コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来
広井良典(著)
/ちくま新書
この作品のレビュー
平均 3.8 (55件のレビュー)
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コミュニティのあり方やその再生については多く議論されており、地方自治体では商店街や公民館、学校などを中心としてコミュニティを形成する試みがなされている。コミュニティが重要視されるのは、それが人が生活す…るうえでの基盤になるものと考えられているからであり、経済成長に頼らない豊かな生活を送る上での基盤になるものであると認識されているからである。
しかし、マンションの住人はマンションを単位としたコミュニティという意識は薄く、むしろコミュニティは排他性や同調圧力を生むためにコミュニティというしがらみからの開放が進歩であるとされてきたという歴史がある。文明の発展とは、コミュニティという集団によってではなく、個人がバラバラに生活できる社会が「進歩」であると考えられてきた。このような理由から、コミュニティという言葉に対して批判的な立場をとる人も存在する。
本書は、都市、グローバル化、社会保障、地域再生、ケアなどさまざまな観点から、人と人との新たなつながりの形を模索するものであるが、「コミュニティ(共同体)」をより具体的に分析し、感情的次元の「農村型コミュニティ」と規範的・理念的なルールによる「都市型コミュニティ」とに分類している。
人の移動が少なく、濃密な関係性が築かれるのが「農村型コミュニティ」であり、コミュニティという語についての一般的な認識がこれにあたると言える。そして、生産のために個々が集う場所が「都市型コミュミティ」であり、この外部に開かれている流動的な集団を、西欧では宗教が、日本では経済成長という理念が一つの集合として束ねていた。
明治以降、日本は欧米列強の進出に直面する中で、「文明の乗り換え」を行った、しかし価値原理(キリスト教)は受容せず、仏教・儒教の価値原理はほとんどを捨象した。この価値原理の喪失を経済成長という信奉が埋めたと言える。
そして経済成長が頭打ちになった現在、個々をまとめるコミュニティの意識が希薄になっていると言われているが、推論すると本書で言うところの「都市型コミュニティ」が薄れているのであり、重要ということになる。
しかし、ここで議論は転回し、社会保障の話に移る。制度としての保障だけにとどまらず、心のケアなども含めた保障で、ケアを施す場としてコミュニティが重要であるという内容であり、このコミュニティとは濃密な関係を受容する「農村型コミュニティ」、感情的次元による「つながり」の場についてである。
さらに、社会格差に対する保障にも触れているが、興味深いのは所得に関するフローの格差ではなく、ストック(資産)の格差が、日本の固定的な階層の中での世代交代により蓄積され、より拡大しているという議論である。このストックに対する保障という観点から都市政策による社会保障という考えが
導きだされている。これまでの都市政策は景気刺激策として行われてきた。そして福祉政策は担当省が異なるということもあり、制度やサービスが中心であった。
著者の提言は、NPOや地域コミュニティなどの「公」的な領域の発展と、所得の再配分や土地所有のあり方などの公的部門の強化が重要であるとし、大きく括れば社会保障のより一層の充実といえる。続きを読む投稿日:2010.09.02
大学生のとき以来の広井先生。今も精力的に色々書いてる先生ですが、この本は先生の中心テーマというか関心の盛合わせ基本テキストという感じがしますね。農村型と都市型、都市論や地域に根付いた福祉のあり方など面…白く読みました。日本のコミュニティの文脈を語るのに独我論まで持ち出したのはどうかと思いましたが。地球の環境上の限界という制約こそが先生のいう普遍的な価値規範になるのか、あるいはよりローカルなレベルでの価値が成り立ちうるのか。そこが「定常型」という社会のあり方が可能かどうかの分水嶺なのでしょうか。続きを読む
投稿日:2022.12.04
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