知見からのモノの考えかたをしていないためである。しかしこの最初の「選択」が、私は最も重要だったと思っている。例えば龍神信仰でもいいけど、この最初が、「大きな権威」となってその後の日本の支配層を縛っていったのだと、私は観る。しかし、結局そういう本は未だに現れない。
2019年3月読了続きを読む投稿日:2019.03.20
このレビューはネタバレを含みます
倉本一宏先生は帝国主義がアジア諸国を侵略した歴史を嘆く、平安貴族を怠惰で情けなく思う心が武力に囚われた日本人となった事をおかしいと感じたのだろう「日本は戦争をしない国である(小規模な内戦のみ)」「外国…で起きた民族同士の戦争のような徹底的な殲滅戦はなかった」武士の出現で儒教的で和平や懐柔による解決を・敵にも穏便に対応していた筈が前九年・後三年の役の様になった事に衝撃を受けた著者は国内の主だった戦いが内戦で小規模で犠牲者も少なかったことを古代史の内戦全般を詳らかに描く・・・月並みだが「中国大陸や朝鮮半島から離れた島国であったために海外勢力からの侵略を想定せずにすみ、強力な中央集権国家建設の必要性をそれほど感じなくても良かったこと、逆に日本列島からも海外へ武力進出する可能性も低かったために、強力な軍事国家建設の意思を持つこともなかったのであろう。また、周辺にほんとうの意味での異民族が存在しなかったために、国土が侵攻されるという危機感も薄かったはずである。さらには、易姓革命を否定して世襲を支配の根拠とした王権を作ったために、本気で王権を倒す勢力も登場せず、王権側も革命に対応する武力を用意していなかった事も大きな要因である。加えて、王権を囲繞する支配者層も、その中枢部のほとんどは王権を擁護することを旨とした藤原氏によって占められ、軍事をになった氏族も王権から分かれた源氏と平氏、そして藤原氏の末裔によって占められたために、武力行使勢力さえも世襲された」というまとめを得た続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2024.03.16
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