ナショナリズムの復権
先崎彰容(著)
/ちくま新書
作品情報
国家を考えることは、人間の根源的なあり方を考えることだ。第二次大戦後のリベラル・デモクラシー体制への違和を表明したアーレントや吉本隆明は「全体主義」の中に何を見て、いかなる国家を構想したのか。江藤淳や橋川文三、丸山眞男らは、ナショナリズムをめぐりいかなる思想的対決をくり広げたか。数々の名著から、ナショナリズムと無縁たりえぬ現代人の精神構造を明らかにし、国家の問題を自らの課題として引き受けることの重要性を提起する。注目の若手思想史家の論考。
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商品情報
- シリーズ
- ナショナリズムの復権
- 著者
- 先崎彰容
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2013.06.10
- Reader Store発売日
- 2017.03.21
- ファイルサイズ
- 0.5MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (10件のレビュー)
-
この本から感じるのは、何よりも「思考の熱量の高さ」。新書という紙幅の制限の中に、葦津珍彦、ハンナ・アーレント、江藤淳、オルテガ・イ・ガゼットなどの思想を援用、敷衍しつつ、健全なナショナリズムの復権を説…く。
個人的には、海外の左翼と日本の左翼との大きな差は、夫々の属する国への思慕の軽重にあるように思っていた。どうも日本の左翼には、「自分の国」を何とかしようという意識が薄すぎるのだ。
非常に多くの要素が熱く語られており、少々とっ散らかった印象を持ちつつも、最後半部に、高坂正堯の有名な「国家を形成する三つの要素」の話があり、何とかまとまった感がある。以下引用。
『国家には三つの要素がある。「力の体系」「利益の体系」「価値の体系」この三つがからまりあって国家は出来上がっている。そして戦後の日本は経済成長=利益の体系だけを国家目標とし、一方で力の体系はアメリカの軍事協力にゆだねてきたのだった。そして、価値の体系を置き去りにしてきたのである。(p.220)』
未整理感はあれど、現状への率直な苛立ちが熱く表明されているところは、率直に評価したい一冊だ。続きを読む投稿日:2016.12.12
現代の思想家の中で頭一つも二つも抜けていると思っている先崎彰容氏のナショナリズム論。
江戸時代〜現代に至る日本の思想史論でもあり、氏がとにかく頭脳明晰の天才だと言うことがよく分かる著書。
その知識と熱…量が、新書と言うフォーマットに収まりきっていない。
江藤淳も丸山眞男も未読なので、日本思想史もより深く学んでいきたい。
当時先崎氏は福島の大学に勤務されており、本書の執筆時は東日本大震災直後の仮設住宅という特別に極限の状況だったようだ。
さらに出版からも既に月日が経過しており、今この本に感想を書くのは適切ではないかもしれないが、読書メモとして下記を。
冒頭に、ナショナリズム=全体主義と誤解されている、との記述があり、後半章の中でも繰り返し述べられる。
しかし今の自分にはどちらかと言うと、ナショナリズムは、世界的な全体主義と標準化であるグローバリズムに対する、一国の伝統や国益の保持、というイメージが強い。
つまり、ナショナリズムは世界の多様性への道であると感じている。
また、全体主義=絶対悪という暗黙の前提も、そもそも自分にあまり馴染まない。
吉本隆明で言うと、「共同幻想に飼いならされた個人」というところに大きな共感を覚えたのは、先崎氏の解説の力だった。
だからこそ、わかりやすい過去の(既に失敗した)全体主義への批判が、かえって飼いならされっぱなしの現代日本を覆い隠すカモフラージュのように聞こえてしまうことがある。
抑圧的な全体主義は、抑圧の対象となる自由の存在が前提である。
もはや抑圧すべき自由すら見当たらなくなって初めて国家は悠々と自由主義を標榜できる。
秩序の反対は、無秩序ではなく虚無だ。
自分の捉え方とは少し違うところも感じたが、とにかく素晴らしい一冊だった。続きを読む投稿日:2023.12.09
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