冤罪者
折原一(著)
/文春文庫
作品情報
叙述トリックの第一人者、折原一の筆致が冴え渡る「――者」シリーズ。ノンフィクション作家・五十嵐友也のもとに届けられた一通の手紙。それは連続婦女暴行犯として拘置中の河原輝男が冤罪を主張し、五十嵐に助力を求めるものだった。自らの婚約者を河原に殺された五十嵐にとって、それは到底素直に受け入れられる内容ではなかったが、やがて河原の“無実”を証明する人物が現れ、裁判は混迷。そして新たな惨劇がはじまった――! 逆転また逆転、冤罪事件の闇を描く傑作推理。
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商品情報
- シリーズ
- 冤罪者
- 著者
- 折原一
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2000.11.10
- Reader Store発売日
- 2013.12.06
- ファイルサイズ
- 2.7MB
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この作品のレビュー
平均 3.9 (53件のレビュー)
-
信用と信頼の折原一長編はやはり面白い。保証制度濃厚なので、この600Pを超えるぶ厚い作品でも躊躇せず手に取ることが出来るし、やはりあっという間に読み終えてしまった。
連続婦女暴行殺人事件。被害者は真…夜中開けっ放しの窓から侵入され陵辱された後、顔と足にガソリンを撒かれ火を放たれる。その容疑者として捕らえられたのが河原輝夫だ。彼は年月を経て拘置所からノンフィクションライターの五十嵐友也に冤罪を訴える手紙を出す。
最後の被害者 水沢舞の婚約者であった彼は一から事件を見直す事となる。彼自身の心の葛藤、そして複雑に絡まる人間模様は容赦無く予想打にしない結末をとして我等読者に突き立ててくるのだからもう堪らない。
歩みが遅いのは確かだが、この丁寧さが後のクライマックスを多いに引き立ててくれている。人物描写の作り込みは秀逸だし、背景をしっかり認識できるものだから面白いが止まらない。歯止めが効かなくなるので残りページが1/4を切った時、その後ゆとりのある時間を取れないようなら一旦ブレイクタイムを挟んだ方が良い。現実に戻れなくなり、確実に生活に支障が出る。実話だ。
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対象者が犯罪者の時点で致し方ないのだが、性描写の嫌悪は強めに出た。男尊女卑の言葉がメジャーと化した現代ではココを頷ける方は少ないと思うが、個人的には、この未来を知らない時代に作られた燃え上がる前の火種 原点を覗き見できた事に満足している。
正常人枠である筈の主人公、五十嵐友也の奇行に詳しく触れていない事が男尊女卑の言葉を浮上させている気がするが、これも演出に一役買っている様に感じた。皆どこか狂っているし何かに取り憑かれている状態なのだ。この、終始薄気味悪い重たい空気が流れているのも魅力的だ。決してホラーで無ければファンタジーでもない、潜在意識として組み込まれた人の恐ろしい部分を皆絶妙に解放している。ここに恐怖を覚えるのは(恐らく)人として間違えていないはずだ、と妙に安心してしまう程だった。
著者のミステリーは古風だが(事実、1997年の作品である)裏の裏をかいてくる複雑なトリックと、終盤のサスペンスな展開には毎回釘付けにされてしまう。推理を放棄し熱中、終わりの見えない転々連撃に自身のHPがみるみる減っていく。これには抗わず、素直に悦に入るのが吉かと思う。回復薬も必要ない、根性で乗り切ろう。
このギリギリに削られた状態がサスペンスの醍醐味に感じているのだが、苦手な人は「こいつおかしいんじゃないか」と脳内で蔑んでいただければ...決して声に出さず... メンタル豆腐なので...(フェードアウト)
ページ数と同じく内容も重厚感溢れる作品なので手に取る際は人によっては精神統一のプチ儀式が必要やもしれない。だがそれを経て得られる娯楽は大きいと思う。昔の作品に触れるとその時代の背景も見えてくるし、人の根源の恐ろしさを再認識すると一概に「過去の出来事」と一蹴する事は出来なかった。更に、警察捜査のもどかしさや横暴さも今と比べて善し悪しの判断材料になる。それを善か、悪か、と考えをまとめるのは個人の楽しみだ。
色々な思想を生み出してくれる昔の作品は大好きだし、私的その筆頭が折原一という作家だ。
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エピローグの昭和ロマンス感は最初こそ嘲笑したが一周まわってご愛嬌と化した。「僕は狩人さ」「まぁ、命中率の低い狩人さんですこと」
........これをノーリアクション、真顔で通過できた方は是非お知らせして欲しい。その鋼の精神是非御教示いただきたい。続きを読む投稿日:2022.04.01
このレビューはネタバレを含みます
ある殺人で無期懲役の判決を受け服役中の男がいた、主人公のライターはその男から自身の無実を証明してくれと頼まれる。 悩みそして怒る主人公・・・なぜならその男が殺したのは主人公の婚約者なのだから・・・。
レビューの続きを読む
…事件は冤罪だったのか、新たに起こる犯罪は何を意味するのか、登場人物を複雑に書き分け真相に迫っていく。
ミステリとして極めて複雑だったと思います。 折原さんの作品でもトップレベルで登場人物多いんじゃないかな。 本シリーズ特色として実際の事件がモデルとして背景にあります。 冤罪、警察の応対、加害者の人権、そして遺族の憤慨、モデルとなった事件は存じなかったのですがどのような事件だったのか想像がつくようです。 でも社会派小説では全くないです。 社会制度について思案するのも悪くないですが作者は手加減なしで騙してくるのでご注意です。
水沢舞殺しに関してだけは河原は冤罪であり、水沢舞殺しだけは栃本久美子による便乗殺人だった――
ざっくり分けると
河原の冤罪、監禁中の男女誤認、小谷ミカの誤認がトリックなのでしょうけど、小谷ミカについてはルームメイトの存在だけじゃちょっと理不尽じゃないですかね。 あそこまで小谷ミカ本人の描写をして事件の本筋とは関係ない名前貸しだけの存在というのは頂けないです。 無論何かを見落としている可能性もありますが。
それ以外の叙述トリックはそもそもの物語の複雑さもあってかなり面白くなっているかと思います。
しかし折原さんの作品ここまでボリュームあるとかなりエネルギー使いますね。 用法用量を守って読みましょう。続きを読む投稿日:2023.01.18
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