タダイマトビラ
作品情報
母性に倦んだ母親のもとで育った少女・恵奈は、「カゾクヨナニー」という密やかな行為で、抑えきれない「家族欲」を解消していた。高校に入り、家を逃れて恋人と同棲を始めたが、お互いを家族欲の対象に貶め合う生活は恵奈にはおぞましい。人が帰る所は本当に家族なのだろうか? 「おかえり」の懐かしい声のするドアを求め、人間の想像力の向こう側まで疾走する自分探しの物語。
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商品情報
- シリーズ
- タダイマトビラ
- 著者
- 村田沙耶香
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2016.11.01
- Reader Store発売日
- 2017.04.21
- ファイルサイズ
- 0.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (38件のレビュー)
-
ち、ちょ、ちょっと、ま、待って!!!ちょっと、いいから待って!?
これ、凄いよ!!!!この本!!!なんでこの小説が三島由紀夫賞候補ってだけで受賞逃してるの?その審査員?って・・・みんなバカなの?死ぬの…?
マジでヤバいって、村田沙耶香って天才だと前から分かってたけど、マジで狂ってるって。ホント、天才的に狂ってるって。もう天才だって!!!
村田沙耶香の芥川賞受賞作『コンビニ人間』だけ読んで
『「普通」って何だろうなって考えさせられました!面白かったです!』
とか、普通にコメントしてる場合じゃないんだって!!!!!
ホントにね、もう、僕の評価ではこの本は☆5とかじゃくてね。違うレベルの評価基準に行っちゃってるのよ。もう。
この『タダイマトビラ』は村田沙耶香の中長編の第6作目の作品で、僕は『コンビニ人間』『消滅世界』、そして処女作の『授乳』『マウス』『ギンイロノウタ』『星が吸う水』『ハコブネ』と上梓順に読みすすめてきたから、本作は僕にとっては8作目となる村田沙耶香作品なんだけど、僕が受けた衝撃は、今までで間違いなくぶっちぎりで1番だね。
前作の『ハコブネ』『星が吸う水』が『女性の性(セックス)』にテーマにした作品だったけど、この『タダイマトビラ』は『家族』についてテーマにしているのね。
もうね『クレイジー沙耶香』が『家族』を描くとこうなってしまうの。
もう『家族とは何ぞや?』という壮大な人類の歴史の最初まで遡ってしまうような狂気っぷりなのよ。
例えて言うなら『コンビニ人間』の評価が3狂気(←この『狂気』は僕が使っている、どれだけ小説が『正常に狂っている』かを表す単位ね☆)、セックスが無くなった世界を描いた『消滅世界』が10狂気、思春期の少女の精神世界を描いた『ギンイロノウタ』が15狂気くらいだとしたら、もう、この本書『タダイマトビラ』は2万8000狂気くらいのレベルですよ。
しかも、最初っからめちゃくちゃ狂ってる訳じゃなくて、いきなり『狂う』の。
このギャップ感が凄いのよ。
この小説の主人公は、小学四年生の恵奈。恵奈の父親は家族を放置して、他の女のところへ入り浸り、母親は食事や洗濯などの必要最低限の家事しかしない。弟の啓太はそんな母親を不満に思い、わざと母親にかまってもらおうと引きこもり的な態度をとる。
両親から正常な愛情を注がれていないと悟った恵奈は、自室の水色のカーテンに『ニナオ』と名前を付け、彼女が「カゾクヨナニー」と呼ぶ『ニナオ』を理想の保護者と見立てて『ニナオ』に抱擁されながら脳内で理想の家族を演じる一人だけの行為にふける。
恵奈は崩壊したこの家族に早々に見切りをつけ、将来、自分の為だけの『理想の家族』を作るために日々成長していくのだ・・・。
もう最初の2、3ページを読んだだけで、
こりゃ・・・、ちょっとヤバいやつだ・・・
という、そこはかとなく漂う不穏な空気のなか、この小説は始まる。
最初はスクールカーストに悩む二人の女の子の心の内を描いた『マウス』のような、小学校の女の子同士のたわいのない会話劇が進んでいくんだけど、恵奈が中学生、高校生と成長していくにつれ、彼女の考えが徐々に変わっていく。
そしてそんな恵奈に大きな影響を与える、一人暮らしをする近所の美しいお姉さんの『渚さん』の生き方もヤバい。
渚さんは小瓶に入った一匹だけのアリを『アリス』と名付け10年以上飼っている。もちろんアリはそんなに長生きしないので、その一匹が死んだら新しいアリと『取り替え』続けていくのだ。この描写も恐ろしくも美しい。
恵奈はそんな『アリス』が自分のような気がしてくる。いや、自分だけでなく、人間全体が交換可能な『アリス』なのだと感じていく。
やがて、恵奈は高校生になり、大学生の彼氏を作って結婚の約束までし、着々と『理想の家族』を作る準備をしていくのだが、ふと、恵奈はこれが正しい『理想の家族』であるのかに疑問をもってしまう。そして恵奈がとった行動は・・・。
まさに、ここまで突き詰めるとホラーの一歩手前だ。そして否応なく読者は『クレイジー沙耶香』の狂気の渦に取り込まれていく。
しかし、この小説を理解するにつれ、『狂気』と思われる恵奈の行動が、
こちらのほうが実は正しいのではないのか
と感じてしまうところが不思議なのだ。
母親とは?父親とは?家族とは?結婚とは?生殖とは?子育てとは?
村田沙耶香はこの作品を通じて、僕たちがごくごく当たり前であると思っていることに対し
それって、本当に正しいの?
という素朴すぎる疑問を鋭いナイフの形にして、僕たちの首筋に突きつけてくる。
そして、村田沙耶香はある一つの『可能性』としての『回答』を僕たちにしっかりと『明示』してくれるのだ。
ここが村田沙耶香の凄いところなのだ。
2万8000以上の狂気レベル(※当人比)に曝されると、もはやそれが『狂気』ではなく『正常』なのだとすら感じてしまう。
まさに村田沙耶香の文章が僕の精神世界の中で『革命』をひき起こすのだ。
この今歩いている世界がぐるっと180度反転してしまうような。
黒い物が白く、白い物が一瞬で黒くなってしまったような、まさに、今まで見てきたものが全く異なったものに見えるように感じてしまうこの体験。
僕は村田沙耶香作品を読む以外においてこんな現象にぶち当たったことは一度も無い。
しかも、難解で理解しがたいSFチックで奇々怪々な文章が書いてある訳でもなんでもなく『ごく普通の』というと語弊があるが、非常に分かりやすく、理解しやすい村田沙耶香独特の美しい文体でその世界が構築されていくのだ。
これが、つまり、この読書体験を読者に与えることができるということが、村田沙耶香を『村田沙耶香』という唯一無二の作家であることを自ら証明しているのだ。
僕が未読の村田沙耶香作品は『しろいろの街の、その骨の体温の』『殺人出産』『地球星人』『生命式』そして最新作の『変半身』の5作品となった。
つまり、それは僕が愛する村田沙耶香の作品をまだまだ楽しめるということだ。
次に彼女は僕にどんな世界を見せてくれるのだろうか。
もう、次の一冊の1ページをめくるのが待ち遠しくてたまらない・・・。続きを読む投稿日:2019.12.09
母性に倦んだ母親のもとで育った少女・恵奈は、「カゾクヨナニー」という密やかな行為で、抑えきれない「家族欲」を解消していた。高校に入り、家を逃れて恋人と同棲を始めたが、お互いを家族欲の対象に貶め合う生活…は恵奈にはおぞましい。人が帰る所は本当に家族なのだろうか?「おかえり」の懐かしい声のするドアを求め、人間の想像力の向こう側まで疾走する自分探しの物語。続きを読む
投稿日:2021.01.27
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