ハーバード大学は「音楽」で人を育てる 21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育
菅野恵理子(著)
/アルテスパブリッシング
作品情報
総合大学に音楽学科や音楽学校が設置され、年間1000人以上の学生が音楽を履修するアメリカ。
現代社会に通用する音楽家を育てるだけでなく、他分野の学生も音楽を積極的に学び、マルチな教養を身につける。
アメリカのトップ大学が取り組むリベラル・アーツ教育の最前線をレポート!
いま、「大学で音楽を学ぶ」とは、「音楽とともに生きる」とはいかなることなのか?──
現代社会に音楽を活かすヒント満載の書!
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この作品のレビュー
平均 3.4 (7件のレビュー)
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昨今のリベラルアーツブームの系譜に位置づけられる本だが、実際問題として米国のトップ大学群で、音楽がここまで系統的にカリキュラム化されているのは意外であった。
留学経験のある友人連中からこの手の話を全然…聞いたことないのだが(いかにも選択してなさそう(笑))。
音楽がいわゆる「中世の基礎科目」だったところから説き起こす「音楽はいつから知の対象になったのか」も、必ずしもオリジナルな見解ではないが整理されていて読みやすい。
一方で、この手の「教養」本に共通して(面白さとは別に)覚える違和感なのだが、教養って「ビジネスに役立つ」ことがそんなに大事なのだろうか?
極端な話、ビジネスの圧から一時的にせよ身を守るための鎧、あるいはビジネスなどという一面的なものだけに支配されないための武器、そういったものこそ教養なのではないか?という気持ちはつねに拭い去れないのだ。
そりゃ、教養を磨くことがビジネスの現場で役に立つ、深い思索をする上ではビジネスも哲学やらなんやらとつながることがある、そのくらいは私もわかる。
でも「役に立つ」と「教養」は本質的には相反する言葉ではないか?
本書で取り上げている「現代の」大学がおしなべて「アメリカ」のそれであるのも何か象徴的である。
その点、本書のとくに終章がより音楽を通じて本質的に社会に貢献する試みに光を当てていたのは非常に魅力ある構成と感じた。続きを読む投稿日:2020.07.18
ハーバード大だけではなく、アメリカのほとんどの大学には音楽学科がある。それは、音楽が基礎教養の一部であるとするとらえ方が投影されているからだ。
翻って、わが国ではどうだろうか。人文系の学部など必要ない…かのような議論が流布し、研究にはやたらと結果が求められ、結果の出ない研究には資金も下りないような現状が大学を取り巻いている状況であると仄聞する。
アメリカが音楽学科を教養教育の一部として取り入れているのは、想像力や多様な視点を芸術が育むと考えられているからだ。だから、卒業生だけでなく企業からも大学の研究を助成するための資金援助が積極的に為される。
日本の企業で、大学の基礎教養としての音楽学科に資金援助や寄付をしている企業はどのくらいあるのだろう。尤も、音大以外に音楽学科がない大学には資金援助の必要もないのであるが。
日本の大学は、カリキュラムも含めて、もう一度教養教育とは何かということを見直す必要があるのではないか。そうしないと、この国からは新しい未来像を描ける人材が出てこないのではなかろうか。続きを読む投稿日:2018.04.13
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