日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ
飯尾潤(著)
/中公新書
作品情報
独特の官僚内閣制のもと、政治家が大胆な指導力を発揮できず、大統領制の導入さえ主張されてきた戦後日本政治。しかし一九九〇年代以降の一連の改革は、首相に対してアメリカ大統領以上の権能を与えるなど、日本国憲法が意図した議院内閣制に変えた。本書は、国会、内閣、首相、政治家、官僚制、政党など議院内閣制の基盤を通し、その歴史的・国際的比較から、日本という国家の統治システムを明らかにするものである。
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商品情報
- 著者
- 飯尾潤
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2007.07.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 248ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (57件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
この本は日本の統治構造の歴史や、国際比較から、現状と課題を提示してくれる本。
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日本の統治構造の現状
まず、日本は議院内閣制の国であるのだが、戦後の日本の政府構造を観察してみると、議院内閣制のカタチが本来の議院内閣制のモデルから独自に発展してきた経緯がわかる。
議院内閣制とは、一元代表制、つまり、行政権を持つ内閣が、議会の信任によってのみ成立しているということ。(大統領制は、大統領と議会が別々に選出され、民意が二元的に代表される)
したがって、議院内閣制においては、権限の委任関係が以下のような1つの流れになる。
有権者→国会議員→首相→大臣→官僚
しかし、日本では、あまりに長い間政権交代が起きなかったため、本来首相の決断によって任命されるはずの大臣が、派閥の力関係が反映された上で選ばれるようになった。また、身内でポストをローテーションするために、大臣は原則1年ごとに交代する慣行も生まれた。
その結果、大臣は首相のために働くというだけではなく、派閥のために働くという動機が働くようになり、政権の主体として補助者たる官僚を使いこなすはずの大臣が、官僚から言われるままに行動する大臣へと変化することで、上記の権限の委任関係が正常に働かなくなってきた。
この状態を著者は議会を背景とする議院内閣制に対して、省庁の代表者の集まりを背景とする官僚内閣制と呼んだ。
官僚内閣制の特徴
官僚内閣制の大きな特徴は、政策立案システムにある。
通常、議院内閣制の政府の政策は、選挙結果から民意を汲み取るため、その政党が掲げるマニュフェストに準じた政策がなされる。つまり、全体の政策の方向性が事前に決まっていて、それに合わせるように個々の政策の辻褄を合わせることとなる。
しかし日本では、長い間政権交代が起きなかったため、総選挙が政権選択選挙にならず、有権者の選択によって首相や内閣が決定されることが少なかった。その結果、民意を汲み取れず、政権の目的が不明確化した。
そこで、官僚組織構造から民意を汲み取ろうとした結果が、官僚内閣制へと繋がっていくこととなった。
日本の官僚組織は、各省庁→各所轄→それぞれの所轄している業界などの諸団体へと社会的に開かれており、日々情報や要求が多方面から寄せられることになる。
また、官僚は彼らからの陳情を元に政策を策定していく。つまり、枝葉の民意を積み上げ、他部署との調整作業を通じて次第に政策が形成されてきた(省庁代表制)。
言い換えれば、官僚内閣制は、マニフェストの代替物を作り出す仕組みとして機能してきた。
官僚内閣制の問題点
上述した官僚内閣制の最大の問題点は、民意が民主的正当性を持たない形で現れることで、有権者の意向を集約し、政治家が政策を策定する機能が働きにくい点にある。
官僚内閣制における積み上げ式の政策策定では全体的な方向性が曖昧になり、既存政策の廃止や方針変換といった、トレードオフが避けられない政策の必要性が高まっている現代において機能不全が起きている。
したがって、政策を総合化し、社会の目指す方向性を明確にする決断をできる権力核が必要になる。そのためには、本来の議院内閣制の姿に軌道修正する必要性が出てくる。
今後の課題
議院内閣制を確立するためには、政党が主体となって衆議院総選挙前に政権公約を練り上げ、有権者が政党、首相候補、政策の3点セットを選ぶ事ができるようにする必要がある。
これが出来れば、権限の委任関係が明確化し、首相の地位が向上→首相と大臣の関係が同輩的色彩から上下関係の強いものに→政策の責任の所在が明確化することで、官僚の役割の変化に繋がっていく。
また、衆議院における権力の強化に伴い参議院には別の役割を担わせる必要が出てくる。生命倫理問題、死刑制度の是非、皇室制度などじっくり議論される必要のある事項や、超党派的な合意形成を必要とされる憲法改正、財政再建、外交問題等においての長期的視点からの調査提案機能を持たせ、多数派民主制を補完する制度を構想する必要性も指摘している。投稿日:2021.08.23
出版が2007年と少し古いが今でも妥当する部分が多いのではないだろうか。筆者は、日本の統治機構の特徴について、人事グループによって組織された省庁による代表性とする。この点、閣僚すらも省庁の代弁者に過ぎ…ない。もっとも、本書を読み進めれば官僚・政治への批判に徹しているわけではないことが分かる。官僚も自立的な支配層を形成しているわけではなく、所管業界との利益・相互調整関係や脆弱な政党組織に端を発する政官関係など、根深い日本社会の特質の中で官僚制が規定されている。閣僚が省庁の利益を代弁するのはそうすることが動きやすいからであり、それは自民党支配の安定に伴って閣僚ポストが専門知識などではなく褒賞として差配され、せいぜい1年程度交代してしまう面が大きい。
本書の内容はどれもどこかで聞いたことのあるようなものばかりだが、改めて通して読むことで日本の政治構造を深く理解することができた。ただ、第二次安倍政権以降の官邸主導の話は当然出てこないので、今の行政のあり方を学ぶには他の書籍を当たる必要がある。続きを読む投稿日:2023.01.30
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