ユダヤ人の歴史
レイモンド・P・シェインドリン(著)
,入江規夫(訳)
/河出文庫
作品情報
世界をまたにかけて移動し、世界中の人々に影響を与え続けているユダヤ人の起源から現代までの三千年以上にわたる歴史を、簡潔に理解できる入門書。各時代における有力なユダヤ人社会を体系的に見通し、その変容を追う。オックスフォード大学出版局の叢書にもおさめられている基本図書。多数の図版と年譜、コラムを収録。
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商品情報
- シリーズ
- ユダヤ人の歴史
- 著者
- レイモンド・P・シェインドリン, 入江規夫
- 出版社
- 河出書房新社
- 掲載誌・レーベル
- 河出文庫
- 書籍発売日
- 2012.08.07
- Reader Store発売日
- 2014.09.05
- ファイルサイズ
- 19.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.1 (12件のレビュー)
-
ユダヤ人の歴史を知りたい
そのままの理由から、探した一冊
著者はアメリカ・ユダヤ教神学院教授であり、ラビの資格をお持ちだ
なるべくわかりやすく率直で普遍的なユダヤ人の歴史書を目指したとのこと
しか…しこれはなかなか辛い読書であった
と言っても皆様が想像されるであろう理由はもちろんではあるものの、ひたすら似たような史実が延々と続くため、何度もデジャブの錯覚に陥る
しかしながらそのくらい、いつの時代も、どの地域においても迫害され差別され…と延々繰り返さていることをひしひしと実感した
またユダヤ人の歴史は古さと長さで知られた民族である
イランから地中海沿いに至る西アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ…とこれら多くの地域の歴史および文化の移動と変遷がユダヤ人の歴史の一部である
そう、コンパクトに知るのは難しいのである
起源は古代イスラエルから始まる
ユダヤ人の歴史の幕を開けたのは古代イスラエル人
紀元前100年頃にカナンの地に王国を築く
しかしながら古代イスラエル人がどこから来たのかははっきりしないようだ
ここからは気になったポイントと流れに変化のあった歴史内容を絞ることに
■ユダヤ人がなぜ時空を超えて共通の国家、共通の言語、民族的組織がない状況において、アイデンティティを保つことができたか…
「トーラー」という聖書の最初の5冊からなる律法の書物の研究と遵守によるものでは…との解釈がある
これを元に公式の歴史と法律、慣習、宗教的行事を編纂し、宗教的行為に絡めて民族的アイデンティティをつくり出した
それがユダヤ人のアイデンティティとユダヤ人の宗教の大きな特徴となった
(これは興味深い内容だ 当初は共通の言語ももたず、ちりちりバラバラに他国へ渡ったとしても、相手国に吸収されないアイデンティティ その理由の一つが書かれている気がする)
■ヨーロッパにおける土地所有者と農民から成る中世封建社会において、ユダヤ人はその枠組みから外れている
これに宗教異質性が加わり、嫌悪と憎しみの対象となった
(商人としての技量を買われて招かれるケースも多いが、結局土地を所有しない彼らは、異質とみなされることになる 随分勝手な話だ)
■イスラム教徒からエルサレムを奪回する目的だった十字軍だが、反キリスト教徒に向けられた宗教的憎しみがユダヤ人に対しても向けられてしまう
そのため反ユダヤ的感情が定着し、ユダヤ人の虐殺に
ここからユダヤ人が迫害が始まった
(この時期のペストでさえ、ユダヤ人が井戸を汚染したせいだとされたらしい)
■19世紀にはシオニズム運動が活発に
シオニズム…イスラエルの地に故郷を再建しようという思想や運動のこと
この時代、民族国家の復活への運動を果たすセルビア人、ブルガリア人、ルーマニア人に続けとばかり、長年抱えてきた問題を根本的に解決するためにはユダヤ民族の独立国家を建設するより方法は無いと考え始めた
■ヘブライ語を話し言葉として復活させる
書き言葉としては存在し続けていたが、話し言葉としては紀元一世紀には使われなくなっていた
この復活は近代においてユダヤ人が成し遂げた最も大きな業績
未だかつて歴史上、一旦話し言葉として使われなくなった言語が長い時代を経てまた使われるようになった例は他にない
■第一次世界大戦中、イギリスは中東地域を支配していたオスマン帝国を切り崩すため三枚舌外交を行う
・1915年10月イギリスとアラブ人の間で結ばれた「フサイン=マクマホン協定」
イギリスはアラブ人に対して、第一次世界大戦が終わったあとのアラブ人のオスマン帝国からの独立を支持すると約束(代わりにオスマン帝国への反乱を促す→「アラブの反乱」)
・1916年5月イギリス・フランス・ロシアの間で結ばれた「サイクス・ピコ協定」
イギリス・フランス・ロシアの三国は、第一次世界大戦が終わったあとでオスマン帝国の領土を分割し、領土をどう割り振るかを取り決めていた
また三国の密約のため、その地域に住むアラブ人を中心とした人々には、その協定も知らなかった
・1917年11月イギリスは、
パレスチナにおけるユダヤ人居住区の建設に賛同
する書簡をイギリスがロスチャイルド(ユダヤ系富豪イギリス人)へ送った
ユダヤ人の主張を尊重する意思を表明することで、彼らから財政的支援(戦争資金)を引き出したい狙い
イギリスからの支持も得たユダヤ人は、世界各地から次々とパレスチナの地へ移住してくるようになった
またヨーロッパを中心にユダヤ人の排斥運動が高まってきたことも、その流れを加速
しかしユダヤ人が急増した影響で、もともとパレスチナの地に住んでいたアラブ人との衝突が生じ
これがアラブ諸国の紛争につながる
ユダヤ人の存在に対するアラブ人の反感は強まっていった
■1948年イスラエルは独立宣言をする
国連がパレスチナをユダヤ人国家とアラブ人国家に建設する案を可決
すると直ちに周辺国家からアラブ人ゲリラがユダヤ人居住区を襲撃
イスラエルは独立宣言をするものの今度はヨルダン、イラク、シリア、レバノン、エジプトの正規軍が一斉にイスラエルへ大規模攻撃を仕掛ける
■1949年総選挙が行われ、国会が召集
アラブ人諸国のゲリラ攻撃は続く上、イスラエルとビジネスをしている企業やイスラエルの港に立ち寄る船会社をボイコットしたり、アラブ諸国の空域の使用を禁止され、イスラエルへ訪問したことのある旅行者はアラブ諸国への入国を拒否された
各国に散らばっていたユダヤ人難民の大量受け入れも経済的、社会的にもたくさんの困難をもたらした
(ここまできても、多くの問題を抱え前途多難ながら国としてようやく機能し始める 何とも涙ぐましい)
■1959年にな西ドイツと国交正常化を図る
しかしヨムキプールなどその後も戦争や奇襲攻撃を受ける
■1977年エジプトと国交正常化
エジプト経済の行き詰まり、米国カーター大統領の斡旋などのおかげ
■長年に渡るパレスチナ問題
デモ、ストライキ、暴動が続く
幼い子供たちがイスラエル兵(こちらも少年、青年に過ぎない)に向かって石を投げる姿も…
■アメリカにおけるユダヤ人
ヨーロッパ大陸において、何百万人もが殺され、何百万人もが逃れたため、ユダヤ人の人口は減り、代わりにラテンアメリカやアメリカ合衆国、カナダへ流れた
アメリカは最も開かれた社会であるゆえに、ユダヤ人としてのアイデンティティをいかに保持していくかという問題に直面することに
またアメリカに住むユダヤ人はイスラエル建国後もアメリカに留まるケースがほとんど
(それほどアメリカに住むユダヤ人はアメリカナイズされていた)
拷問、生き埋め、火あぶりの刑、焼き討ち、大量虐殺、強制改宗、集団自殺、差別、強制収容、餓死、射殺、窒息死…
これらの単語が時代ごとに、各地域ごとに、何度も何度も出てくる
読み終わるのにかなりの時間を要した
しかしまだボンヤリとしか理解できていない
歴史も長く、広く、壮大でなかなかまとめることもできず、レビューを書くのも苦労した
なぜユダヤ人はここまで迫害されるのか
なぜユダヤ人は消滅しなかったのか
なぜユダヤ人は欧米のような
自由、民主主義、市場経済等の価値観を持つ国家となったのか
なぜユダヤ人はハイテク産業が強いのか
まだよくわからない
もう少し世界史的知識を増やして改めて読んだら理解が深まるかもしれない
他の著からのアプローチも必要なのを実感
いつかイスラエルに行ってみたいのだが、もっとイスラエルとユダヤ人を知ってからでないと、
なんとなく行ってはいけないような気がしているのだ…
なんとなく…続きを読む投稿日:2020.12.20
シェイクスピアのヴェニスの商人を読んだことがきっかけで、なぜユダヤ人がその歴史の中で迫害され続けてきたのか興味を持ち本書を手に取った。
ユダヤ人は3000年の歴史の中、世界中で迫害され続けてきた。時に…多少の信仰の自由を謳歌できたこともあったが、基本的に迫害されてきたことは一貫している。
そのように迫害されてきた民族の一部が、イスラエル建国を望むようになったのは理解できるし、3000年の時を経てそれが実現されたのは驚異的なことだと思う。
しかしイスラエル建国後に、今度はイスラエル人(ユダヤ人)がパレスチナ人を迫害するようになったことはある種の皮肉である。迫害されてきたマイノリティも、マジョリティになった途端にマイノリティを迫害する側になるというのは、歴史が物語る悲しい事実である。続きを読む投稿日:2020.03.29
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