カエルを釣る、カエルを食べる
周達生(著)
/平凡社新書
作品情報
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。人間にとってカエルとは何か?あるいは、カエルにとって人間とは…?日本でもアジアでも昔から、田園の可愛い生き物として、鳴き声を楽しむ対象として、そして美味しい食材として、カエルは身近な存在でありつづけてきた。そして現代、環境問題を映す鏡にもなっている。カエル釣り歴なんと六〇年!の著者が贈る、可愛くて美味しい両生類をめぐる雑学オンパレード。
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商品情報
- シリーズ
- カエルを釣る、カエルを食べる
- 著者
- 周達生
- 出版社
- 平凡社
- 掲載誌・レーベル
- 平凡社新書
- 書籍発売日
- 2004.03.17
- Reader Store発売日
- 2015.05.16
- ファイルサイズ
- 24.2MB
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
-
[ 内容 ]
人間にとってカエルとは何か?
あるいは、カエルにとって人間とは…?
日本でもアジアでも昔から、田園の可愛い生き物として、鳴き声を楽しむ対象として、そして美味しい食材として、カエルは身近な…存在でありつづけてきた。
そして現代、環境問題を映す鏡にもなっている。
カエル釣り歴なんと六〇年!の著者が贈る、可愛くて美味しい両生類をめぐる雑学オンパレード。
[ 目次 ]
第1章 カエルの昔と今
第2章 カエルを釣る
第3章 カエルを食べる
第4章 カエルの民族動物学
第5章 カエルの環境学
第6章 カエルの近縁者たち
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]続きを読む投稿日:2011.05.25
ぼくのこの拙いブログに,迷い込んでくる検索キーワードでいちばん多いのが「アマガエル 飼育」というものだ。ぼくは2年ほど前の梅雨時に,本書でびっくりするほど簡単なカエルの飼育方法を知り,すぐに近くの田ん…ぼからアマガエルを1匹拝借してきて,それから何ヵ月間か飼育・観察をしていた。
その飼育方法とはいったいどういうものか。以前,当ブログにも引用したけれど,書評として編み直すにあたって,いま一度引かせていただきたい。
アマガエルの水槽に少しだけ水を張り,草も入れた。小さな容器にバナナ少々を入れたものも入れる。すると,水槽の蓋のスリットから,ショウジョウバエが勝手に侵入し,バナナに産卵する。卵から幼虫,蛹,成虫になるまでに要する時間は非常に短い。成虫は,繰り返し出てくるので,これでアマガエルの餌は確保されたことになる。
(p60-61)
ぼくは,それ以前にもカエルを飼おうと試みたことは何度かあったのだけれど,毎日,新鮮な生き餌が必要で,それを確保するのに手間がかかるために,あきらめざるをえなかった。けれども,この方法の場合,いったん装置を用意してしまえば,そのなかで生き餌の確保からアマガエルの捕食まで勝手に行われるので,まったく手間がかからない。ただ,屋内だとむずかしい上に衛生上も問題があるので,屋外に,ショウジョウバエが飛び回っても問題ない一定のスペースが必要になる。
本書の著者である周達生さんは,1931(昭和六)年,神戸市生田区の生まれ。研究の途中で動物生態学から文化人類学(民族学)へと転向されたそうで,停年退官するまでは,国立民族博物館に勤務されていたとのこと。初代館長である梅棹忠夫さんとも,交流や共同研究をされていたことが,文面からうかがえる。
このレビューを書くにあたって,同じく平凡社から出版されている『昭和なつかし博物学』という新書も読んでみたのだけれど,どちらも文献・新聞等の資料からの引用・参照がとても多い。なかには,『光明日報』という中国の新聞に触れている箇所もあった。どうやら周さんは,フィールドワークを重んじると同時に,文献・資料の蒐集家でもあるようだ。
周さんの大きな研究テーマは,「物質文化論」と「民族動物学」の2つだそうだ。
本書には,物質文化論について詳しい説明はされていないのだけれど,名前からして「ヒトとモノとのかかわりの文化史」といったところだろう。本書では,その観点から,「第三章 カエルを食べる」が書かれている。
「民族動物学」については,やや詳しい説明があって,それによれば「ヒトと動物とのかかわり方を研究する民族学の一分野」とのこと。本書ではその観点から「第四章 カエルの民族動物学」が書かれている。周さんにはこの分野に『民族動物学ノート』『民族動物学-アジアのフィールドから』という著作があるそうで,機会があれば読んでみたい。
本書は,前述した2つの研究テーマと著者の実経験,そしてそれにまつわる多くの文献・資料からの引用が混じりあって構成されている。なかでも,ぼくがいちばんおもしろかったのは,周さんの実体験に基づいたエピソードだった。なにしろ周さんは「カエル釣り60年」の大ベテランで(そう言われても,多くの人はピンとこないだろうけど・・)カエル釣りにかんするノウハウが「第二章 カエルを釣る」で開陳されている。
たとえば,「ウシガエル釣りはマコモ型が最適だ」とか,「とにかく,何でもよいから,安くて口に入りやすいものを,カエルの目の前で動かしてやれば釣れるのだ」「さて,カエル釣りだが,それは単独行が一番よい」などという記述を読むと,わけが分からなくても,むずむずしてくる(まさか,カエル釣りで「単独行」がでてくるとは思わなかった)。「カエル釣り」を珍しがったのは,国立民族博物館の同僚の方々も同じなようで,周さんは彼らを連れてさかんにカエル釣りに出かけたそうだ。
本書を初めて読んだときには,アマガエルの飼育方法にあまりに目を奪われてしまって,そのほかの内容をほとんど覚えていなかった。このレビューを書くために再読してみて,いくつか気になるテーマを発見した。たとえば「青いアマガエルの秘密」「中国のウシガエル養殖事情」「サウンドスケープとカジカガエル」などは,もう少し膨らませてかんがえてみたいテーマだ。
本書は,散文調で癖がある文体で,けっして読みやすい文章ではなかった。でも,所どころに「アマガエルの飼育法」のような砂金が埋まっていて,フィールドワークの魅力や実経験の強さというものを,あらためて教えられた。
そうそう,この本には「ゴキブリを餌にしたアマガエルの飼育法」も載っているのですよ。
続きを読む投稿日:2011.06.13
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