地図から読む江戸時代
上杉和央(著)
/ちくま新書
作品情報
地理的な空間をどう認識するかは時代によって異なる。その違いを象徴するのが「地図」である。大きくみれば、江戸時代は日本の「かたち」が地図上で整えられた時代であった。前期は、中世的な感覚にあふれ、観念的に日本の「かたち」が表現された。後期になると、政治や社会の変化にあわせて日本がとらえられるようになる。本書では、江戸時代の日本地図の変遷をたどり、現代の日本の「かたち」がいかにつくられたかを探る。近世史の知られざる側面を照射し、歴史地理学の世界へ読者を招待する一冊。
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商品情報
- シリーズ
- 地図から読む江戸時代
- 著者
- 上杉和央
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2015.09.10
- Reader Store発売日
- 2015.09.18
- ファイルサイズ
- 20MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
<目次>
序
第1章 伝統からの脱却
第2章 17世紀前半の日本像~交差する流れ
第3章 江戸時代中期の日本図~流宣図インパクト
第4章 地図を正す
第5章 新たな日本像の展開
むすびに
…<内容>
日本人の「日本」の地図表記の変遷を、江戸時代(一部それ以前)に限って分析したもの。
当初は古くからの「行基図」。これは「国」を連ねた塊として、「日本」が描き出されるのだが、江戸中期に石川流宣が出て、「絵図」ながら細かい情報をその中に盛り込もうとしていく。江戸時代後期に森幸安が正確さを求めようとし始め、長久保赤水がそれを実現化し、伊能忠敬が完成させる(ただし、忠敬の狙いは地球だが)。
それが市井に人々に評価されるのは、人々の関心が、自分の身の回りから徐々に地域、国家、地球(江戸時代にはここまで来る人は少なかったが)へと広がっていったことを示している。そこに「日本」や「日本人」へのアイデンティティも確立されていったのではないか?という分析である。続きを読む投稿日:2015.11.05
「地図」「江戸時代」
こんなキーワードを並べられるとついつい引っかかってしまう。だがしかし、「地図」はともかく、「江戸時代」は、近頃ヤバいキーワードになっているから要注意だ…なんて勘ぐっていたが、大…間違い。
まず日本という国が、いわゆる日本、という「国」と、駿河国とか摂津国とか、そういう「くに」があることを説明される。まあ、わかっている気になっているが、深く考えたことはない。日本地図を書く、と言ったら、大抵は海岸線を書いて、必要に応じて県境(くに境)を書くのが今の感覚だろう。だが「くに」がまとまりあって「国」をつくる、というスタイルの地図もある。海からの視点と、陸からの視点、と言い換えられる。つまりは誰をターゲットにしていた地図かもわかる。江戸時代というのは、海からの視点がなかった時代なのだ。
地図の技法だけを語るものではない。江戸時代にはもう出版業があったし、そこが流行を作っていた。「正しさ」「美しさ」を、時流を見ながら売り出していく。
江戸の地図、というと伊能忠敬が主役と思うだろうけれど、彼は最後にちょっぴり出てくるだけだ。彼は江戸の地図の「正しさ」にある意味とどめをさし、そしてまた「陸」から「海」の視点に転換していく役割を果たす。
地図はやはり社会の縮図だ。ただ事実を表すだけでないものがある。現代の地図は概ねカーナビ用、という趣で楽しくない。だがそれが時代に即した地図、ということだろうか。ともあれ、新書だけれど、大変濃密な本で良い。
続きを読む投稿日:2015.10.27
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