テロルの決算
沢木耕太郎(著)
/文春文庫
作品情報
本作はもはや伝説。沢木耕太郎の最高傑作がついに電子書籍化!
あのとき、政治は鋭く凄味をおびていた。ひたすら歩むことでようやく辿り着いた晴れの舞台で、61歳の野党政治家は、生き急ぎ死に急ぎ閃光のように駆け抜けてきた17歳のテロリストの激しい体当たりを受ける。テロリストの手には、短刀が握られていた。社会党委員長・浅沼稲次郎と右翼の少年・山口二矢――1960年、政治の季節に交錯した2人のその一瞬、“浅沼委員長刺殺事件”を研ぎ澄まされた筆致で描き、多くの人々の心を震わせたノンフィクションの金字塔。第10回(1979年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
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商品情報
- シリーズ
- テロルの決算
- 著者
- 沢木耕太郎
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2008.11.10
- Reader Store発売日
- 2014.01.24
- ファイルサイズ
- 0.3MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (77件のレビュー)
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作者の筆致が冴えるノンフィクションです。
社会党委員長・浅沼稲次郎が右翼の少年・山口二矢に壇上で刺殺されたのは、1960年。私が1歳の時です。現代史の中の一つの事件として、衝撃的な写真ととともに記憶にはありますが、深く考えたことはありません…でした。
まず、1960年10月12日の日比谷公会堂まで、二人の人生の軌跡を丁寧にたどります。浅沼委員長、山口少年双方がどのような人物だったのか、生い立ちは?家庭環境は?学生時代は?等を詳細な調査とわかりやすい文体、そして、あたかも小説のような書きぶりで解き明かしていきます。テロリストとしての山口二矢がコトに至るまでの心象風景は言うまでもなく、それ以上に、浅沼稲次郎の戦前から社会党委員長になるまでの紆余曲折?の生き方も、とても興味深いモノでありました。また、なぜあの衝撃的な報道写真が撮ることができたのかも、解き明かされます。しかし、この本のスゴいところは、この事件の後のことに沢山のページを割いていることです。つまり、これが「決算」と言うことです。さてその決算報告は…。
考えてみれば、当然のことなのですけど、双方に仲間、友人、知人、そして家族がいるわけで、事件が起こった後のそれぞれの様子を詳細に追跡しています。さらに年を経過したごとに書かれた「あとがき」が3つも掲載されています。
この本を読む前は、一つの事件の経過をたどるモノとして手に取ったのですが、最後まで読み、3つの「あとがき」を読んだ後は、まったく印象が変わりました。これは、人としての一生を深く顧みる、示唆にあふれた、紛れもなくノンフィクションの「金字塔」であります。続きを読む投稿日:2014.11.30
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歴史的背景と結果を見れば…
テロリストに対する評価を甘く下してしまうかもしれませんが、テロはテロです。そして、彼が歴史を動かしてしまったのも事実でしょう。
社会党の被害者浅沼は著者が描いているように中国へ気を遣うあまり、冷戦下…で米軍基地の存在下で、”米帝との闘い”を叫んで、日本の親米左派、親米中道を完全につぶしたという評価を下さざるを得ない古い気質の典型的な社会主義、共産主義信奉の闘志ではあるわけですが、国民から信託を受けた歴とした議員であるわけです。それを暴力をもって排除した少年を英雄視することは民主主義の冒涜であると感じます。
確かに、浅沼が親米左派、中道を挫折させ、現在に山積する数々の問題を引き起こしたのは事実だとは感じます。特に彼が中国寄りの発言を行わなければ、朝鮮総連への甘い対応は右派と中道の連繋で防げたはずで、そうであるならば北朝鮮の核武装もなかったかもしれません。また、靖国参拝を行う極右のみの選択肢しか国民に残らないということもなかったでしょう。
しかし、テロルはテロルです。特に犯人に信条を吹き込んだ右翼団体への時の政権のさじ加減の甘さには幻滅します。
ポアすると言った例の団体の教祖のことを思い出します…。
内容としては非常によく取材されたノンフィクションで、読み手に歴史を教えながら、偏りのない内容でありながら、自身の主張を上手く読者に読ませてくれます。
ただ、右左問わずテロはよくない!続きを読む投稿日:2017.08.17
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