世界はシステムで動く ― いま起きていることの本質をつかむ考え方
ドネラ・H・メドウズ(著)
,小田理一郎(解説)
,枝廣淳子(訳)
/英治出版
作品情報
「システム思考は、今日における必須の教養である。
システムとは何か、その本質を伝える名著。
長く語り継がれるべき、現代の〈古典〉である」
茂木健一郎(脳科学者)
日経新聞(3/8)、毎日新聞(3/20)、週刊ダイヤモンド(3/28号、3/21号)、
週刊東洋経済(2/21号)、事業構想(5月号)、HONZ(2/26)など続々メディアで紹介!
『世界がもし100人の村だったら』『成長の限界』
ドネラ・H・メドウズに学ぶ「氷山の全体」を見る技術。
株価の暴落、資源枯渇、価格競争のエスカレート……さまざまな出来事の裏側では何が起きているのか?
物事を大局的に見つめ、真の解決策を導き出す「システム思考」の極意を、いまなお世界中に影響を与えつづける稀代の思考家がわかりやすく解説。
ドネラ・H・メドウズ
「複雑なことをだれにでもわかりやすく伝えること」「物事を広い視野で見通し、その本質を読み解くこと」に長けた、研究者、ジャーナリスト。1971年発表の『成長の限界』では主執筆者として、限りある地球の人口と経済成長のダイナミクスを一般の人々に向けて解説し、37カ国翻訳のベストセラーに。また、『世界がもし100人の村だったら』の原案となったコラムを執筆。『成長の限界』『限界を超えて』『成長の限界 人類の選択』『地球のなおし方』(以上、ダイヤモンド社)、『地球の法則と選ぶべき未来』(ランダムハウス講談社)、『「成長の限界」からカブ・ヒル村へ』(生活書院)など著書多数。2001年逝去。
本書のポイント
・複雑なことを紐解く、物事を大局的にとらえる…ドネラ・メドウズが自身の思考法(=システム思考)を全公開。
・テレビや新聞で目にする「出来事」に一喜一憂するのではなく、大きな趨勢(システム)の一角として捉える。
・出来事の裏側にある「構造」や「挙動」、人間の「メンタルモデル(前提・思い込み)」を読み解く。
・本質的な変化をもたらす「真の解決策」を導き出す。
原著 Thinking in Systems: A Primer
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商品情報
- 著者
- ドネラ・H・メドウズ, 小田理一郎, 枝廣淳子
- 出版社
- 英治出版
- 書籍発売日
- 2015.01.24
- Reader Store発売日
- 2015.01.28
- ファイルサイズ
- 7.4MB
- ページ数
- 360ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (59件のレビュー)
-
【感想】
システム思考について知識ゼロの状態から読み始めたが、初学者には正直厳しかった。
前半の「システムとは何か」の部分に関しては、貯水タンク、人口増減、乱獲など、実例を示しながら説明しているため直…感的に理解しやすいが、後半の「システムを活用するために」の部分については、理論がかなり抽象的になっていることもあり、スッと頭に入れるのは難儀すると思う。
「システム思考を身に着ける」ことよりも、「システムとは何か?」という説明に注力した専門書のようである。これを読んで「実践的な場で活用しよう」とはできないため、読み始める際には注意が必要だ。
システム思考を習得するためには、よりハウツーに寄った他書を参考にするとよいかもしれない。
【本書のまとめ】
1 システムとは
本書における「システム」の定義.:
何かを達成するように一貫性を持って組織されている、相互に繋がった一連の構成要素。サッカーチーム、体の器官、太陽系、といったように、生物無生物関係なく自己組織化された集団を指す。
「システム」と言われたときに真っ先に目につくのは、システムの「構成要素」である。例えば木を構成している要素には、根、幹、枝、葉…と多種多様なものが含まれる。そのため、問題を解決する際、あるシステムの要素を列挙し始めたら、作業に終わりがなくなってしまう。
システム思考とは、こうした「要素の分解」をやめて「つながり」という関係性の面に目を向ける思考方法のことである。
システムの中で最も目につかない部分である「機能」または「目的」は、多くの場合、そのシステムの挙動を決する上で最も重要な要素だ。機能や目的を変えれば、システムの挙動がガラッと変わるほど根幹にかかわっている。
2 ストック、インフロー、アウトフロー
アウトフローとインフローの合計が等しくなるとき=「動的平衡」状態になる。
ストックへのインフローやアウトフローが急激に変化したとしても、ストックが変化するには長い時間がかかる。このタイムラグのおかげで、インフローとアウトフローを切り離すことができる。それぞれが独立して、一時的に両者間のバランスを崩すことが可能となる。
バランス型フィードバック・ループ:
ストックが一定水準以下/以上になると、フローがストックの水準を安定するためにバランスを取るシステム。例えば、増えすぎた草食動物の数を抑制するために肉食動物が増加することが挙げられる。フローは再びストックに入れ込まれ、また水準を超えたり切ったりしたときにフローが働く、というループを繰り返す。
自己強化型フィードバック・ループ:
人口の増加や利子の福利計算のように、時間の経過とともにフローが幾何級数的に変動するシステム。
フィードバック・ループが伝える情報が影響を及ぼせるのは、「将来の挙動」だけである。現在の挙動に影響を与えることができないのは、例えば価格の変化と需要の増減にラグがあるように、「反応にはつねに時間的な遅れがある」からだ。
(ex.)在庫を管理する企業の遅れの原因には主に3つの時間的遅れがある。
1認知の遅れ 2反応の遅れ 3納品の遅れ
時間的遅れはシステムの至るところにあり、システムの挙動を左右する強力な原因だ。時間的遅れに対処しようと反応の長さや頻度を変えると、システムの挙動が大きく変わり、より不安定になる場合がある。(もちろん安定する場合もある)
自己強化型フィードバック・ループを有するシステムの中には、必ずバランス型・フィードバックループが存在している。永久に成長し続けるシステムは存在しないからだ。
(ex.)幾何級数的に増える人口を、食料生産の限界が制限する。
このシステムの挙動を「再生可能資源を利用するシステム」で見てみよう。鉱物資源の開発と違って、再生可能資源を利用するシステムは、再生産された資源がフローとしてストックに流れ込む。
そして多くの場合、「行き過ぎてから、持続可能な平衡状態へと調整される」ことになる。
(ex.)魚の漁獲
漁獲量が増える→資源が希少になる→儲けが少なくなり、開発コストがかさむ→再生産と開発スピードが平衡状態に落ち着く
…というプロセスが漁業業界に対して起こる。これは「漁獲量が減るにつれ、利益が減る」というバランス型フィードバックが制約を生んでいるからだ。
しかし、
①単位資本あたりの漁獲量を少し取りすぎる
②業界が漁船の効率を改善する技術を取り入れる
という条件を与えると、魚の数が減っていっても、利益が生まれ市場が経済的に成り立つ。
そのため、乱獲が進み続け、魚も漁業業界もほぼ完全に消滅する。
バランス型フィードバック・ループが少し弱くなるだけで、結果は大きく異なってくるのだ。
3 よく機能しているシステムにはなにがあるか?
よく機能しているシステムには次の要素がある。
①レジリエンス(弾性力、自己修復能力)
②自己組織化(自らを組織化し、学び、複雑化する能力)
③ヒエラルキー(人→家族→地域→県→国→世界のような、システムとサブシステムの配置)
サブシステムの目的が支配的で、システム全体の目的を犠牲にしているとき(例:個人の利益を追求するために汚染物質を垂れ流し、社会全体の善を損なっている)、その結果としての行動は「部分最適化」と呼ばれる。高度に機能的なシステムであるためには、ヒエラルキーは、サブシステムとシステム全体の快適さ、自由、責任のバランスを取らないといけない。
4 システムの落とし穴とチャンス
限定合理性:合理的であろうと意図するけれども、認識能力の限界によって、限られた合理性しか経済主体が持ち得ないこと。
限定合理性の有名な例は、共有地の悲劇である。
共有の資源があるとき、どの利用者も利益を得るが、過剰に利用した場合であっても、コストは全員と分かち合うことになる(自分単独でコストを被ることはない)。結果、誰もが「他人に使われる前に自分が使おう」という考えになり、資源が過剰に利用され、あとには何も残らなくなる。
これへの解決策は、利用者への教育や勧告、共有地を私有化する、利用者全員の資源へのアクセスを規制する、などが挙げられる。
5 レバレッジ・ポイント――システムの中で介入すべき場所
問題が起こった時、表面的な部分の修正に注力していては、根本的な解決には至らない。状況を取り巻くシステムに手を入れることが必要だ。
そうしたシステムの中で介入すべき場所――「レバレッジ・ポイント」は、以下の通りだ。(数字が低いほど有効が増す)
12 数字
11 バッファー
10 ストックとフローの構造
9 時間的遅れ
8 バランス型・フィードバック・ループ
7 自己強化型フィードバック・ループ
6 情報の流れ
5 ルール
4 自己組織化
3 目標
2 パラダイム
1 パラダイムを超越する続きを読む投稿日:2021.03.01
物事をインプットとアウトプットのフローと、その差が生み出すストックの変化で考えようとするのが、システム思考。
システムには、自分を安定化させる作用や、暴走させる作用をもつものがある。
つながりと、…時間軸の変化を追うことが大事続きを読む投稿日:2023.12.29
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