エンデュアランス ──史上最強のリーダー シャクルトンとその仲間はいかにして生還したか
アルフレッド・ランシング(著)
/パンローリング
作品情報
エンデュアランス(不屈の精神)号、真冬の南極の海で座礁――
絶体絶命の漂流生活を切り抜けろ
絶望的な状況で、彼らは極地の暗黒の冬を越す。
その日記の中に、ある晩オーロラが現れ、全天を舞うシーンがある。
おそらく生きては戻れない運命の中、彼らはどんな思いでその光を見つめていたのだろう。
――写真家星野道夫
不可能を可能にした28人の男たち
アイルランド生まれの探検家サー・アーネスト・ヘンリー・シャクルトンは、1914年、南極大陸横断を目指し、27人のメンバーと「エンデュアランス号」で旅立った。だが南極へ向かう航海の途上で氷塊に阻まれ座礁、氷の圧迫で崩壊し始めた船を棄てる。およそ17カ月にもおよぶ漂流生活の幕開けだった。
シャクルトンは並外れた勇気と大胆さをもつ男であったが、平凡な日常生活でその力を発揮することは難しく、ときに場違いであり、的外れですらあった。だが、彼には天才と言っていいほどのある才能があった。歴史に名を残したほんのひと握りの人物たちに共通するその才能とは、「真のリーダーシップ」だ。
彼の部下の一人の言葉を借りれば、シャクルトンは「この世に生を受けた最も偉大な指導者」だった。彼には盲目的なところをはじめいくつかの欠点があったが、そんなことを打ち消すだけの指導力があった。
「科学的な指導力ならスコット、素早く能率的に旅することにかけてはアムンゼンが抜きん出ている。だがもしあなたが絶望的な状況にあって、なんら解決策が見いだせないときには、ひざまずいてシャクルトンに祈るがいい」
寒さ、食料不足、疲労、病気――。およそ生還は不可能という極限の状況下、たぐいまれなリーダーシップもと、28人の男たちはいかにして全員生き延びたのか。奇跡のノンフィクション。
※本書は『エンデュアランス号漂流』(新潮社)の新装改訂版です。
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この作品のレビュー
平均 4.8 (6件のレビュー)
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シャクルトンを知らずして、リーダーシップ論やらを語るなかれ
レビュータイトルを見て、偉そうに何を言うかと反感を持った人は、まぁ、まずは読んでみなされ。
絶対という言葉は避けるけど、ほぼ確実に読後は同感して貰える自信があります。フフフ(勝利を確信している余裕の笑…い)・・・。
無人島長平、アポロ13号、そしてこのエンデュアランス号、「事実は小説より奇なり」というがどれも現実の出来事。そして、どれも偉業だけど人間が成し遂げたこと。我々は幸運に恵まれただけなら奇跡とは呼ばない。人が行える範囲で、ギリギリの努力をして、不可能と思われることを行ったという点に神性を感じるのだろう。
英語圏では有名な人だし日本ではNHK-BSで番組もあったので、案外、知っている人も多いかも。
ユーモアを大事にしているところや、ギターをギリギリまで捨てないところは国民性が出ているなぁと思います。日本なら真っ先に不要物とされるだろうに。
続きを読む投稿日:2015.10.29
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冒険ノンフィクションの金字塔
「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。」
いまも語り継がれる、シャクルトンがロンドンの新聞に出した、有名な求人広告であ…る。
これに5千人以上もの志願者が殺到したというのも凄いが、その中から稲妻のような早さで直感的に隊員を選んでいくシャクルトンもやはり凄い。
とにかくシャクルトンは規格外の男で、彼にとって南極は、名誉やお金を得るための場ではなく、彼の怪物のような自我となだめがだい衝動を投げ打つ舞台だった。
並外れた勇気や大胆さを発揮したい人間にとって、ロンドンでの生活はきっと牢獄だったことだろう。
ついに出航という時、シャクルトンの気持ちの高ぶりを、著者はこう表現している。
「長い準備の期間はとうとう終わった・・・頼み込んだり、おべっかをつかったり、小細工をしたり - もう、そんなことはしなくてもいい。失敗と挫折、空しさに満ちた世界には別れを告げた。ものの数時間を経ずして、無数の小さな問題がからみあった複雑極まりない人生は、ただ1つの目的を掲げた単純明快なひとすじの道になる - あとはひたすらにゴールを目指すだけだ」
氷上での生活は、さまざまな試練を隊員たちに与えたが、それは不便を通り越し、どこか豊かさを感じさせるものに変わり、彼らの心に自立心を育んだ。
ズボンの継ぎを当てることさえ、家では人任せにしていた男たちが、何時間もかけてそれを成し遂げ、「なんと恩知らずだったのだろう」「最高の一日だ…生きることの喜びを感じる」と日記にしたためる。
雪と氷しかない、苛酷で寂しい原初的生活の中で男たちは、限られたものの中に満足を見いだし、必要以上のものを望まなくなる。
陸では無敵のシャクルトンも、最期にボートの旅に不安を感じていた。
海では、別種の戦いを強いられるためだ。
海との格闘は、疲れを知らない敵との肉体的な格闘であり、困難を耐え抜く勇気や信念ではどうにもすることができず、人間に望めるのは、ただ打ち負かされないことだけだからだ。
生き残りをかけたシャクルトンの戦いが最期にどういう結末を迎えるかは、読んでもらうしかない。
続きを読む投稿日:2016.05.21
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