人麻呂の暗号(新潮文庫)
藤村由加(著)
/新潮文庫
作品情報
“歌聖”柿本人麻呂――宮廷権力と密接な関係にあった歌人が高らかに謡いあげたのは無邪気な叙景歌にすぎなかったのか? わが国最古の歌集『万葉集』の成立にメスを入れた時、初めて見えてきた、もうひとつの風景。韓国語・漢語を媒介にして古歌を読み解くことで「ますらをぶり」の歌風は大胆な変貌を遂げた。人麻呂の生涯を辿りつつ、しなやかな日本語研究への道を拓く問題の書。
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この作品のレビュー
平均 3.3 (9件のレビュー)
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柿本人麻呂の歌が朝鮮語で解読できるという主張を軸にした話。刊行当時、称賛も批判も多かった問題作。ことばそのものやことばあそびが好きなので、こういう違った角度から解釈をするお話は単純にたのしい。暗号とい…うより、謎解き、パズル、といった感じ。著者は4人で、それぞれの名から1文字ずつ取った共有筆名。この共有筆名というのも、当時の私には新鮮だった。続きを読む
投稿日:2012.09.16
万葉集に数々の歌を残す柿本人麻呂は、多言語に長けた詩人であった。残された歌の一部は現代語訳がうまくなされていないことに目をつけ、朝鮮語(本文ママ)や中国語で解釈することによって、柿本人麻呂の晩年が明ら…かに…。
推理小説かと思って読み始めたんだよね。
それはさておき、最初の章からちょっと怪しいと言うか、偏見の入った解釈をしますよというポーズが見られ、早い話が「全部朝鮮語(本文ママ)で解釈することで何でも解ける」という話である。中国語(漢字)での解釈だと妙に悔しそうだ。
そういう偏見のもと、ドキュメンタリーと言うよりは、社会人大学のフィールドワーク風景で、仲間と会話をしながらというスタイルで話が進んでいく。
おそらく(本人は古典を読んだこともないと書いている)、素人の寄り合いに一人スーパーバイザーがいるという形で進んでおり、もともと大学等までの教育を受けていないだろうという雰囲気の人たちが多くでてくる。その弊害として、理系の学生にも多いのだが、スーパーバイザーが、本当の答えを知っていると思い込ませるような文章が続くので、読んでいて新規性があるのだか無いのだかがわからず、面白くもないしひたすら眠い。
新規のものを研究しているのなら、新規であることを前提に立てて書くべきで、「わかった」となったときの、スーパーバイザー"アガサ"の反応がなんとも腑に落ちないのだ。
途中からは、ほぼ漢字の分解と解釈という、普通そうだよなと言う話に。「石見で硯」「白水で泉」と大発見のように書いているが、そんなの江戸時代にもあり、現代のおっさんでも言うよね。とにかく浅い。
また、「地名は注意」と定義した割に、地名を現代の地名と当てはめてしまい、「兵庫県の云々」などと書いているが、本当にその時代にそんな狭い範囲を示すものだったんだろうか?
柿本人麻呂が渡来人であったとしても、別に面白みもないし、筆者は朝鮮と言うが、ほぼ中国の人と言ってよかったのではないかと、読みながら思った。
変な本だなと思っていたが、NHKが飛びついて、その後解釈が間違っていたことが明らかになったらしく、研究ってのは、先入観が強いほど失敗するよね、というよくある話である。
時間の無駄だった。続きを読む投稿日:2022.05.19
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