この作品のレビュー
平均 3.4 (17件のレビュー)
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ボルヘスが古今東西の神話や文学作品から引く幻想動物群の辞書式排列、1974年。ウロボロス、ケルベロス、サラマンドラ、マンドレイク、ゴーレム、サテュロス、ミノタウロス、トロール、ガルーダ、キマイラ、クラ…ーケン、バジリスク、アケローン・・・、どこかで目にした名前が並ぶ。
「オドラデク」
数ある幻獣の中でも、カフカのオドラデクは奇想として抜きん出ていると感じる。その形態が不可解なだけでなく、それが存在しているという世界そのものがまるで意味が分からない。
「バハムート」
世界の成り立ちやその起源を説明するためにそれぞれの文化が持ち出してくる動物たちの物語も興味をそそる。世界の土台のそのまた基層をなす巨大魚バハムートが自らまばゆい光を発しているがために人間には不可視である、という筋立ては示唆的だ。無限遡行を回避し、第一原因の実体化という形而上学をも否定しようとするなら、このように"人間理性の限界"を設定するしか方途はないのではないか。
その他、「ミルメコレオ」「墨猴」などに意表を突かれた。「コンディヤックの感覚の立像」「プラトン年」については本書で初めて知り、好奇心を刺激された。
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本書を読んでいて思いを巡らさずにはいられなかったのは、古代人にとって「実在」と「象徴」とはどのように区別されていたのか、ということ。近代的な実証主義を通過した現代人にとって、「現実の存在」と「想像上の存在」とは截然と区別される。しかし、mythos による世界理解がまだ優勢であった古代人にとっては、「象徴」もまた同様に「現実的な存在」であったのか。経験的事実に裏打ちされた事象のみが「実在」の資格を有すると見做す実証主義は、必ずしも普遍的なものではなく、歴史的に相対化されるものだということを改めて思い返した。
本書でしばしば参照される古代ローマの百科全書『博物誌』を物したプリニウスの眼に、世界はどのように映っていたのか。古代人にとって「虚構」とは何だったのか。そもそも古代人に「虚構」というものが在り得たのか。「虚構」という観念の歴史的起源はどこに設定されるのか。我々が幻想小説やSF或いはオカルトや都市伝説の類を面白がるというようなアイロニカルな構えは、やはり随分と現代的なもののように思われる。
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知識とは、その存在価値をその有用性によって測られる類のものではない。そもそも存在価値の有無を追及されるべきものですらなく、そうした追及に応答する義務もない。そうではなくて、集積され分類され排列された知識群は、その内容とは無関係に、それが lexicographical に整列配置されているというその存在形式ゆえに、美的なもので在り得るということ。そしてそこに美的なものを感じ取る感性が在り得るということ。ボルヘスのアンソロジーはそうしたことを気づかせる。図書館とは、まさにこうした知識群の美的な在りよう――カタログ化の美学、アーカイヴ化の美学とでも呼ぶべきもの――を具現化していると云えるのではないか。
「誰しも知るように、むだで横道にそれた知識には一種のけだるい喜びがある」続きを読む投稿日:2019.07.02
本書の初邦訳は1974年。さる新聞のコラムで存在を知って購入。
日本を含む世界の空想上の動物たちが有名どころ(ガルーダ、バハムート等)から良く分からないもの(ある雑種、球体の動物等)まで幅広く紹介され…ている。絵はあまりなく、自分で想像を膨らませることが好きな方向け。
読むというより、永く本棚において時々ページを繰る、という楽しみをするのが良いと思う。続きを読む投稿日:2022.06.07
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