「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年
加藤聖文(著)
/中公新書
作品情報
「大日本帝国」とは何だったのか。本書は、日本、朝鮮、台湾、満洲、樺太、南洋群島といった帝国の「版図」が、一九四五年八月一五日、どのように敗戦を迎えたのかを追うことによって、帝国の本質を描き出す。ポツダム宣言の通告、原爆投下、ソ連参戦、玉音放送、九月二日の降伏調印。この間、各地域で日本への憎悪、同情、憐憫があり、その温度差に帝国への意識差があった。帝国崩壊は、東アジアに何を生み、何を喪わせたのか。
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商品情報
- シリーズ
- 「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年
- 著者
- 加藤聖文
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2009.07.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- ページ数
- 266ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (11件のレビュー)
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人間文化研究機構国文学研究資料館助教(東アジア国際関係史)の加藤聖文(1966-)による、太平洋戦争終結時の東アジア国際関係。
【構成】
序章 ポツダム宣言-トルーマンの独善とソ連の蠢動
第1章 …東京-「帝国」解体への道
第2章 京城-幻の「解放」
第3章 台北-「降伏」と「光復」のあいだ
第4章 重慶・新京-「連合国」中国の苦悩
第5章 南洋群島・樺太-忘れられた「帝国」
終章 「帝国」崩壊と東アジア
1945年の夏、大日本帝国は事実上解体した。この解体の過程を通じて、「大日本帝国」とは何であったのかを論じようとするのが本書である。東京(内地)のみならず、樺太、朝鮮、台湾、南洋諸島、満洲といった「大日本帝国」が実効支配をしていた地域、および国民党政府が拠点を構えていた重慶と東アジア各地の1945年夏を取り上げているのが本書の最大の特徴である。
戦争終結後の東アジアの地図は、既にカイロ、ヤルタ、ポツダムにおける米英ソの3カ国の首脳により決定されていた。そこには当然のことながら、帝国政府の意志も、大日本帝国の支配下にあった地域住民の意思は何ら反映されていない。そればかりか、当事者であるはずの蒋介石すら蚊帳の外であった。そこには民族自立などというお題目は存在しなかった。
1945年8月のポツダム宣言受諾を以て、日本の内地以外の地域は大日本帝国から切り離され、地域行政は日本人から現地住民代表へと移行していくはずだった。
しかし、長らく植民地統治が続いた朝鮮も台湾も、現地住民による自治独立運動は事実上失敗に終わった。朝鮮では行政を担う主導グループがまとまらないうちに、南から進駐した米軍の軍政へと切り替わった。台湾では台湾総督府から国府の台湾行政長官公署へと行政権が引き継がれ、台湾に従来住んでいた本省人による自治には至らなかった。
台湾とは逆に満洲帝国の都であった新京は、本来国府が接収するはずの地域であったが、中立条約を踏みにじりシベリアから雪崩を打って進撃してきた極東ソ連軍に飲み込まれた。そこでは在満日本人に対する強盗、強姦、殺人などの数々の犯罪行為が繰り広げられ、満洲の守護を務めていた関東軍は降伏して、極寒のシベリアへと連行された。ソ連は満洲を掌中に収め、日本人資産をことごとく接収した後、半年を経た1946年3月にようやく引き揚げることになった。
また、満洲と同じくソ連の侵略を受けた地域が樺太と千島列島であった。千島列島にいたってはポツダム宣言受諾後の8月18日から上陸作戦が開始され、南千島に至るまで全島占領された。
当然のことながら、大日本帝国の解体は日本国内だけの問題ではなく、東アジアの20世紀史で最も重要な国際政治上の問題であった。また、戦後東アジア冷戦が生起する最大の原因がこの大日本帝国解体による統治者の変更であることも、疑いがない。
ヤルタ会談によって取り決められた米ソの軍事バランスの狭間で、日本を含めた東アジア諸地域の住民の運命、そしてその後の歴史が方向づけられたことを改めて感じさせられた。
本書ではマルチ・アーカイバルな手法で、実証的に各地の終戦を描写している。膨大な史料、参考文献と格闘しなければこのような本は生まれなかっただろう。新書という媒体での点描とは言え、このような広範な地域の歴史を1人で執筆するとは、驚くしかない。久しぶりに充実した新書に出会えた。
蛇足ながら、本書のような本を書ける実力のある人間が、未だに助教という地位に留まっていることを見るにつけ、歴史学系のポストは他の社会科学系のポストに対して明らかに不遇だと感じる。続きを読む投稿日:2012.02.18
本書は、1945年8月15日前後に、日本、朝鮮、台湾、満州、樺太、南洋諸島という「大日本帝国」を構成していた諸地域がどのように敗戦を迎えていったのかを描くことで、大日本帝国とは何だったのか、その本質は…どこにあるのか、どういうかたちで滅亡していったのか、そして帝国の記憶の何が喪われてしまったのか、そのことが現在のわれわれにとってどう関わっているのか、といったことを明らかにしている。
トルーマンのほぼ独断だったポツダム宣言の作成経緯、米英に見捨てられての自主的な朝鮮独立の動きの挫折、30分で決められた「38度線」、蒋介石の当初の台湾軽視に起因する台湾に上陸した国府軍への台湾人の失望、満州国崩壊に伴う甚大な犠牲、沖縄戦の前哨戦といえる南洋諸島での玉砕、最後まで戦闘が続いていた樺太・千島など、本書で描かれた「大日本帝国」崩壊に係る各地域のエピソードは、まさに知らないことだらけであった。しかも、これらの敗戦前後の出来事が、朝鮮半島の分断、台湾と大陸中国の分断、国共内戦の末の中華人民共和国の成立など、現代まで続く混沌とした東アジア情勢に直接つながるものであることも理解した。
私を含め多くの日本人にとって、その崩壊を含む「大日本帝国」としての歴史は忘却の彼方にあると思われるが、著者が指摘するように、これからの東アジアと向き合うためにも、「大日本帝国」としての歴史を直視することが必要だと感じた。続きを読む投稿日:2019.09.14
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