兵士は起つ―自衛隊史上最大の作戦―
杉山隆男(著)
/新潮文庫
作品情報
津波に呑まれながらも濁流の中を自力で泳ぎ、人々を救助した隊員たちがいた! 自らの家族の安否も確認できないままでの救助活動、遺体と向き合う苛烈な日々……。そして非常事態に陥った福島第一原発では、世界が注視する中、全国からさまざまな部隊が召集されていた――。自衛隊を追い続けた著者二十年の歳月が生み出した緊迫と感動のノンフィクション。兵士シリーズの最高傑作。※新潮文庫版に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
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商品情報
- シリーズ
- 兵士は起つ―自衛隊史上最大の作戦―
- 著者
- 杉山隆男
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2015.08.01
- Reader Store発売日
- 2016.01.22
- ファイルサイズ
- 0.9MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (13件のレビュー)
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「日陰者」自衛隊から見たあの日(3.11)
第一部では地震直後に所属部隊(多賀城駐屯地)へ駆けつけようとしていた彼らに津波が襲いかかり、流された先で他の被災者を助ける自衛官たちと有事の際にすぐに被災地に出動できるよう準備していたにもかかわらず、…自身も被災したため機材が駄目になり、交通網が寸断され初動に時間を取られた部隊が如何にして現場に向かったのかが語られます。普通の人間であれば自分自身が生き残るのに精一杯の状況で、自身の生かしながら同じく津波に呑まれた・流された人々を救うという強靭さには感嘆します。
第二部は要救助者と遺体の捜索・救助の話で、特に「ご遺体」の章では読んでいて不覚にも泣いてしまった。72時間という生存時間リミットを過ぎて生存者よりも亡くなった方を発見する機会がどんどん増えていく絶望的な状況で警察だけでは対処できない数の遺体の捜索・搬送を担った彼らの奮闘振りが描かれている。初年から古参の隊員に至るまで連日連夜、不眠不休で「ご遺体」に対応する姿は涙なくしては読めない。何故そこまでできるのか?と思うぐらいの献身ぶりには本当に頭が下がる。
そして第三部は、未だに先が見えない福島原発での命がけの注水活動の話。核・生物科学兵器を対処する「中特防」102防護隊とCH47チヌークを運用する104飛行隊による福島第一原発・三号機の炉心プールへの海水注入による炉心冷却オペレーションが描かれている。これはNHKでも放送され当時全国民が見守る中、行われたあのシーンの裏でどのように作戦が遂行されたのかが語られている。
「日陰者」である彼らが唯一人々から感謝される災害救助という場面で自身も被災者になりながら「他を生かすため」に活動する姿を賛美するわけでもなく淡々としかし一人の人間として、同じ被災者としてあの日の彼らの行動を追った自衛隊員たちから見た震災レポート。これは自衛隊を何十年も取材してきた作者だからこそ書ける本だと思う。(再掲)続きを読む投稿日:2016.02.11
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父は自衛官でした。私は今”フクシマ”に住んでいます。大きな災害の時は、たとえ自宅が被災していようと父は家にいませんでした。
この本はかなりきれい事としてかっこよく書いてはいますが、おそらく事実として当…時はこのとおりだったのだろうと思います。本来の任務は戦争での人殺しのはずの軍隊ですが、災害派遣とは「これ以上揺るぎなく正々堂々としていて誰からもうしろ指をさされることのない目的」であり「現場に立ったとき隊員たちは自衛官としての日頃の慎みと寡黙を打ち捨てるかのようにここぞとばかり人命救助という任務遂行に邁進」したのでしょう。
ですが宮城や岩手はそのとおりでも、原発が爆発し放射能がばらまかれた福島の原発立地自治体の町々には軍隊である自衛隊ですら入り込めず、核専門部隊が原発対応を行うだけで、通常の自衛隊員による地域住民の救助活動は一切行われませんでした。原発のリスクを放置した東京電力と政府、経済産業省によって数多くの被災者全員が見殺しにされました。生きていた人たちも、福島県選出の議員が国会で言っていたように東電職員の家族だけはいち早く逃げ出しましたが、東電職員の家族以外の地域住民も自らの家族の救助はできませんでした。
地震と津波は天災ですが原発の爆発は人災です。東日本大震災以降、戦後、自民党や官僚がついてきた嘘や悪事が次々と暴かれ、この国を全く信じられなくなりました。
能登半島地震では東日本大震災などの教訓は全く生かされず、被災直後の72時間は陸路がだめなら海からでも空からでも大規模に人員を投入し救助を行うべきところを、新年会に浮かれたバカな自民党政府に邪魔され、犠牲者、被害者は増えたのではないでしょうか。
国に対する不信感はこの13年間、今でもどんどん募るばかりです。続きを読む投稿日:2024.03.19
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