記号と事件 一九七二―一九九〇年の対話
ジル・ドゥルーズ(著)
,宮林寛(訳)
/河出文庫
作品情報
『アンチ・オイディプス』、『千のプラトー』、そして『シネマ』の核心、ミシェル・フーコーの思想、哲学とは何か、そして来るべき政治などについて、明快かつ縦横に語るドゥルーズ自身によるドゥルーズ入門。「規律社会」から「管理社会」への転換を予言したネグリによるインタビューはじめ、いずれも重要な対話群の集成。改訳版。
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商品情報
- シリーズ
- 記号と事件 一九七二―一九九〇年の対話
- 出版社
- 河出書房新社
- 掲載誌・レーベル
- 河出文庫
- 書籍発売日
- 2007.05.08
- Reader Store発売日
- 2015.02.13
- ファイルサイズ
- 1.9MB
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この作品のレビュー
平均 4.6 (10件のレビュー)
-
ドゥルーズ初挑戦なので、インタビュー集なら何とかいけると考えて手にしたけど、だいぶ時間がかかって読了。
正直理解できたのはほとんどないけれど、所々魅力的な言葉、フレーズがあったので、それを記録として残…しておきたい。あと内容とは関係ないが、フーコーへの畏敬の念をつたえるドゥルーズに好感をもった。
「概念とは、一般的な概念とは、一般的な思考の流れに作用をおよぼす特異性のことなのです。概念がなくても思考することはできる。しかし概念があらわれたときはじめて、真の哲学が成り立つのです。」(p.70)
「強者とは、ふたつの陣営があったとき、そのどちらかにつく者のことではない。強いのは境界なのだ。」(p.96)
「文学には、文学でしか実現できない独自の創造的意図がある、そもそも文学が、文学とはおよそ無縁の活動や意図から直接に生まれた残滓を受け取る必要ないということを忘れているのです。こうして本は「副次化」され、マーケティングの様相を帯びてくる。」(p.263)
「創造者とは、独自の不可能事をつくりだし、それと同時に可能性もつくりだす人のことです。発見するためには、マッケンローのように壁に頭をぶつけていなければならない。壁がすりへるほど頭をぶつけなければならないのは、一連の不可能事がなければ逃走線、あるいは創造という名の出口を、そして真理を成立させる〈偽なるものの力能〉を手に入れることができないからです。」(p.269)
「大地を離脱しようというのではありません。そうではなくて、大地のあり方を左右する液体や気体の法則をつくりだすことによって、なおさら大地に密着していこうというのです。」(同)
「哲学史は、ある特定の哲学者が述べたことをもう一度述べるのではなく、哲学者には、かならず言外にほのめかしているものがあるが、それは何か、哲学者本人は述べていないけれども彼の語ったことのなかにあらわれているものは何なのか、ということを語るべきなのです。」(p.273)
「かくかくしかじかの点について見解も考えももたないというのはとても気持ちがいい。私たちはコミュニケーションの断絶に悩んでいるのではなく、逆に、たいして言うべきこともないのに意見を述べるよう強制する力がたくさんあるから悩んでいるのです。」(p.277)
「偉大な哲学者は、優れた文体をもった偉大な文章家でもあるのです。哲学における文体とは、ほかならぬの概念の運動のことです。もちろん、文がないところに概念は存在しません。しかし文には、概念に生気を与え、一個独立の生をもたらす以外に目的はないのです。文体とは、国語を変異させることであり、転調することであり、言語全体がひとつの〈外〉をめざして張りつめた状態を指します。」(p.283)
「ニーチェがいうように、芸術家や哲学者は文明の病を見極める医師なのです。何がどうなろうと、彼らが精神分析にあまり興味をもたないのは、けだし当然といえるでしょう。精神分析は秘密なるものを極度に単純化し、記号も症候もさっぱり理解できないので、一切合切をロレンスが「ちっぽけでしみったれた秘密」と呼んだものに帰着させるわけですからね。」(p.288)
「思考のイメージを問うことで得られるのは、モデルではないし、手引きですらなく、むしろ参照すべき対象、あるいは絶えず異分野との交配をおこなっていなければならないことへの自覚です。そして現時点で参照すべき異分野が何かといえば、それは脳をめぐる専門知識だということになるでしょう。」(p.302)
「私は点というものが好きになれないし、定点を定める(ポイントをおさえる)ことは愚劣だと考えています。ふたつの点のあいだに線があるのではなく、線が何本も交差したところに点があるわけですからね。線が一定することはありえないし、点のほうは、あくまでも〈変曲〉であるにすぎないのです。だから当然、重要なのは始まりでも、終わりでもなく、〈あいだ〉の部分だということになる。事物や思考は〈あいだ〉に芽生え、〈あいだ〉で育っていくわけですから、腰を据えて観察すべきなのはこの〈あいだ〉であり、そもそも襞は〈あいだ〉に生まれるものです。またそうであればこそ、多線状の集合は折り返しや、交差や、変曲を含みもつことができるのだし、そこには哲学と、哲学史を、そして歴史学一般を、科学を、さらには芸術をひとつにつなぐ疎通が成り立つ。渦を巻く風のような運動が空間を満たし、さまざまに折れ曲がるうちに、その運動は任意の一点に顔のぞかせることがあるのです。」(p.326)続きを読む投稿日:2017.12.17
ドゥルーズの対談や、知人の本に寄せた序文などをまとめたもの。
対談なので比較的読みやすいのではないかと思い、手に取った。
とはいえ、例によって、理解したとは言い難いので、読書ノートという形で心に残った…箇所を引用するに留めたい。/
【プルーストの場合は、記憶の探索をおこなっているのではなく、ありとあらゆる種類の記号に目を向け、環境、記号の発信様態、記号の素材、記号の体制に照らして記号の性質を解明することが作家の責務となっている。『失われた時を求めて』はひとつの一般記号学であり、さまざまな階層に分かれた社交界を診断する症候学でもあるのです。カフカの仕事は私たちの行く先々にひそむであろう悪魔的な力を、ひとつ残らずつきとめた診断です。ニーチェがいうように、芸術家や哲学者は文明の病を見極める医師なのです。】(「哲学について」)/
【創造とは、いわゆる伝達ではなく、耐久力をもち、抵抗することです。記号、〈事件〉、生、そして生気論は深いところでつながっている。そしてこれらに共通するのが非=有機的な生の力能であり、この力能は絵画の、文章の、あるいは音楽の線にも宿るのです。有機体が死んでも生は残る。作品は、それが作品であるかぎり、かならず生に袋小路からの出口を教え、敷石と敷石の隙間に一筋の道を通してくれるものです。私が書いたものはすべて生気論だった、と自分では思っていますが、そこから見えてくるのは記号と〈事件〉をめぐるひとつの理論でした。】(同上)/
【最近、革命の惨禍を告発するのが流行っています。(略)要するに革命はかならず悪しき未来を用意すると言いたいのです。しかし、そんな意見が出てくるのは、ふたつのこと、つまり歴史のなかにある革命の未来と、生身の人間がおこす革命の生成変化とを、いまだに混同しているからにすぎないのです。それに、歴史のなかの革命と、革命の生成変化では、同じ人間でもそのあり方が違います。人間の唯一の希望は革命の生成変化にある。恥辱を払いのけ、許しがたい所業に報いることができるのは、革命の生成変化だけなのです。】(「Ⅴ 政治」)/
【ナチスの強制収容所は私たちの心に「人間であるがゆえの恥辱」を植えつけたと述べるプリーモ・レーヴィの文章に、深い感銘を覚えたことがあります。レーヴィによると、(略)私たち全員にナチズムの責任があるのではなく、私たちがナチスによって汚された。強制収容所を生き延びた人たちですら、(略)やはり数々の妥協を余儀なくされた。ナチスになるような人間がいたという恥辱、それをさまたげる可能性も力ももちあわせていなかったという恥辱、そして妥協に屈したという恥辱。こうした恥辱が集まったものを、プリーモ・レーヴィは「グレーゾーン」と呼ぶわけです。】(同上)/
これと同じ恥辱が、現在のロシア社会にも蔓延しているのだろう。続きを読む投稿日:2023.10.19
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