聖書の起源
山形孝夫(著)
/ちくま学芸文庫
作品情報
キリスト教の正典、「聖書」──その奥にひそむのは、古代オリエントやギリシアのあらゆる神々の姿が織り込まれ、ユダヤ民族悠久の歴史が幾重にも積み重ねられた、多文化的な空間であった。異教のバァール神話の死と復活のドラマ。ギリシア神話のアドニスとアフロディテの出会いと別れの物語。エーゲ海であがめられた治療の神アスクレピオス。治癒神イエス登場の背後には、これら異端の神々の系譜を透かし見ることができる。従来の宗教学的解釈では光をあてられることのなかったこの歴史を、宗教人類学の視線から掘り起こし、のちの聖書の読みを決定づけた古典的名著。
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商品情報
- シリーズ
- 聖書の起源
- 著者
- 山形孝夫
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま学芸文庫
- 書籍発売日
- 2010.01.10
- Reader Store発売日
- 2017.12.29
- ファイルサイズ
- 16.6MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (4件のレビュー)
-
もし本書を先に読んでいたら,長谷川三千子『バベルの謎』の読後感は違っていただろうと,ぼくは後悔しました。今年ちくま学芸文庫に入った山形孝夫『聖書の起源』は,もともと1978年に講談社現代新書から刊行さ…れていたそうですが,ぼくはうっかり読んでいませんでした。一方,『バベルの謎』は1996年に出版され,2007年に中公文庫に入ったときにぼくは読みました。その本によれば,旧約聖書の「創世記」の古層には,神が人と土とを分離するという主題があるとのことで,それを読んでぼくは感心しました。
http://tabula.hp.infoseek.co.jp/may07.html#18
けれど,今回,山形孝夫『聖書の起源』を読んでみると,そのタネ明かしはすでに1970年代に行われていたようでした。
『聖書の起源』とは,大げさな書名であり,それが版元の提案であることを著者は繰りかえし述べています。それでも著者は,前著『レバノンの白い山』(1976,未来社)のアイデアを新書で刊行したいという編集者の要求に応えるべく,本書を三部に分けて執筆しています。目次から引用すると,
第一部 旧約聖書の原像
I 土地取得伝承──砂漠のなかの寄留者
II 契約祭儀伝承──ヤハウェ共同体の論理と行動
第二部 カナンの神々の系譜
I 死と再生の神々──バァールとアドニス
II 病気なおしの神々──エシュムンとアスクレビオス
第三部 新約聖書の成立
I 治療神イエスの登場
II イエスとアスクレビオスの競合と葛藤
III 新約聖書の虚と実
第一部によれば,旧約聖書に記されているアブラハム以下の一族の漂流は,「土地取得のための旅」(p34)であったといいます。そして,「古代イスラエル民族」(と著者は彼らを呼んでいます)が,イスラエル王国を建設して遊牧民から農耕民へ転換しつつあった時期に,父祖たちの伝承をまとめたものが,今日の旧約聖書の古層である,と。なるほど,そうだとすると,漂流していた古代イスラエル民族が,なぜ自分たちは決まった土地に定住できないのかと自問自答して出した答えが,旧約聖書に忍びこんでいるのは当然です。神が人と土とを分離するという主題が「創世記」の古層にあるという『バベルの謎』の指摘は,『聖書の起源』の広い視野に立てば,容易にタネ明かしできる「謎」だったようです。
第二部は第三部の準備であり,本書でもっとも注目すべき点は,第三部の議論だろうとぼくは思います。イエスを信仰する初期の集団は,カナンの神々を受けいれていた風土で生まれたという仮説が,そこでは論じられています。このあたり,日本の「古代史」みたいなもんで,ぼくには判断がつきませんが,イエスが病気なおしの神であるという視点はおもしろいと思いました。
本筋には関係ありませんが,文庫版『聖書の起源』の77ページには,レンブラントの『十戒を持つモーセ』の絵が掲載されています。この絵が数年前に東京上野の西洋美術館に来たとき,ぼくは見に行ったんですが,腕の伸びかたがおかしくて不思議な絵でした。いまだによく分からない絵のひとつです。続きを読む投稿日:2010.05.17
このレビューはネタバレを含みます
初めて聖書を読んだのは5~6年前なんですが(学業の必要で読みました。聖書は読み物としても面白いです。柳田國男が好きな方なら旧約が特にオススメ!)、その時に併せて読んでおけばよかったと思ったぐらい、面…白くてためになりました。面白い、そこがポイントです。
レビューの続きを読む
聖書を読んでいると、どうでもいいことが気になって来ます。
●カインはアベルを殺したのになぜ神様から庇護の印を貰ったのだろうか?
●アブラハムが妻を埋葬する土地を「タダであげる」と言われたのに「買い取りたい」と言い張ったのはなぜか?
●イエスはなぜ「花婿」なのか?
以前からずっと引っかかってたんですが、その答えがことごとくこの本の中に書いてあった…!
本書は神学的な観点からではなく、古代世界の人々の世界観にユダヤの人々がどういう影響を受けてあのような物語を聖典として語り継いできたかを考察するもので、神の存在に関してなんら意見するものではありません(むしろ、反神学的な内容と言えるか…)。
この本を読んで、私が引っかかっていた部分は全て、当時の人々の世界観を共有していないことに起因していることがわかりました。まさか、メソポタミアの神様から始まって、ヘレニズム世界の神様にまで話が及ぶとは!
蛇足ではありますが、旧約聖書に「バアル神」というやけに存在感の強い異教の神様(聖書内で「偶像」としてではなく「一つの霊」として登場する神様はおそらく彼だけだった)が出てきます。
彼の存在感はなかなかのもので、聖書の登場人物の中でも5本の指に入るくらい私は好きだったんですが、彼は聖書成立に欠かすことの出来ない存在だったんですね。その点については嬉しくもあり、とても納得する所でした。続きを読む投稿日:2012.01.28
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