- 最新巻
本居宣長(下)
小林秀雄(著)
/新潮社
作品情報
「もののあはれ」の説は、単に「源氏」研究の学説に留まるものではなかった。宣長において、それは、実人生の情(こころ)を論じる際にも一貫していた。ひらすら宣長の肉声に耳を傾けながら、その徹底した学問と人生の態度を味わい、いかに生くべきかを究めた本書は、同時に現代最高の知性、小林秀雄の思索の到達点でもあった。 ※対談『「本居宣長」をめぐって』江藤淳/小林秀雄は、掲載しておりません。
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この作品のレビュー
平均 3.8 (7件のレビュー)
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古事記のこと
本居宣長の大きな業績のひとつである古事記研究についても書かれています。
古事記は神代について書かれたものであり「源氏物語」のような物語とは違いますが、この点が古事記を読む者を混乱させます。理性で理解…できない神代の伝説(つたえごと)をどう扱うべきか、あるいはどう折り合いをつけるべきか、宣長と同時代の学者にとっても大きな問題でした。
宣長は、源氏物語研究を通して得られた道(方法)を真直ぐに歩いて、行ける所まで行ってみたのだそうです。次のように書かれています。
「忍耐強い古言の分析は、すべてこの『あはれ』の眺めの内部で行われ、その結果、『あはれ』という言葉の漠とした語感は、この語の源泉に立ち還るという風に純化され、鋭い形をとり、言わばあやしい光をあげ、古代人の生活を領していた『神(あや)しき』経験を描き出すに到ったのである。」
それは、古事記を頭で解釈することなしに、ありのままに読んでみて、自分の精神世界に映ずる情景を描き出したのではないかと思います。同じように、小林秀雄が本居宣長の精神世界に奥深く分け入って、我々に偉大な精神を描き出してくれています。
続きを読む投稿日:2013.10.19
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上巻に続く下巻。
「物学び」「やまとごころ」「もののあはれ」をキーワードとして、形式的な当時の学問世界や、中国から輸入された儒学への傾倒を批判。
師匠である賀茂真淵や、同時代の学者である上田秋成との…論争についても触れられている。
ひとえに自分自身の経験不足からであるが、古事記や書紀(宣長は『日本書紀』という言い方を嫌う)にある神話世界が非常に重要であるということが、どうしてもはっきりとした納得性を持ってこない。
「文字」を持たなかった時代に人々によって「口伝」として語り継がれた神話こそ重く見るべき物語、というのは何となく理解できる。
しかしそれでもやはり文字の力は覆せない、と若輩者は思ってしまう。
また、ものごとをそのまま感じる「自然主義」よりも、科学や現実と言った「理屈」に偏るのは、いつの時代も変わらない課題のようだが、現代は特にそうだと思う。
その中で、ありのままを見て信じることは難しいことだと感じた。
一神教と多神教、日本と西洋における自然主義の違い、言葉と文字、信じる力など、色々頭に去来する読書体験であった。
小林秀雄の書き方が、私にはいただけない。
「そう言っていいと思う」、「そう考えるしかない」など、自分自身を無理やり納得させているような語尾。
押しも押されもせぬ歴史的な批評家に何を言えるものでもないが、残念ながら今の自分の年齢にはまだ感じとれぬものがあるようであった。続きを読む投稿日:2023.10.14
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