起業のファイナンス 増補改訂版
磯崎哲也(著)
/日本実業出版社
作品情報
起業家はもちろん、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士などからもご好評をいただいた前作の増補改訂版が登場。本書により、起業家は起業や成長のイメージを膨らませることができます!
前作は、ベンチャー投資額が大幅に減少し続けるなかで発行されましたが、その後のベンチャー生態系の急速な活性化により、元気なベンチャーが多数起業し、数十億円規模の増資を成功させるベンチャーも登場するようになりました。
そこで、2015年施行の改正会社法も反映させた、ベンチャーのコーポレートガバナンスを解説する章を新たに書き足すなど、起業にまつわる最新の情報を盛り込み、全編を大幅に書き換えました。
事業計画、資本政策、企業価値、IRなどの基本的な知識から、コーポレートガバナンス、社外取締役に求められる役割、会社の機関など突っ込んだ話題まで、人気メルマガ「isologue」の磯崎哲也氏がわかりやすく解説します!
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商品情報
- シリーズ
- 起業のファイナンス 増補改訂版
- 著者
- 磯崎哲也
- 出版社
- 日本実業出版社
- 書籍発売日
- 2015.01.20
- Reader Store発売日
- 2015.07.17
- ファイルサイズ
- 8.7MB
- ページ数
- 380ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (46件のレビュー)
-
読者の多くを企業者の目線に設定されている。専門家として起業家のサポートをしようとする立場からすると、サポート対象の属性やニーズを知れるいい素材。
投稿日:2023.05.15
このレビューはネタバレを含みます
起業する人は読んでおいて損はない。書いてある事は、財務的な云々よりも、マインドだったり、実務における勘所に関するところで、注釈的なところに読み応えがあったりする。この本は、元mixi朝倉さんも薦めてお…り、彼のVoicyなどを聴いてると、この本に通ずるメッセージが良くわかる。
レビューの続きを読む
サブタイトルの「ベンチャーにとって一番大切なこと」は、金や人脈、ビジネスモデル云々よりも、“アニマルスピリッツ” なんだということには、強く共感する。
誰からも頼まれてないのに、内から湧き出てくる、やってやるぞ、やり遂げてやるぞっていう強烈な志がそれにあたる。
この本の個人的なポイントを3つ挙げると、
・米国と日本の家計資産構成の違いの背景
・日本のベンチャーにとって環境は悪くない
・アニマルスピリッツを持つイケてるベンチャーが必要
このあたりは主要メッセージかなと。
資本政策において、後から取り返しが効かないことにもなり得るから、実務上での注意点が挙げられてるから、丁寧に意思決定していくのが望ましい。
法人化いつするの?法人格どれが適切なの?資本金は?このような必ずぶつかる問いに、適切なロジックで導いてもらえる。売上や利益も出てないような会社がどうしてその評価額をつけられるのかとか、VC側でどの程度の時間軸でどの程度のリターンを望んでいるという事情や、持ち株比率による支配権と資金調達のバランス感など、「唯一の答えはないけど、ここらへんが落とし所だよね」的な実務者ならではの具体的な情報共有がとてもありがたい。
企業価値評価、ストックオプション、ベンチャーキャピタル、優先(種類)株式、、どれも、ざっくり知っておいて損はない。というか、ベンチャーの経営に関わるなら必読書といえる。
以下、読み返し用メモ↓
・ベンチャーの場合は特に、自分が計画すれば、その通りに物事が進むと言う事は期待できず、ライバルなどの出方によって、状況は無数に変化します。しかも、ビジネスの場合、将棋と違って、すべての情報が入手できるわけではありません。必要とされるのは、状況に応じてフレキシブルに対応できる能力です。
◎「不況時に起業した会社はうまくいく」と言われるのは好況に浮かれて起業した会社より、不況時に堅めに考えて商売を始めた方が成功率が上がると言うことがあるからでしょう。加えて、不況時には起業を考えるライバルが少ないと言うこともあります。儲かっているビジネスは必ず真似をする奴が現れます。
・人間の神経は、刺激を一定の閾値以上に受けないと反応しません。周りの人間がどいつもこいつも、みんなベンチャーをやろうとしていたら、あいつにできるんだったら俺だってと思うようになるわけです。
・ベンチャーキャピタルのファンドは、通常7年から10年程度の期間を設定して投資家から資金を集めます。1999年の証券自由化以降、ナスダックジャパン、いや東証マザーズといった新興市場が創設され、上場のハードルが大きく下がりました。このため、会社設立から年数が少なく、まだ売り上げ規模や利益が安定していない企業でも上場できるようになり、シードやアーリーステージの企業に投資しても、数年で投資や回収できる可能性が増加して、そうした企業への投資も行われるようになったのです。
◎基本的に素性のわからない人を株主や取引先にしてはいけません。
・上場しても生きていけないことがわかっていながら、「早く上場しろ」と急かすようなアホなベンチャーキャピタルや証券外車等の言うことを聞かないで済むようにするには、基本的には事業自体がいけていて、成長力があることが重要です
◎日本のように、個人のお金が主に銀行を通じて、企業に供給される構造だと、経済変動のリスクは銀行が一手に引き受け受けることになってしまう。結果として大きな経済変動があると不良債権が積み上がり、銀行の景気が必然的に起こることになります。こうなると政府が関与せざるを得なくなってきます。兆円単位の資金を迅速に供給できる主体は他にいないので、仮に資金が必要であれば、政府が公的資金を投入せざるをえません。しかし、国が関与すると言う事は、国会と言う世の中で、最も意思決定が遅い機関での決定を経る必要があると言うことです。長期の不況の一因にもなってしまいました。
◎米国は、家計が金融資産の大半を債券や投資信託、株式の形で保有しており、個人が直接企業のリスクを形になっています。このため、米国では、よくも悪くも経済が大きく変動する際のリスクは、銀行ではなく、家計を直撃します。しかし、間に国会のような意思決定の遅い機関を挟んでいないため、この衝撃の余波は、日本と比べた場合に相対的に短期間で収束し得る構造になっています。欧州はこの米国と日本の中間と言う感じになっています。
・年によってばらつきはありますが、それでもやはり、米国のベンチャーへの投資資金は日本の数十倍あるわけです。
◎日本のベンチャーに投資される資金が少なすぎると言うことでは必ずしもないのです。イケてる企業から見れば投資してもらえるお金は非常に有り余っているわけです。日本に不足しているものは、ベンチャーのためのお金ではありません。そのお金を受け取る「イケてるベンチャーの卵」の方なわけです。
・現代においても、特に外部の投資家から資金調達したり、上場することを目指したりするような企業であれば、会社を設立した以降は、自分の欲望のためではなく「法人のため」「株主のため」「社会のため」になるかどうかを考える必要がある。
・資産を10億円も持てば、大抵の事は間に合ってしまうはずです。ちょっとお金持ちになりたいと言うだけが目的の人では、それ以上の高みを目指すインセンティブは湧いてこないはずです。
・経済学者のケインズは、人間が不確実性のある未来に対して投資を行うのは、アニマルスピリッツのなせる業だとしています。
・「この事業絶対成功する」と言うのは論理的に間違っています。頭が良くて、合理的でファイナンスに詳しい人ほど客観的で冷静な考え方をする傾向があります。
◎強烈な願望が止めようもなく、心の底から湧き上がってくるタイプではなく、理性的に物事を分析する方が好きなタイプだとしたら、もしかすると起業してリーダーになるのは向いていないかもしれない。すごいスピリッツの持ち主を探してきて、そのサポートに回ると言うのも1つの手です。
・100,000円でも節約したいと言う人なら、軌道に乗るまでは個人事業でも構わない。
・個人の所得にかかる所得税は総合課税ですので、サラリーマンとして働いて、給与所得があり、同時並行で行っているビジネスが赤字であれば、その給与所得と事業所得の損益通算ができます。黒字の法人になると、法人税等が約4割かかってきます。
・株式会社のメリットとしてよく有限責任が挙げられます。銀行等から借入をする際には、社長が個人保証させられるのが普通です。
・将来、上場を目指すようなベンチャーであれば、素直に株式会社にしておくのが良い。
・会社法が施行される。2006年位前は、原則として株式会社資本金が1千万円以上ないと設立出来ませんでしたので、2000年頃のネットバブルの頃には、資本金が数十万円でも設立できる合資会社などでベンチャーを設立する人も多かったです。しかし今や株式会社の資本金の加減を撤廃されたので、将来上場や買収も視野に入れて会社を設立する人は、合同会社やLLPではなく、株式会社で全く構わないと思います。株式は多くの人に理解されやすいし、投資の回収もしやすく設計されています。誰にもわかりやすくて扱いやすいと言う事は、結局会社の運営コストを下げると思います。
・株式と言うのは、会社の権利を小分けしたものですから、株式で資金調達すると言う事は、会社を小口化して販売するのと同じことなのです。
・ベンチャーキャピタルから投資を受けると言う事は、上場を目指すと言うことであり、上場までに億単位の資金が必要なので、あれば億円単位の評価をしてもらわないと、資本政策上、上場が難しくなったり、上場してから大変になったりすることが多いので、こうした評価をしてもらうと言うことを考えないといけなくなります。
・日本の税制では、個人が法人にものを定額で譲渡したり、現物出資したりした場合には、たとえ対価としてその分のお金をもらっていなくても、その時の時価で譲渡したことになってしまうのです。
・条件が全く決まっていない段階で法人化を行い、その後でベンチャーキャピタルと交渉して、増資の株価が決定した場合には、創業者が法人に事業譲渡した段階での時価が5億円だったとは、税務署もなかなか主張しにくいと思います。
◎法人化するのは、まだ赤字かほとんど利益が出ていない段階で、ベンチャーキャピタルなどの投資家と増資の交渉が始まっていないような段階が望ましいわけです。
・資本金と言うのは、本来、債権者が資金を回収しやすくするためのバッファです。資本金が大きいほど、配当できない財産が会社に多く残るので、資本金が大きいと言う事は債権者には有利です。資本金が大きいことで、会社や株主の得になる事はあまりない、例えば、登録免許税も資本金が大きくなれば大きくなります。消費税や法人税法上も資本金が小さい方が何かと有利ですし、会社法上の資本金が5億円を超える大会社になると、会計監査人の設置が義務付けられ、同時に監査役会を置く会社も多くなります。このため、ベンチャーの設立時においては「なるべく資本金を減らせないか」を考えてみましょう。
・会社を設立すると、登記費用その他諸々ですぐに数十万円のお金が出てきます。登記費用などを払ったらそれだけで債務超過になる「資本金0円、資本金1円」といった会社の設立はあまりお勧めできません。最低でも、30万円〜50万円位にしておいた方が良い。
◎イケてるベンチャーの要件は、「イケてるソーシャルグラフの中に潜り込んで、自分の必要を叶える能力」、例えば、「資金を出してくれる人にたどり着いたり、人材などを見つけだしたり、営業で成果を上げる能力があること」
・商売の中でも、特に創業時の商売と言うのは、そういう「人のつながりを通じて何かを成し遂げる」要素が大きいのではないかと思います。
・事業計画の全体の構成は、下記のような感じがオーソドックスでわかりやすい。
・エグゼクティブサマリー(要約)
・会社の概要
・外部環境
・数値計画(損益や資金等の計画)
・検討している資金調達の概要や、資本政策
◎ざっくりした最低限の数値計画ぐらいは作るのが良い。「需要がすごくあるんです」といった抽象的定性的な判断だけで、新しい事業を考える人が多いのですが、「すごく」と言うのは具体的にどのくらいなのですか?
・真似されても勝てるのかどうかと言う点を考慮しないといけません。
・売り上げを野望の部分と常識的な部分に分けて考えることも必要。
・「利益+減価償却費−設備投資」がキャッシュフロー(フリーキャッシュフロー)です。
・ 1億円の当期純利益が出ていて、PERが20倍位のビジネスだとすると、時価総額20億円と言うことになります。このくらいの規模が上場できる最低ラインだと思いますが、その後それほど成長しないのでしたら、上場した意味はあまりないと思います。内部統制や監査にもコストをかける必要がありますので、なんだかんだで上場のために年間1億円前後位はかかると踏んでおいた方が良いと思います。利益の何割かを上場維持のために取られることになるわけです。このため、現在、「上場を目指します」と言って投資してもらえるハードルとしては5年後とか7年後、20億円とか40億円とかの規模の純利益が出て、上場時の時価総額が300億円とか500億円程度になる事業と言うことになるのではないかと思います。
◎最終的な均衡状態になったとして、その時の自分の会社の規模は何人ぐらいになっているでしょうか? 売り上げは最終的にどのくらいになるでしょうか?技術革新が起こって、何分の1のコストで同じことができるようになったりしないでしょうか?その時にどうしますか?
・自分が自信を持てない話で、取引先や顧客投資家などを納得させられるわけがありません。
・周りの人を巻き込めると言うのは、事業計画が合理的であることもさることながら、そういう未来像が実現すると信じる力(アニマルスピリッツ)が根源にあることが必要だと思います。
・創業期のベンチャーにおいては、事業価値≒企業価値≒株主価値であることが多い。
・帳簿価格の純資産で、企業価値を見ると言う方法は、会社の過去に注目した企業価値評価の方法だといえます。ベンチャーが過去で勝負したら負けです。
・過去に縛られない方法の例として、類似企業比準、類似業種比準などの方法があります。似ている企業や業種の売り上げや利益、純資産などを参考に、企業価値や株価を決める方法です。類似の企業があるということは競争もあるということです。
・インターネット上のサービスでは、特定の領域で一位のサービスしか生き残れないということも多いです。
・参考になる企業が存在したとしても、その計数が入手できるかどうかと言う点もあります。
・事業計画を策定する際などには、上場企業の財務データなどを部分的に活用する事は大いに意味があります。
・企業価値の最も理論的な評価方法として、DCF法が挙げられることが多いかと思います。ディスカウンティッドキャッシュフロー法(割引キャッシュフロー法)と言う名の通り、その企業に将来入ってくるキャッシュフローを、現在の価値に割り引いたものが、その企業の事業価値だと考える方法です。
・将来のキャッシュフローの予測は、策定した事業計画から持ってくることになります。つまり、事業計画を立てておかないとDCF法は使えないわけです。
・ぶっちゃけて言えば、この割引率は創業して間もないベンチャーの場合、あまり精密に考えてもしょうがありません
・現在、日本の金利水準が低いこともあって、この「リスクフリーレート」「β値」「固有リスクプレミアム」と言った数字を積み上げて計算しても、割引率は10%程度にしかならないことがほとんどだと思います。
・ベンチャーの場合、有利子負債がないことが多いので、有利子負債= 0を代入すると、WACC(加重平均資本コスト)=Re(自己資本コスト)となります。
・結局、前出の項目で言うと、割引率は10%どころではなく、合計で40%とか50%で見ているのと同等といったことが多くなってきます。つまり、その差額は「固有リスクプレミアム」を30%とか40%といった高い率で設定し、さらに、まだ上場しておらず、株式が自由に売却できないことによる「流動性ディスカウント」など数10%を見込むといったことで調整していることが多いと思います。
・事業計画は、3年とか5年で区切って、その先は、一定のペースでキャッシュフローが成長していくと仮定して、「その時点での」事業の価値を算出します。その3年とか5年の時点での事業の価値が「残余価値」です。
この残余価値は、数字をちょっといじるだけで大きく変化します。このため、残余価値を計算したら、必ず別の観点からの妥当性をチェックするべきです。
・DCF法の数式を構成するものは、大きく、各年のキャッシュフロー、割引率の2つだけです。
◎将来のキャッシュフローが大きいほど企業価値は高く、将来のキャッシュフローの確実性が高いほど企業価値が高いと言うことになります。
・数値の精密さも、「その他」のリスクでかき消されてしまう。
・創業期でまだ黒字化も見えていないような企業の場合、割引率は4割から6割位になることが多い。上場が確実視されるようになってきた企業は割引率が10数%から20数%程度になっていることが多い。
・将来のビジネスの規模とその確実性がカギになる。
・創業期のベンチャーなんて、マクロ経済が関係あるほどの大きさではあるわけではないので、マクロ経済を言い訳にするベンチャー経営者はあかんと思います。
・1回の増資で会うべき投資家の数は、数十は普通です。ただし50以上の投資家に募集したり、ネット等で一般にアナウンスすると、「公募」に該当し、有価証券報告書の提出が必要になります。
・創業期の会社の企業価値評価が何で決まるかと言えば、最終的には資金を求める側と投資をする側の需給のバランスとしか説明のしようがない。
・企業価値が安くて得になると言う事があまりないのも事実ですが、企業価値評価が高ければ高いほど得とも限らない。
・ストックオプションは、通常は会社が役職員等にタダで配るもので、もらう役職員側には基本的にはリスクがありません。権利であって、義務ではないので、もし株価が下がっているなら、行使しなければいいだけのこと。
・ストックオプションは、「将来の可能性」をベンチャーの推進力に変換する仕組みともいえます。将来の可能性しか持っていないベンチャーが既存企業と対抗していくための数少ない武器の1つです。
・例えば、将来株価が200,000円になったとしましょう。ストックオプションがあれば1株50,000円で株式が購入できるのですから、ストックオプションを行使して株式を1株50,000円で買って200,000円で売れれば150,000円が儲けになります。
◎一般的には、創業に近い時期にもらったストックオプションの方がトクなことが多いです。重要なのは、ベンチャーキャピタルが投資した前とか後とかではなく、自分がストックオプションをどのくらいの量をもらえるのかそしてもらった後にどのくらい企業価値が上がるのか(能動的に言えば、自分がどのくらいその企業の価値を上げられるのか?)にかかってきます。通常はストックオプションを受け取ってから2年程度は行使することができないように設計されています。行使の開始時期のことをクリフと呼んでいます。行使できるようになってからも、すぐに100%が行使できるのではなく、何年かに分けて行使できるようになっています。べスティングと呼ばれています。縛りをつけることで、仮に企業価値が大幅に上昇しても、役職員が大金を手にしてすぐに会社を辞めてしまわないように配慮しておくわけです。概ね発行されるストックオプションが上場までの累計で発行済み株式数の10%以内に収まるように考えておけば無難です。超えると最悪の場合は上場できない場合も。
・有価証券届出書と言う書類にストックオプションを受け取った全員の名前と住所が開示されてしまいますので、上場できた場合には、誰にどのくらいストックオプションが付与されたのかはばれてしまうわけです。開示された時にも納得感があるルールに従って決めておくことが重要です。
・現在発行されている日本企業のストックオプションは、会社法上の新株予約権と言う権利です。
・時価50,000円の株式を50,000円で購入することができるストックオプションでも、ただで他人にあげるのはもったいないなぁと思ったのは、この本源的価値だけではなく、他の価値もあると言うことなのです。これが時間的価値の部分です。
・ストックオプションを発行しているたいていの上場企業は、決算発表後の特定の時期だけ行使、売却可能としていたのではないかと思います。
・上場していないベンチャー企業は、発行時の時価以上の行使価格で発行する限り、費用計上しなくて良いことになっています。逆に、上場したら、ストックオプションを発行する場合には、費用計上が必要になります。上場した途端にストックオプションを発行しなくなるベンチャーが多くなります。
・「プロにチェックしてもらったから安心」と思わないで、自分の会社でも(特に依頼したプロが「数式弱そうだなぁ」と思ったら、数式に関連する部分は慎重に)チェックしておくことをおすすめします。
・日本の所得税法の原則では、モノやサービスをただで、受け取ったら、受け取ったときの時価を所得と考えて課税することになっています。ストックオプションはこの所得税法の例外になっています。「株式が取得できる権利」の課税は「もらった時」ではなく、「権利を行使したとき」の時価で考えた所得に対して課税されることになっています。
・(税制適格ストックオプション)特定の要件を満たすストックオプションについては、付与した時も、行使した時も非課税で売却したときに初めて課税されることになります。
【税制適格ストックオプションの要件】(非常に厳しい
・行使価格は時価より下げてはいけない
・無償で発行されること
・取締役、執行役、使用人である個人に付与されるもの
(監査や外注先はならない)
・契約により与えられたものであること。
・行使は2年後から10年後までに行う
・講師価格は年間12,000,000円まで
・譲渡禁止
・資本政策は、初期の間違いほど後になってから修正が効かない。
・資本政策表には、財務諸表のようにこうでなければならないといった特段のルールもありません。
・新株予約権や新株予約権付社債等、将来株式に変わる可能性があるものは、総称して潜在株式と呼ばれます。
・1人の投資家が5割を超える株式を持つと、株主総会の普通決議では、必ず自分の思い通りに物事を決めることができるようになります。50%越えを持つ株主が法人であれば、その法人の子会社になると言うことです。口出しをしない投資家だと思っていたのに、豹変して経営者に不利な形で議決権を行使してくると言う事はもちろんありますのでご注意を。
・特別決議を実施する場合に、3分の1超を持つ株主がいると、必ずその株主の了解を得ないと決定できません。つまりその株主に拒否権が発生することになります。買収先や取引先になり得る業界の1社に拒否権を持たせるような資本政策を採用する場合には、そうしたデメリットを超えるメリットがあるのかどうかよく考える必要があります。
・特定の投資家に議決権の3分の2以上持たれてしまうと、そうした拒否権も使えないことになってしまいます
・その投資家が本当にどこまで何をやってくれるのかはよくよく考えたほうがいいと思います。
・米国の事例を鵜呑みにしない方が良い。日本の場合、社長が安定した比率の株式を持ち続ける必要性は高くなる。
・投資契約で、ベンチャー側が最も気をつけるべきことの1つは、「〇〇年までに上場できない場合には、会社と社長が連帯して株式を買い取らなければならない」といった株式の買い取り条項です。
会社法の株主の権利では、
①余剰金の配当を受け取る権利。
②残余財産の分配を受ける権利。
③株主総会における議決権
種類株式では、
①余剰金の配当を受け取る権利。
②残余財産の分配を受ける権利。
③株主総会における議決権の範囲の制限
④株式の譲渡制限
⑤株主からの取得請求権
⑥会社による取得条項
⑦全部取得条項
⑧種類株主総会での決議事項
⑨取締役又は監査役の選任権
・残余財産分配権は、そのベンチャーが生産する場合や潰された場合に、債権者に債務を支払った残りの財産をどうするかについての権利です。創業者は普通株式を持っていることが多いので、投資家が優先株式で投資をする場合には、当然優先株式には普通株主に先立って、残余財産を分配受けられる権利をつけることになります。
◎ベンチャーで用いられる取得条項は、優先株を普通株式に転換するために使われる用途がメインです。この優先株1株に対して普通株式は何株交付するかという「転換比率」を一定の株式で調整するところが、優先株を使う場合の最大のミソになります。
・拒否権は、一定のことを種類株主総会の決議で決議しないと効力を発しないことを定めるものです。事業、譲渡等を種類株主総会で決議しないといけないと定めておけば、この優先株式を持っている投資家は、創業者等が3分の2以上株式を保有しているような場合でも、事業譲渡等を使った買収を阻止できます。
◎優先株式で定める方が「強い」ため、優先株式を発行するときには、専門家に相談することが不可欠になります。
・普通株式のほかに、何種類もの優先株式があると、上場した後の一般投資家には、自分の投資する普通株式の性質がどうなるのかと言う非常にわかりづらくなります。このため、上場する際には、通常優先株式をすべて普通株式に転換してから上場することになります。何事もなくすくすくと成長したベンチャーの場合には、上場する際にも優先株式1株に対して普通株式1株が交付されることになります。
・タイミングが重なってしまうと、両者が別々の株価で投資すると言うことが税務上その他の理由で難しくなってしまいます。優先株式は、投資家にとって普通株式よりメリットがある条件がいろいろついてくるわけですから、同じ時点でも普通株式より価値が高くてしかるべきです。
・社外取締役の役目は、経営陣と投資家の利害を一致させ、株主の目的、すなわち、企業価値の向上を実現することです。
・企業の利害関係者全員がハッピーになっている成功している未来をイメージし、そこにたどり着くためには、何をすればいいかを投資家と経営者の間ですり合わせる仕組みこそがコーポレートガバナンスだと考えます。
・投資契約や株主間契約、優先株式の内容が、米国と違った形で、コーポレートガバナンスの1部を担っています。
・従来の日本のベンチャーのコーポレートガバナンスの形態の「最終進化形」としては「取締役会+監査役会」がイメージされてきましたが、今後は「監査等委員会設置会社」または「指名委員会等設置会社」が活用される事例も増えてくるかもしれません。
・ベンチャーとは、誰もわからない未来にチャレンジする企業なことです。日本に1番不足している希少資源は、技術力でも、お金でもなく、アニマルスピリッツとそれを待ち合わせている人である。
・地から芽を出したばかりの双葉に水をジャブジャブ与えても根が腐ってしまうだけです。
◎「他人のせいで」と言う発想から卒業して、「自分が何をするか?」と言うマインドを広めることこそが、今の日本を変える鍵であるはずです。続きを読む投稿日:2023.10.06
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