マーケティングを学ぶ
石井淳蔵(著)
/ちくま新書
作品情報
供給が過剰となり、従来的な手法だけでは容易にモノが売れない時代を迎えている。企業にとっては生活者や顧客との関係をいかにデザインするかが喫緊の課題となっている。市場に向けて、どのような戦略を練るかというマーケティング・マネジメントの見直しが必要だ。これからのマーケティング像を描いた、実践的入門書。
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商品情報
- シリーズ
- マーケティングを学ぶ
- 著者
- 石井淳蔵
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2010.01.05
- Reader Store発売日
- 2014.07.20
- ファイルサイズ
- 10MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (37件のレビュー)
-
わたしのようなマーケティング初学者からすると、マーケティングとはいかにモノを売らせるための技術である、なんていうひどく雑でひねくれた見方をしてしまうが、「本書では、企業の生活者・顧客との接点を、どうデ…ザインするかに焦点を絞り検討してきた」(P301)とあるように、本書の目的にあるのは「生活者」といかに「接点」をみつけ、それを構築(「デザイン」)するかというのがマーケティングであると示され、曚を啓かされた。
こんな始まり方をすると堅苦しいように感じるかもしれないが、誰もが知る企業の、成功例も失敗例もふくめた豊富な事例(ソニー、パナソニック、サントリー、伊藤園、P&G、花王、JTB、アート引越センターetc.)が紹介され、新書にしては厚めの300ページ超だが、読んでいて飽きなかった。また細かく章が分かれているので、拾い読みもできると思うし、デスクの脇にでも置いて都度振り返っておきたくなる本だと感じた。
本書の結論は、現代の低成長・低収益の時代には、たんなる技術のイノベーションではなく、商品・ブランドと生活者との新しい接点を見つけ、意味や価値を創造する「コマーシャル・イノベーション」が求められるのだ、ということだ(「終章 コマーシャルイノベーションに向かって」)。いいかえれば現代は、ハードパワー〈機能/効能/性能〉の時代から、ソフトパワー〈経験/意味/価値〉の時代へのマーケティング転換期なのだ。
たとえば、P&Gは二十世紀末に、「世界の【消費者のニーズに最も適した】、秀でた品質と価値をもつ製品を提供する」、という宣言を、「世界の【消費者の生活を向上させる】、優れた品質と価値をもつ宣言へと変えているという(P173、【】は本書内傍点)。その意味するところは、既存のニーズに向けて商品を提供するのではなく、生活を向上するという切り口で商品価値を創造するという転換なのだ。
技術から生活価値への転換を果たした事例として、ウォークマンやiPodなどのほか、キットカットを挙げている。キットカットはかつて安いチョコ菓子というポジションだったが、ひとつのキャンペーンを打ったことで、ほかのチョコ菓子とは違った生活者との接点を得てポジショニングを達成した。それは「キットカット→きっと勝つ」の語呂合わせから出た受験のゲン担ぎをしている、という受験生のキットカットとの関係から発想を得ている。商品の中身は変わっていないが、生活者との関係が変わることで価値創造した好事例だ。
個人的に気になったところは、ブランドやリサーチということを考えるなかで、企業/組織の強さをいかに高めるか、という視点を強調していた点だ。自分の過去の仕事を考えると、組織というより個人を重きにおいた仕事内容だったので、たいへん勉強になった。
ニーズが細分化されている現代において、大企業ほど動きが遅くキャッチアップできない、と「大企業病」などと非難がちだが、これを読んでると大企業だからこそ、細やかなニーズをキャッチアップできるマネジメントができるのではないかと感じた(第Ⅳ部など)。そう思わせたほど事例が大企業が多いので、リソースのない中小企業が市場という複雑性にどう対処するか、という事例も多くほしい気もした。
とはいえ、そのなかでも第1章で例示された、地方の地場産業による障がい者スプーンの例は、生活者に向き合うことでニーズを発見するという好事例で印象に残った。
また「指標化」(P255)という概念は、わたしとしては学ぶものが多かった。「指標化」とはマーケティングの接点を考える際に、「あらかじめみずからの可能性・選択肢を限定」し、「自分たちの力に見合った形で処理可能な状態にする(架け橋を架ける)という作業」を指す(第Ⅲ部結論~第Ⅳ部あたり)。
なぜ「あらかじめみずからの可能性・選択肢を限定」する必要があるのか。それは、市場環境は無限に複雑なので、それをすべて処理できず成り行きでこなしてしまっては、マーケティングを長期に渡りマネジメントできず、成長もしない。「組織が存続するためには、自分たちの処理可能な状態に、できれば意識的に環境を作り替えておくことである」(P244)。
マーケティングとは話はずれるが、個人的に仕事の優先順位がつかないことが多く、苦労することが多かったので、「指標化」の概念はマーケティング以外にも役立つのではないかと思った。本書のなかで、そんなカオス状態のとき組織の指示として重要になるのは、「いろいろ起こっていて、気になることも多いだろうが、とりあえず『店頭品質』の諸要素に注目するだけでよし。他のいろいろある出来事は、無視してもかまわない」(P244)と書かれていて、なにか思わずほっとさせられるものがあった。
読み応えがありつつかつ読みやすいので、マーケティングの入門書をさがしているひとは、ぜひ本書を手にとってほしい。わたしの場合、本書を読む前に著者のべつの本『マーケティングの神話』(岩波現代文庫)を読み、たいへん面白かったので、他にないかと探したところ本書に出会った。『神話』のほうは、文化人類学や哲学、記号論など人文系の知識を用いて、マーケティングの本質に迫っている名著だと感じた。興味がある人はこちらも一読を。続きを読む投稿日:2017.01.22
タイトルの通り、“マーケティングを学ぶ”ための本だが、教科書的ではなく読み物のようなスタイルで書かれているのでスラスラ読むことができる。
前半から中盤にかけてはSTP、後半は顧客へのアプローチと顧客…管理、マーケティング組織のマネジメントが中心となっている。
10年以上前に出版されたものであるためケースは古いが、今でも十分通用するものである。続きを読む投稿日:2021.12.30
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