阿含経典1
増谷文雄(編訳)
/ちくま学芸文庫
作品情報
ブッダはなにを語り、どのように説いたのか。その教えを最も純粋なかたちで伝える最古層の重要な仏教経典の集成。阿含=アーガマとは伝承されてきた聖典を意味する。これらの経典群のなかには、あらゆる宗派を超えた仏教の原初のすがたがあり、その根本がある。本書は厖大な阿含経典群のなかから、よく古形を保ち、原初的な経と判定される諸経をとりあげ、パーリ語原典からの現代語訳と注解で構成。第1巻は、ブッダの悟りの内容を示す「存在の法則(縁起)に関する経典群」と、その法則に即して人間をかたちづくる要素を吟味した「人間の分析(五蘊)に関する経典群」を収録する。
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商品情報
- シリーズ
- 阿含経典
- 著者
- 増谷文雄
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま学芸文庫
- 書籍発売日
- 2012.08.10
- Reader Store発売日
- 2016.07.08
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- シリーズ情報
- 既刊3巻
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この作品のレビュー
平均 4.5 (2件のレビュー)
-
キリスト教はいくら枝分かれしていっても、基本的には「聖書」に帰って行く点で常に同一性を維持している。しかし仏教は本当に不思議な世界宗教であり、どこに本体があるのかよくわからない。念仏さえすれば救われる…なんて仏陀はいいやしなかったし、鎌倉時代等に出てきた「日本の仏教」は、原始仏教とは完全に別の宗教だと言っていい。
それでも「始原」を好む私は、幾つかのアンソロジーや解説書で原始仏教に触れてきたのだが、この本はより内容の多い原初の経典である。
当時のインドで普遍的であった修行主義的な考え方が、やはりブッダにも見られるし、古代インド哲学らしい観念が飛び交う。
色(しき。身体)
受(じゅ。感覚)
想(そう。表象)
行(ぎょう。意志)
識(しき。意識)
こういった分類法は我々には恣意的に思われるし、そのようなところは古代ギリシャ哲学にも多く見られた。分類は言語と文化の形態に由来する。カントの分類法でさえ、私にはどうも疑わしく思えるし、果てはフーコーが『言葉と物』冒頭で引用した、ボルヘスのあの奇怪で馬鹿げた分類表までもが可能となる。
だが、そういう違和感はとりあえずおいといて、ここでブッダが注目したのはあくまでも個人の意識界という非常に狭い領域での、思考の闘争だったという事実を強調しておきたい。
だから、「個人の意識」が最終的に解脱することが最終目標だったのである。
さてこれら、人間の心的諸事象が最終的にすべて「苦」に至るという洞見に仏教の特徴がある。この「苦」から逃れるために、「色・受・想・行・識」のすべてを無常なものとして滅し去らなければならない。そうして根幹の「無明」を滅することが、解脱への唯一の道を開く。
精神を抜本的に鍛え直そうというスタンスは、原始仏教および古代インド哲学ならではの厳しさだが、こんにちの日本にはまったく受け入れられないだろう。現在、世間で一般に価値ある人生と思われているような、スポーツや学問等での大いなる努力の末に到達した「一流」のランクは、「解脱」から遠いがゆえに、原始仏教では全く価値を持たない。音楽なんてやっているヤツは目先の快楽にとらわれ、さらには名声欲だの自己顕示欲だのに惑わされている、どうしようもない連中である。無常そのものの凡夫としか言いようがない。
本書は、同じ内容の文章がやたら何度も繰り返されたり、少ししんどいのだが、時間をかけて、ちょっとずつ拾い読みすると良いかもしれない。そうして「解脱」という未知の領域にあこがれをそそられるのも有意義だろう。現代性とはまったく異種の思考がここにはある。
個人的には、手っ取り早く「苦」を滅したいならば、自殺がいちばん簡単なのではないかという気もするが・・・続きを読む投稿日:2012.09.19
こういうものは反復することに意味がある。ひとくち含んでは咀嚼し味わい、しばらく窓の外に目をやったりして、またふと紙面に目を落としては単純な説法に聞きいればいい。定期的に何度でも読みたい。
投稿日:2015.08.26
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