ひきこもりの〈ゴール〉 「就労」でもなく「対人関係」でもなく
石川良子(著)
/青弓社ライブラリー
作品情報
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「仲間をつくれ」「働け」。的はずれを含めた多くの批判にさらされ、「回復」へと駆り立てられるひきこもりの“当事者”たち。対人関係の獲得や就労の達成という「社会参加」とそうすることの意味のはざまで、「なぜ働くのか/なぜ生きるのか」と彼/彼女らが抱いている不安や焦燥を、聞き取り調査をとおして描き出す。そして、「自己防衛戦略」や「存在論的不安」などの視点から、“当事者”たちにとって「ひきこもる」とはどのような経験なのかを浮き彫りにする。必要なのは“当事者”に共感することではなく、むやみに「回復」をめざさせるのでもなく、彼/彼女たちを理解することだと主張・提言する社会学の成果。
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商品情報
- 著者
- 石川良子
- 出版社
- 青弓社
- 掲載誌・レーベル
- 青弓社ライブラリー
- 書籍発売日
- 2007.09.22
- Reader Store発売日
- 2015.05.16
- ファイルサイズ
- 48.7MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
-
ちゃんと読みました
ひきこもりの人をかわいそうとかは思わないし、
すべてを何かのせいにしているのはよくないと思いました。
逃げれる場所がある、日本社会が豊かな証拠かなと思いました。
投稿日:2009.02.20
本書の目的は、ひきこもり当事者の経験を描き出し、理解すること。ひきこもりとはどういう経験なのか、ひきこもりから回復するとは何を指すのか、という2つの問いを軸に、当事者とのインタビューや斎藤環など専門家…たちの言説を素材として、ともすると第三者には理解しづらいひきこもりの「動けなさ」のリアリティをどうすれば理解できるか、考えていく。
人々のふるまいや語りを読み解くことで浮かび上がったパースペクティブを提示する本なので、実態解明ではない点は注意。ゴフマンのスティグマ理論、アーサー・フランクの物語論が面白かった。
■キーフレーズ
経験を理解する 理解≠共感 予防は不可能 長期化が問題 スティグマとパッシング 「いま何してるの?」 自己を語るための語彙 語彙の喪失 「病い」の物語は過去と未来の2つの語りを含む 探求の物語 「とりあえず働いてみる」? 回転寿司の喩え 現実の直視 「動けなさ」の正体 意味よりも意思 存在論的な安心/不安 「生き(続け)ている」こと自体が「生きるか/生きないか」への答え ルーティーンの破綻 「回復」は存在しない、なくてもいい 後期近代と自己アイデンティティ 他者の悪魔化 経験の隔離 「私たち」のまなざしが「かれら」をひきこもらせる 誰も排除せずにすむ、生きやすい社会の構想
■目次
はじめに
第1章 問題意識──フィールドでの経験から
1 はじめに
2 “対人関係の獲得”から“就労の達成”へ
3 〈社会参加〉路線の限界
4 当事者への否定的感情に向き合う
5 本書の課題──「ひきこもり」の当事者の経験を理解する
第2章 「ひきこもり」の社会的文脈
1 一九八〇年代──「無気力化した若者」
2 一九九〇年代──不登校からの分化
3 二〇〇〇年代前半──「ひきこもり」の社会問題化
4 二〇〇四年以降──「ニート」の登場
5 「ひきこもり」からの〈回復〉イメージの変転
第3章 自己防衛戦略としての「ひきこもり」
1 「ひきこもり」というスティグマ
2 生活誌的な匿名性の程度
3 精神的苦痛を助長されうるやりとり
4 自己防衛戦略としての「ひきこもり」
第4章 自己を語るための語彙の喪失としての「ひきこもり」
1 “対人関係の獲得”以後のきつさ
2 コミュニティに参与することの意味
3 自己を語るための語彙の喪失としての「ひきこもり」
4 専門家言説の功罪
第5章 人生における危機/転機としての「ひきこもり」
1 ひきこもるという経験の二面性
2 危機
3 転機
4 振り返って見えてきた危機
5 自己変容の様相
6 「ひきこもり」を“状態”ではなく“過程”と捉える
第6章 問うという営みとしての「ひきこもり」
1 はじめに
2 “対人関係の獲得”その後
3 就労をめぐるジレンマ
4 自己・労働・生を問う
5 問うという営みの必然性
第7章 生きていくことを覚悟する
1 「ここで決めよう、と思ったのね。生きていくか、やめるかをね」
2 「突然、生きたいって、体の声を聞いて」
3 生きていくことを覚悟する
第8章 「ひきこもり」再考
1 存在論的不安としての「ひきこもり」
2 「ひきこもり」からの〈回復〉とは何か
3 〈実存的問題〉としての「ひきこもり」
あとがき続きを読む投稿日:2023.10.18
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