ブロックチェーン革命--分散自律型社会の出現
野口悠紀雄(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
◆仮想通貨を支える情報技術、ブロックチェーンが、いま、応用対象を拡大し、ビジネスや経済、社会の姿を劇的に変えようとしている。
◆ブロックチェーンは電子的な情報を記録する新しい仕組みで、管理者を必要とせず、記録が改竄できない。これまでは相手の組織を信頼することが必要だったが、組織を信頼せずに安心して取引ができる。そして、従来のインターネットではできなかった、経済的価値を送ることができるようになる。このため、通貨や金融の世界にパラダイムシフトをもたらす。
◆IoTやシェアリングエコノミーにも、ブロックチェーンが不可欠だ。それだけでなく、予測市場、真実性の証明など、さまざまな新しいサービスを生み出し、さらには、行政や政治・司法の分野でも応用が可能だ。ブロックチェーンが実現するDAO(経営者が存在しない企業組織)は、未来社会の主役になる。
◆従来の常識を一変させる、未来のビジネスチャンスの宝庫といえるブロックチェーンの全容を、内外の最新事例をもとに平易に説き明かし、その可能性を展望する。
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商品情報
- 著者
- 野口悠紀雄
- ジャンル
- コンピュータ・情報 - IT・Eビジネス・資格・読み物
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2017.01.18
- Reader Store発売日
- 2017.02.17
- ファイルサイズ
- 2.9MB
- ページ数
- 360ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (27件のレビュー)
-
すげえ本だ。イッキに読み終えた。
『仮想通貨革命』を読んだ時、余りの衝撃でひっくり返ったけど、この本も、寝る前に読んだら、ワクワクドキドキしてきて、心臓の鼓動が激しくなり、読後、しばらく興奮状態が続…いて、眠れなかった。
インターネット革命によって、フラットな社会が実現されるとバラ色の未来を描いたのに、現在では、グーグルやamazonやアップルやマイクロソフトなど、ごく小数の勝ち組企業が市場を独占して、多くの優良企業がツブされてしまったし、新しいアイディアをもった未来の新企業も今現に成長を阻害されてる。
または、GoogleやAppleやAmazonなど、ごく小数の独占企業がビッグブラザー化してしまい、次世代の石油と称されるビッグデータを確保すべく、私たちの個人情報はないがしろにされ、全てのプライバシーは監視可能な状態に置かれている。
これはもう『1984年』のディストピアそのものだ。
それと同じことが、ブロックチェーン革命でも、起きる危険性がある。
ブロックチェーン技術を中央集権的に用いれば、小数の管理者によって、全人類の全ての金の動きが監視可能になる。
ブロックチェーン革命によって、自由な社会が実現されるのか、それとも、全てが監視される監獄社会になるのか、現在は、その分岐点にある。
コインチェックのような「カス中のカス企業」がNEMをコールドウォレットに入れておらず、マルチシグにもしてなかったために、ハッカーにまんまと580億円相当も盗まれてしまったなんていうマヌケ過ぎる話は、この際、どうでも良い。
こういうバカげた事件を通して、それぞれのオルトコインは追跡可能な機能を備えたり、マネーロンダリングできない仕組みを作ったり、さらに進化してゆくだろうし、最終的には「盗む価値がなくなる」機能を備えた暗号通貨だって生まれるかもしれない・・・・・ということを書いてる最中にも、Plasma Cashのニュースが飛び込んできた。
2018.3.9.パリ
パリで3月9日に行われたイーサリアムコミュニティ会議に、ヴィタリックがサプライズで出席し、2017年8月から発表されたスケーリング解決のためのPlasmaに続く、Plasma Cashを発表した。
Plasma Cashはヴィタリックと開発者のダン・ロビンソン、カール・フローチによって開発された。
Plasmaをよりスケーラブルにし、一般ユーザーたちの必要動作環境を大幅に緩和する方法として提案された。
Plasma Cashの特徴は
・Plasma coinを発行し、ユーザがトークンを容易に追跡できる
・取引所でハッキングが起こっても、ユーザーは資産を失わない
Plasma Cashのシステムではユーザーの資金を直接扱うのではなく、取引所が注文書の機能を提供し、プラズマの契約を通じて、損失を保証できる。
「取引所がハッキングされた時でも、ユーザーの資産が失われることはない」
とヴィタリックは語った。
すげーーーーー。
まさに未来の通貨だーーーー。
これまでの歴史上なかった、画期的な機能を装備した暗号通貨!
これにより、良貨は悪貨を駆逐するだろう。
素晴らしすぎる。
このように、これまでの歴史上の貨幣にはなかった画期的な機能が、進化する暗号通貨には備わりつつある。
量子コンピューターですら解けない暗号を備えた通貨も開発中。
暗号通貨の未来ははかりしれない。
私たちは、人類の叡智を結集して、ブロックチェーン技術を、小数の特権的な管理者の手に渡さず、自由な未来を実現するために生かさなければならない。
インターネット革命の失敗を、ブロックチェーン革命で繰り返してはならない。
<読書メモ>
ブロックチェーン革命
分散自立型社会の出現
野口悠紀雄
はじめに
p4
間違った説
① なぜビットコインがまやかしか、という説明で
「中央銀行のような管理主体がなければ、通貨は機能し得ない」という論理
② コンピューターサイエンスでの説明
「互いに信頼できない人々が形成するコンピューター・ネットワークが機能し得ないことは、『ビザンチン将軍問題』として知られている。この問題を解決する方法は無い。したがって、ビットコインの仕組みは成立し得ない」
p5
2014年2月23日 マウントゴックス破綻。
この事件は、ビットコインの脆弱性ではなく、その強靭性を示した。
なぜなら、泥棒は、価値が無くなるものは、盗まないからである。ビットコインの価値が破綻しないからこそ、盗むに値する。
泥棒の基本法則:泥棒は価値がないものは盗まない
p6
JPモルガン・チェースCEOジャイミー・ダイモンは、ビットコインは17世紀オランダのチューリップ球根バブルのようなものだと嘲笑した。
2014年3月投資銀行ゴールドマン・サックスは報告書で
「ビットコインは通貨ではない。信奉者は頭を冷やして出直すべきだ」とした。
p7
ところが、2016年までの間に、世界は変わってしまった。
ビットコイン2.0 または、ブロックチェーン2.0 に進化した。急速な変化。
p8
ブロックチェーン以外のフィンテックも、生活を便利にするだろう。
しかし、パラダイムの変革をもたらすような技術革新ではない。
p9
飛行機が革命であったように
インターネットが革命であったように
ブロックチェーンは革命である。
インターネットは社会を変え、経済をリードする主役の交代をもたらした。
しかし、当初予想されていたように、社会はフラット化することなく、小数の大企業が世界を支配するようになった。
アルファベット(グーグル)、amazon、アップル、マイクロソフトのことだ。
なぜ、このような寡占状態になったのか?
本質的な理由は
インターネットの世界では、何が正しいデータかを確かめることが容易ではなかったために、小組織や個人が信頼を確立することができなかったから。
組織が大きいことが人々の信頼の基礎になったから。
ところが、ブロックチェーン技術は、組織に頼らずに、何が正しいかを立証することを可能にした。それが実現することにより、社会は大きく変わる。
組織に頼らずに、個人の力を発揮できる社会が実現する。
経済活動の効率が上がり、組織のあり方が変わり、人々の働き方が変わる。
人々が直接に連絡し、取引する社会が実現する。
p10
しかし、正反対の可能性もある。
銀行などの大組織がプライベート・ブロックチェーンを利用して、効率性を高める可能性だ。この場合には、ブロックチェーンが信頼を確率するのではなく、組織がそれを保障することになる。したがって、大組織が社会を支配する構造が続く。
通貨について言えば、中央銀行が仮想通貨を発行して経済をコントロールする体制。
『1984年』のビッグ・ブラザーの世界だ。
つまり、ブロックチェーンが引き起こす社会変化は、正反対の2つの結果があり得る。
どちらが実現するか?
今、岐路に立っている。
p21
序章 ブロックチェーンが地殻変動を引き起こす
人や組織を信頼しなくても安心して取引ができる trustless system
重要なのは2点
①管理者が存在せず、自主的に集まったコンピューターが運営しているにもかかわらず、行っている事業が信頼できる
②そこに記された記録が改竄できない
ブロックチェーンがもたらす社会のことを
trustless system
「信頼できないシステム」ではなく
「個人や組織を信頼しなくても安心して取引できるシステム」のこと
p22
trustless trust systemとも言われる。こちらのほうが正確な表現。
これまでは
経済取引は、相手を信頼しないと成立しないと考えられてきた。
どんな事業でも、必ず管理者がいた。
管理者が事業のすべてに責任を持つ。
管理者が信頼できれば、人々は取引をする。
ところが
ブロックチェーンを用いた事業では
事業の進め方はプロトコルとして定めてある
プロトコルとは、コンピューターが従うべき手順の規則集
したがって
管理者がいないにもかかわらず、信頼できる。
これは、それまでの常識を完全に覆すもの。
この発明はあまりにも革命的だ。
経済的価値をインターネットで送ることができる
従来のインターネットでできなかったこと
① 貨幣など経済的に価値あるものを送ること
② 信頼性を確率すること
p24
ブロックチェーンを用いることで、経済的価値をインターネットで送ることができるようになった。
p25
これまでのインターネット → 情報のインターネット
ブロックチェーン → 経済的価値のインターネット
p26
社会を構成する新しい方式が見出された
これまで社会を形成する2つの基本的方法があった
① 計画と統制によって行う
賢人政治。
しかし、実際には全知全能の賢人は存在しないので、計画・統制システムは、独裁権力者による強制政治になる。ソビエト連邦がその例。
ソ連をはじめとする社会主義経済国家は機能不全に陥り1990年代初めに崩壊した。
p27
② マーケットにおける取引を基本として社会を構築する
アダム・スミスが描いた経済システム
社会を構成する人々は、各人がもっとも適切だと思う方法で、自ら望むところに従って行動し、他の人と取引する。必要に応じて仕事を分業する。これらの取引は、マーケットを通じて行われる。結果として、分配が決定される。
政治的な指導者はいるが、彼らは選挙で選ばれる。これもある種の市場取引。
p28
「彼自身の利益を追求してゆくと、彼は、おのずから、というよりもむしろ必然的に、その社会にとって、もっとも有利な資本の使い方を選ぶ結果になる」
(『諸国民の富』岩波文庫 第4篇)
p29
中央管理機関が存在しなくとも、ブロックチェーンを用いることによって、通貨の取引を、高い信頼性で実行できることが立証された。
p30
金融業は、広義の情報産業のひとつ。
情報技術によって大きな変化が生じるのは当然。
現在、金融業で行われている業務の多くは、情報の仲介。
これがブロックチェーンに代替されれば、中間業が不要になるので、コストが低下する。
銀行や証券会社が行っている業務の多くが、ブロックチェーンによって代替されれば、消滅するかもしれない。
p31
ブロックチェーン技術の、土地登記をはじめとする公的な登記や登録への活用が、すでに、いくつかの国で実施されたり実験が行われている。
p32
ブロックチェーン技術は、Iotでも重要な技術となる。
p35
世界はいまブロックチェーンという新しい技術の潜在力に気づいた。
金融の分野だけでなく、Iotやサプライチェーン、医療や教育の分野に用いられている。
すでに300近いプロジェクトがある。
もちろん失敗するものもあるだろう。しかし、いくつかのプロジェクトは成功して成長し、社会のあり方を大きく変えていくに違いない。
問題は、これらの中に日本発のものが殆ど見られないこと。日本は、世界の潮流から取り残されている。
p39
第1章 ブロックチェーン革命の到来
ブロックチェーンとは、公開分散台帳。
誰もが参加できるコンピューターの集まり(P2P)によって運営され公開される。
データの改竄ができないようPoWという仕組みが導入される。これにより、組織の信頼に頼らずに、信頼できる事業を運営できる。
p40
1ブロックチェーンの機能とメカニズム
ブロックチェーンは従来の情報システムと比べると
①記録が公開される
②分散的な仕組みで運用され、管理者が存在しない
③そのため、運営コストが低く、システムがダウンしない
④事業主体である組織を信頼する必要がない
という特徴がある
P2Pは、対等な関係にある複数のコンピューターが直接接続しあい、データを送受信するネットワーク。
PoW(Proof of Work)という仕組みによって、記録を事実上改竄できないようにしてある。改竄されていない唯一の真実としての履歴記録が、P2Pネットワークのどのコンピューターにも存在することになる。管理者が不要なので、低コストで運用できる。
p55
ブロックチェーンを用いれば、組織を信頼することなしに真正性を保証できるために、インターネットの世界で経済的な価値を送れる。
p56
プロトコルを書き、それを維持し改善する団体や組織が存在する。
ただし、ビットコインは例外。最初の論文を書いたSatoshi Nakamotoが誰なのか、いまだに分かっていない。
分散システムは攻撃に強い
中央管理的システムは、データを管理する中央コンピューターがダウンすれば全体がダウンする。
しかし、ブロックチェーンは、どれか一つのコンピューターがダウンしても他のコンピューターに同じ記録があるので、システムは動き続ける。これはゼロ・ダウンタイムといわれる特徴。
p58
ブロックチェーンで清算・決算コストを4分の1削減できる
全世界の金融機関で清算や決済にかかるコストは、毎年650億ドルから800億ドル(6.5兆円~8.0兆円)ほどと言われている。
p59
2016年5月、ゴールドマン・サックスはブロックチェーン導入の影響の推計を発表した。
ブロックチェーン技術の導入によって、証券・資本市場の清算・決済コストが、全世界で年間110~120億ドル削減される。
住宅の保険では
アメリカだけで年間20~40億ドルの費用削減が可能。
コストが下がると、利用者の負担が下がるだけでなく、新しい経済活動が可能になる。
特に、国際送金と小額送金マイクロペイメントの面での効果が大きい。
インターネットは、地球規模での情報送信のコストをゼロ近くまで下げた。
それと同じような変化が起きる。
・・・・・・つづく続きを読む投稿日:2018.03.01
ブロックチェーンのイメージは掴めた。たま今後の社会のあり方等うっすらと見えてきた。少し内容が難しいのと興味が薄いことから完全な読破にならなかった。関連本で補完したい。
投稿日:2023.03.26
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