ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った
竹森俊平(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
欧州経済の危機は終わらない――ユーロが抱える「構造矛盾」を看破し、欧州崩壊のシナリオを予見した名著!
平和と経済統合の理想から出発したユーロは、当初からの構造矛盾を克服できず、南欧諸国の経済危機を拡大させている。この経済・金融危機は全世界を震撼させる大恐慌へと発展する勢いだ。独仏伊など欧州各国の利害対立や、国際機関の行動、深まる危機の様相を明快に解説。
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商品情報
- シリーズ
- ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った
- 著者
- 竹森俊平
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2012.10.09
- Reader Store発売日
- 2015.08.07
- ファイルサイズ
- 2.3MB
- ページ数
- 280ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (16件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
前回のユーロ危機(ギリシャ危機)の直後に買ったままで放置していたが、またぞろ「ギリシャ危機」が再発したので、慌てて読み出したが、専門用語がバンバン出てくるし、新書にしては内容もかなり専門的。それなりの専門知識がないと、途中放棄したくなるので、それを覚悟で読んで下さい。例えば、ESM、ECB、BVG、CDU、EFSF、SPM、GIIPS、LTRO、SMP等々皆さんどれだけ答えられますか?
レビューの続きを読む
歯応えは十分過ぎて、刃毀れする程の感じで、読み応えのある本だと思いますが、新書ならもう少し易しく書いて欲しかったと思います。
内容は要するに、ユーロについては、
①「最適通貨圏の条件」を満たしていない地域に「共通通貨」が導入されたこと。
②「政治」もしくは「財政」の統合を実現しないままで「通貨」と「金融」の統合を実現したこと。
それは第2次大戦後の欧州の夢が、現実を追い越して走り出した事に起因しているのかも知れない。
彼らは政治的な意思を集結させ、一歩一歩改革を実現していった。こうして成功がさらなる成功を呼ぶプロセスが生まれた。そしてそのことをジョージ・ソロスが「欧州の統合拡大と、現在起こっているその崩壊とはともに一種のバブルだった」と指摘しているのには驚いた。まさに金融バブルの発生と全く同じプロセスだった。
現実には欧州中央銀行のドラギ総裁の奮闘で、辛うじて危機は逃れたが、当時の著者は、「ユーロ持続」と「ユーロ崩壊」のどちらの可能性が高いかと言えば、「崩壊」のシナリオがより現実的と言う。(2012年の時点。現在は撤回???)
問題国に対しては、不況の最中にドイツ主導の極度の緊縮財政を強行し、増々不況が深刻化し、財政状態もさほど改善することもなく、国民の不満が一点に集中する。何に集中するかと言えば、それは「ドイツ帝国」だと結ぶ。投稿日:2015.06.25
2012年出版。問いかけの後にすぐに回答を明示してくれない書き口も合わさって、EUの前提知識ゼロで読むにはやや難解。
金融と通貨について少しずつ理解が進んできたつもりであったが、
改めてユーロについ…て問われると、何もわかっていなかったのだと気付かされる。
そもそも、国ごとの経済力の差を為替や金利で埋めていたとすれば、
経済状況が異なる国々が単一通貨で共通の金融政策をとるときに、どのような調整が必要となるのか。
例えばある国で財政危機となり通貨の信用が失われれば、そこからの資本流出は加速する。
特にユーロ圏内であれば、共通通貨特有の流動性により、安全性の差がわずかであっても高い箇所に一極集中することとなる。
ギリシャが危ういとなれば、次に危ういスペイン・イタリアをすっ飛ばしてドイツに集まるということだ。
そんな事態の回避のため、EU加盟国で参加国家の財政危機が訪れた時、常に他の国が手を差し伸べなければならないようでは、
ドイツの一人損になってしまうが、何もしないでは、資本と一緒に膨大な移民が押し寄せる事態となる。
では、財政危機となった当事国の取りうる手段はなんだろうか。
本書では、不況のさなかに増税を行ったフーバーと、減税を行ったケネディの両者とも間違いではなかったとする。
ケネディの政策は、減税による需要と供給の活性化により雇用改善を行い、その結果としての市場活性化による税収増加で財政再建を狙うということであり、
フーバーの政策は、金本位制の中でドルの信用を維持するため、まず増税による財政の健全化を行うことで資本逃避を防ぎ、その結果としての安定した市場にて雇用改善を狙う。
これと現在のユーロの状況を見比べると、ギリシャもスペインも不況時に緊縮的な財政政策を採用したが、
これは国家として市場の信頼を回復するためであり、財政均衡を目指さなければさらなる資本逃避に見舞われるためであるとわかる。
ここまでが本書の半分程度であり、結局のところ、そもそもユーロはどのような設計であったのか、
2021年現在、観光業が大きな収入源であったギリシャがコロナ禍でも何故破綻しないでいられるのか、
本書のみから推察することは不可能だ。
事例と理論の両輪を学ぶことで学習効率が上がるとすれば、
本書での勉強も遠回りでなかったはずだと信じ、ユーロ設立当初の理論から学び直すこととしたい。続きを読む投稿日:2021.07.31
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