いつも彼らはどこかに
小川洋子(著)
/新潮文庫
作品情報
たっぷりとたてがみをたたえ、じっとディープインパクトに寄り添う帯同馬のように。深い森の中、小さな歯で大木と格闘するビーバーのように。絶滅させられた今も、村のシンボルである兎のように。滑らかな背中を、いつまでも撫でさせてくれるブロンズ製の犬のように。――動物も、そして人も、自分の役割を全うし生きている。気がつけば傍に在る彼らの温もりに満ちた、8つの物語。
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商品情報
- シリーズ
- いつも彼らはどこかに
- 著者
- 小川洋子
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2016.01.01
- Reader Store発売日
- 2016.06.17
- ファイルサイズ
- 0.5MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (40件のレビュー)
-
最近、時折読んでいる小川洋子さんの文庫本は、全て、私が引っ越してきた町で見つけた古書店で購入したもので、実は少々煙草の匂いが残っていました。まあ、気にする方もいらっしゃるとは思いますが、私は問題なし(…むしろ、後で見開きがよれよれになっていることに気付いた方が嫌)。
逆に、私の前に読んでいた人はどんな人だったのだろうと、想像してしまう。リラックスしながら読んでたのかな、なんて。自分のスタイルで読書したいのは、すごく共感できる。
前置きが長くなったが、この短篇集に登場する人たちは、皆、それぞれの行動スタイルというか、夢中になるものを持っている。しかし、その裏には、何かを失ったことが原因になっている人たちが多い。
失ったものがあるから、それに代わるものを探しているのかな。それでも、いなくなったものを想像するのは、納得できるものを探し続けているんだ。
その結末は様々だけど、新たな人生の糧になることもあるし、微妙に思うこともある。けれど、その人が自分で判断すればいいわけであって、時には、共感しづらいものもあったが、それだけ人生は幾通りにもなるということだと思う。私が理解できることだけが、世界の全てではない。そう思わせてくれる小川洋子さんの作品は、周囲との共感の少ない私にすごく合う。続きを読む投稿日:2021.07.22
このレビューはネタバレを含みます
小川洋子さんによる動物がテーマの短編集。2013年発行ですからちょい前のものです。
レビューの続きを読む
・・・
作りとしては短編集となっています。相変わらず不思議な物語を綴ります。
タイトルに動物が絡みますが、物語は…時として重層的に進みます。
あらすじを書こうと思ったのですが、上記の重層性の関係で説明しきれんと思い、このようにバッサリやりました。
帯同馬・・・タイトルは『フランスの凱旋門賞で優勝が期待されるディープ・インパクト。慣れない土地への移動のストレスを緩和するためにピカレスクコートが帯同場として出国した。』という点より。主人公は(おそらく)大阪モノレール間のみ移動できる電車恐怖症の女性(職業;実演販売)。
ビーバーの小枝・・・主人公はとある作家。タイトルは、彼の翻訳を担当した外国人が翻訳の際にさすったという、ビーバーが表皮をキレイに食った小枝より。
ハモニカ兎・・・主人公は、とある村の朝食屋の主人の話。タイトルは、この男の村で開催されるオリンピック競技の開催までの日めくりのボードより。ここにかつてハモニカ兎という特産兎がいたという話から、この動物が日めくりボードになっている。
目隠しされた小鷺・・・主人公はとある私立美術館の受付係。タイトルは、ここに訪れるうらびれた修理屋で何をやってもダメそうな「アルルの女」が機敏に助けた動物から。
愛犬ベネディクト・・・主人公は若い男の子(大学生くらい?)。タイトルは彼女の妹が可愛がる陶製の犬の名前より。
チーター準備中・・・主人公は動物園の受付で働く女。タイトルは彼女の失ったhがチーターcheetahに含まれていており、また彼女のすくな展示が主人のいなくなった「展示中」の檻だったことから。共有されない「喪失」の悲しみが痛い作品。
断食蝸牛・・・主人公はとある断食施設に身を寄せている女性。タイトルは、彼女が足しげく訪れた近くの水車小屋、そこで買われている蝸牛と、彼女が入っていた施設の目的から。
竜の子幼稚園・・・主人公は身代わり旅行人のおんな。タイトルは、若くしてなくなった弟が通っていた幼稚園から。
・・・
今回も、美しくも静謐に満ちた表現の花園にうっとりしたのですが、読中ひらめきました。小川氏の表現は、ナチュラル・メイク的表現だな、と。
通常描写というのは隠喩であれ勅諭であれ、手を変え品を変え、時に複数の角度から物事を表すと思います(違うって!?)。
でも小川さんの表現はこんな厚化粧ではないのです。もっとシンプルで美しい。あ、でも薄化粧というわけではないのです。
そこにはきっと計算と試行があり、一番質の良い表現が意図をもって配置されているのだろう。そして表現は適切に間引かれ、ミステリアスな雰囲気をまとうのだろう。
ああ、これって、(薄化粧でなくて)ナチュラル・メイクじゃないのか、と。という一人合点でした笑
・・・
表現が適度に間引かれているせいか、最初の「帯同馬」以外、舞台がどこであるか分かりません。
特に幻想度が強いのが、最後の「竜の子幼稚園」でしょうか。身代わり旅行人なんて聞いたことが有りません笑 でもあったら素敵だなあとも思いました。最後に死んだ弟と再会するかのような出会いも幻想度を高めていたと思います。
また、学校に通わなくなった妹がドールハウス世界に没入する「愛犬ベネディクト」もちょっとした狂気を感じます。妹の没入に祖父も陰に陽にサポートし始める点です。
・・・
ということで二週間ぶりの小川氏の作品でした。
今回も美しい静謐感に満ちた表現を頂きました。決して起伏が激しい展開ではありませんが、このワードチョイスあってのこの展開だと思っています。
ことばを楽しみたい方にはお勧めできる作品です。続きを読む投稿日:2024.04.14
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