アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―
中島真志(著)
/新潮社
作品情報
日銀出身の決済システムの第一人者が、未来の通貨として注目されるビットコインの崩壊を、その設計と運用の両面からいち早く予測。さらに仮想通貨の中核技術「ブロックチェーン」が、ゴールドマン・サックスや三菱東京UFJ銀行、そして各国の中央銀行を巻き込みながら、金融界に大革命を起こしつつある状況を鮮やかに描く。
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商品情報
- シリーズ
- アフター・ビットコイン
- 著者
- 中島真志
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 書籍発売日
- 2017.10.27
- Reader Store発売日
- 2017.11.10
- ファイルサイズ
- 18.8MB
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 3.8 (52件のレビュー)
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仕組みはわからなくても使う日が来る
初めて聞いた頃には意味がわからなかったビットコインのマイニング、中国の企業が大量のパソコンを並べて新規に発行されたビットコインを受け取るってなんじゃそらって感じだった。ビットコインの本質はブロックチェ…ーンと呼ばれる分散化された台帳技術で、一定の取引の塊「ブロック」をつなげた台帳がネットワーク内に同時に多数存在するようになっている。誰かがこの台帳を書き換えようとしても一つのブロックのデータを書き換えると後のブロックに影響してつじつまが合わなくなる。
新たな取引データが加わるとビットコインの場合は10分おきに新たなブロックが作られる。この時最後のブロックを元に一定の計算により規則性のない固定長のハッシュ値という値が作られる。新しいブロックを作るためにはそのブロックのハッシュ値が「最後のブロックのハッシュ値」+「取引データ」+「使い捨てのナンス値」という複雑な計算の結果最初に一定数のゼロが並ぶという条件を満たす必要があり、このナンス値を探す計算作業がマイニングだ。そして最初にナンス値を探し当てた参加者に報酬として新規のビットコインが渡される。過去のブロックを改ざんしようとすると続く全てのブロックのハッシュ値が変わってしまうというのが台帳の信頼性を担保している。また10分おきに新たなブロックが作られることで台帳の安全性は確認され続ける。
よくできた仕組みだがビットコインが既存の貨幣を置き換えるには無理がある。まず10分間の取引件数が4200件を超えると承認が間に合わず取引が遅れ始める。ビットコインのウォレットは世界に1600万個あるというが実際にビットコインを保有しているのは10万人程度らしい。全体の1%以下の参加者が90%以上のビットコインを保有している。またビットコインのマイニング13社のうち10社が中国企業で安い電気料金を生かして寡占化しており上位2社が中国の5割、全世界の1/3のシェアを持つ。
さらに本質的な問題としてはビットコインの発行上限がある。無限に発行を続けるとインフレが避けられないためあらかじめ発行上限が決められており、2017年8月に79%が発行済みだ。そうすると今度はマイニングの報酬が限られてくる。インフレにせよ報酬の減額にせよマイニング=新しい取引の承認作業が割りに合わなくなり取引できなくなった通貨は価値を下げるしかなくなる。
ブロックチェーン技術に関してはさらに発展が見込まれている。中央銀行が中心となった電子通貨は今後拡がっていくだろう。マイニングは報酬ではなく費用として受益者が負担することになる。また国際送金や証券取引でブロックチェーンによる効率化が期待されている。クロスボーダー取引には中央銀行が存在しないためSWIFTのネットワークで送金メッセージをやり取りしている。相互に口座を開設しているコルレス関係にある銀行間取引であれば比較的簡単に送金が行われるが、そうでない場合は中継銀行を挟んだ送金となるため手数料も高くなり、確認作業の為時間もかかる。これに対しブロックチェーンを使ったリアルタイム国際送金の仕組みが開発されようとしている。また証券取引では証券の引き渡しと送金がワンセットで完結する実験が進んでいる。
将来的には中央銀行が中心となった電子通貨と国際的なネットワークが繋がり輸出業務が誰にでもできるようになるかもと思えるのだ。続きを読む投稿日:2018.07.08
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ビットコインがブロックチェーン技術により取引されていることは周知の事実だが、ブロックチェーン技術自体が今後通貨や決済といったシーンで活用される可能性と実証実験の状況などを細かすぎるくらいに丁寧に記して…くれている。
280ページほどあるが、割と同じことを繰り返し丁寧に細かすぎるくらい細かく記載されているので、初めてブロックチェーンに触れる者としては十分に技術や応用シーンを理解・想起できる。
色々と書いてあるが、結論としてはブロックチェーンを用いた中央銀行によりデジタル通貨の発行および証券取引は密接に関わることであり、今後世界的な動向が注目されるが、さまざまな制約(リプレイスメントコスト・ファイナリティの確保・ネティング機能・DVP決済など)により、考慮すべきことも多く即時のブロックチェーンによる置き換えは起こらないと見られるが、「未公開株式の取引」「議決権行使」「コーポレートアクション」などは、人手をかけた非効率な業務分野として、ブロックチェーンを用いた改善の取り組みがなされる可能性が高い。
発行年が2017年のため、その後各国実証実験やブロックチェーン技術がどう発展したかについては調べてみる必要がある。続きを読む投稿日:2023.03.19
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