この作品のレビュー
平均 3.6 (128件のレビュー)
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途中からもう無性に腹が立って腹が立って、読み終わった日の夜は、怒りのあまりよく眠れなかった。何にかというと、橋下大阪市長の厚顔に対してである。
本書は大阪のアンタッチャブル、色街飛田を、果敢にも正面…から取材した希有な一冊。「ちょんの間」と呼ばれるそのものズバリの売買春行為の場となる店は、公的には「料亭」ということで認可を得ていて、経営者たちの団体は「飛田新地料理組合」と名乗っている。著者は単身その組合の事務所に取材に赴くのだが、対応した組合長らは(著者一人に対して六人がずらっと並んだという)不愉快そうに「書いてもらわんでもいい」と取材を拒否する。その理由は「私らはイカンことしてるんやから。書かれては困るんや」。
著者も「驚いた」と書いているが、組合自ら飛田の「料亭」で「イカンこと=売買春」が行われていることを認めているのだ。橋下氏は、この組合の顧問弁護士をしていた。「従軍慰安婦問題」に関して、外国人記者クラブでこのことを指摘されたとき、彼は「料亭なんだから何の問題もない」と言い放った。そのとき私は、まあグレーゾーンみたいな店が結構あるんだろうな、くらいにしか思わなかったのだ。まったく無知はどうしようもない。
本書を読んで、その認識は全く違っていたことがわかって驚愕した。私は就職してから大阪に住むようになったので、大阪をよく知っているとは言えない。釜ヶ崎(愛隣地区)を中心とするあたりは「物騒なところ」で、天王寺界隈には足を踏み入れない方がいいところがある、という程度に思ってきた(最近新世界が観光客で大賑わい、なんて話を聞くと、ちょっと驚く)。飛田については、昔の遊郭地帯として名前を知っているだけ。それが、こんな現役バリバリの「色街」だったとは。
著者もふとしたきっかけで飛田を訪れて、あまりに公然と売春が行われている様子に衝撃を受け、調べていく中で、飛田が「語られない、語ってはいけない街」であることに疑問を感じ、できる限りのことを知ろうとする。
その「ライター魂」は本当に敬服に値する。十二年もの長期にわたって、何度も怖い目に遭いながら、粘り強く取材を続けた著者は、私よりちょっと年上の女性なのだ。「料亭」の経営者、店の女の子は言うに及ばず(どちらの取材も苦労の末)、飛田を縄張りとするヤクザにまで、常に正面からぶつかっている。すごい、としか言いようがない。
あとがきでも書かれているが、話を聞いた人たちはみんな「平気で嘘をつく」。井上さんはその嘘の中の「心の真実」に寄り添い、中にはとても親しくなった人も出てくる。そうした心の交流もある中で、彼女が決してなくさないのは、女性を売春に追いやっていき、搾取するものへの怒りである。
売春を「好きでやっている人もいる」とか「職業として選ぶ場合もある」とかいう言い方を最近よく聞くが、それが何かの言い訳になるのか? そもそも、いったいどれくらいの人が「好きでやってる」のだろう。この本でも書かれているように、多くの場合、売春する事情は昔と同じ、貧困である。ただ今は、単純な貧困だけではなく、ホストやブランドもののための借金で縛る「作られた貧困」が目につくようだ。
どちらにせよ、無力・無知であることにつけこんで、人を食い物にしている構図に何の変わりもない。無力なものを利用して自分が利益を得るのは、誰が何と言おうと、この上なく卑しいことだ。「料亭」経営者らもそれがわかっているから、「おとなしく」商売し、儲けで郊外に家を建て、子どもは名門私学に通わせて、「飛田」を隠してきたんじゃないか。橋下氏は「弁護士時代は年収三億円だった」と自慢していたが、その一部は飛田の女の子たちの稼ぎを巻き上げたものだ。恥を知れ!と言いたい。
「さいごの色街」というタイトルから、もっと軟派な「情緒たっぷり」という紹介のされ方かと誤解していた。早く読むべきだったと深く反省。続きを読む投稿日:2013.06.24
正直、著者の生の感情は鼻につく。
けれど、調べられた歴史や語られる取材内容の面白さに、ぐいぐいと読み進めることになった。投稿日:2022.07.19
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