美酒の設計
藤田千恵子(著)
/マガジンハウス
作品情報
「美酒の設計」、それは高橋藤一杜氏が醸す純米酒。
酒造りの常識である「櫂入れ」をせず、微生物の自然の営みを辛抱強く見守り続ける。ものづくりの原点に挑む、渾身のノンフィクション!酒造りは、自然に出来てくるのを待っているのが基本。自分で造ろうとは考えていない。だから我々の蔵の酒造りは、菌に関与しない。人間がしゃしゃり出て行くような世界ではありません。ですから、そこに櫂を入れるようなことはいたしません」(本文より)
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商品情報
- シリーズ
- 美酒の設計
- 著者
- 藤田千恵子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- マガジンハウス
- 書籍発売日
- 2009.11.26
- Reader Store発売日
- 2014.12.19
- ファイルサイズ
- 2.1MB
- ページ数
- 171ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
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美味しいお酒が飲める良い時代だ
全国新酒鑑評会とは元々大蔵省所管の醸造試験所、現在は独立行政法人の酒類総合研究所が1911年に始め酒造業者の技術向上を目的にしている。ここで優秀とされた酵母を醸造協会が培養し酒蔵に配布しており現在全国…の酒蔵で使われているのがこれだ。家付き酵母や野生酵母と違い発酵が途中で止まったり、腐造という雑菌のためにもろみが腐敗したりということが少なくなり酒質の安定に貢献して来た。戦後すぐには真澄の協会酵母7号が出品酒の8割以上に使われた時代もあったという。研究所のサイトを見ると2014年は845点が出品され入賞442点で金賞は233点だ。この本の舞台になった秋田の斎彌酒造店の雪の茅舎も金賞を受賞している。その割には受賞酒をそんなに見かけないのは仕込みが500KG〜1tと小仕込みのためで18Lの斗瓶で5〜6本分しかもそのうちの真ん中の2〜3本をブレンドしたものから出品されるので厳密には一升瓶で20〜30本しか取れない。実際には同じ仕込みのものが市販されるとしても限定品であることには違いない。
雪の茅舎の高橋杜氏は91年に発の金賞を受賞すると92年は連続受賞、93、94は入賞で95年は開催なし、96、97とまた金賞で99年から7年連続金賞で秋田県の純米部門でも94年から6年連続主席知事賞を取っている。しかし実はこのころ高橋はもがいており自身の評価と鑑評会の結果が出なかったり試行錯誤を続けていた。このころ高橋は蔵元にも言わずに櫂入れをしないという決断をする。造り酒屋の櫂入れは朝ドラ「マッサン」の実家の風景にも出た様に酒屋のイメージそのものである。ではなぜそれをやめたのか。
高橋杜氏の酒造りの話は一見昔気質の職人に思える。「米をわからせるためには、米を作ることが一番の早道。だからうちの蔵では蔵人みんなで米を作っています。」「蔵入りして造りだしたら、一斉に同時進行」「(今年のできばえとか)基本的な米の知識というのは、事前に全部頭に入っていなければ間に合いません」
酒造りの極意としてよく「一麹、二酛(もと、酒母)、三造り」と言われるが高橋の中では最も大事なのが米洗いだ。糠をきちんと落とさなければ精米をする価値がない。斎彌酒造では蔵人12人中7人で手洗いを行う。大吟醸でも普通酒でも同じくだ。製麹機はあるが使えるのは手作りの麹の製法を会得した蔵人だけだ「機械は黙っていても作ってくれるから、人間の五感が発達しないうちは触らせない(笑)」のだそうだ。
そうかと思うと櫂入れをやめた様に実際に試してみて良かったことはどんどん取り入れる。大きめのガラス瓶の実験では櫂入れをしなくてもタンクの中では対流が充分起きていた。発酵では熱も出るし、アルコールとともに炭酸ガスも出る。試しに櫂入れをするしないで利き酒をすると櫂入れしないほうが圧倒的に評判が良かった。
蔵はとにかく清潔に保ちいつでもどこでも拭き掃除ができる様に準備がされてある。酒母を雑菌から守ることが大事なのだがこの鍵になるのが乳酸だ。大気中に飛んでいる乳酸を取り入れるのが生酛で山卸しという米を擦る作業をしたりする。同じく大気中の乳酸を取り入れるが山卸しをしないのが山廃酛、そして醸造乳酸をふりかけるのが速醸酛という普通の作り方だ。山廃に挑戦してもうまく乳酸発酵しない。これは雑菌を殺すためにホルマリン殺菌をすると乳酸菌も殺してしまう。昔は木の道具を熱湯消毒して使っていたがこの道具には乳酸菌が残っていて山卸しが乳酸菌を埋め込む作業になっていたのだ。試しにホルマリン殺菌をやめると見事に乳酸が湧いてきた。ついには蔵内のホルマリン殺菌をすべてやめにした。水とお湯と箒と雑巾で徹底して掃除をすれば良かったのだ。
高橋はアルコール添加を嫌うだけでなく加水も濾過もしない。ちょうど16度になる様に作れば酵母がアルコールで死ぬこともなくいやな匂いが残らない。そして加水はどうしても香りを飛ばしてしまう。濾過も雑味をとるだけでなく香りもとってしまう。高橋は自分のやり方が正しいと言ってるわけではなく、自分はこれを選ぶと言ってるわけだ。水や米が変われば酒造りは変わる。高橋の目指す方向ができるだけ人間が手を出さない方向だったと言うことだ。
合理主義者の様にも見えるがデーター至上主義ではなく酒造りは感覚が大事だという。この辺りが面白いところだろう。高橋が杜氏になった頃は日本酒は糖やアルコールの添加が当たり前で純米酒など見向きも知れない時代だった。今でこそ糖の添加は減ったがコストに直結するアルコール添加は減っておらずいわゆる普通酒(アルコール添加したもの)が主流になっている。それでも昔に比べれば美味しい日本酒が手に入りやすい良い時代になったと思う。ちょっとくらい高くても毎日飲むわけじゃないしいいでしょう。続きを読む投稿日:2014.12.31
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秋田へ着いたよ♪
ってな事で、藤田千恵子の『美酒の設計 極上の純米酒を醸す杜氏・高橋藤一の仕事』
丁度、読み切る時に秋田入り♪
この本はホントに読み易くて日本酒についての魅力や日本酒造りの流れも…書いてあるんで、日本酒好きには勿論、日本酒ビギナーの方にもオススメの日本酒本
高橋藤一杜氏はもう引退してるかな?
杜氏は日本酒を造るだけじゃなく、米造りから、後継者創りも杜氏の使命じゃと。
ホント深い話で益々日本酒が好きになる!
常々、個人的に雪の茅舎に外れ無しって言っていたけど、やっぱりそうじゃと納得する日本酒創りと熱い想いじゃね
これは日本酒好きには読んで貰いたい一冊じゃね
今日のコンビニで買ったのはアル添じゃけど、これまた美味いよね♪
因みに、岩手県のタクシードライバーでお馴染みの喜久盛酒造の杜氏さんも高橋藤一と同姓同名なんですよw
2018年70冊目続きを読む投稿日:2024.01.22
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