善の研究
この作品のレビュー
平均 3.8 (32件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
西田幾多郎『善の研究』(1911年)を20年ぶりに読みかえした。
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この本のポイントは、たぶん、「われ思うゆえにわれあり」の「われ」ってどこからでてきたんだ?それって妄想なんじゃねーのというところだろう。で、「われ」じゃなくちゃーなんだとなるが、もちろん、ほかの誰かさんとか、梵天さんの夢とか、そんなもんでもない。
大ざっぱにいうと、「われ」というのは、一種の「まとまりかた」(統一)としかいいようのないもんだということになる。物もそのような「まとまり」で、空間とか時間とか因果とかは「まとまり」である「自己」が「物」を整頓をする形式なんである。で、この「まとまり」をだんだん大きくしていって、「自然」やら「神」やらが説明されていく。こういうのは活動する全体集合といったようなもんである。「西田は高等数学がわからんと理解できない」などといわれるけど、高等数学というのは、集合論とか射影みたいなもんじゃないかと思う。
『善の研究』はメガネの外し方としては面白いし、ひざをうつところも多い。しかし、あんまり便利な言葉や、すべてを説明しようとする理論なんてのを考えるのは、それこそ「哲理を考えるべく罰せられた」(ヘーゲル)ところの呪われた行為なのかもしれんなーと思う。「語り得ぬものについては沈黙せねばならない」というのも、なんだか禅が以心伝心を宗としたのを思いだしてしまう。悟りをふりまわす人も多いからじゃないかと思う。方以智にいわせれば、「機鋒を争う者が群起する」といったところかなー。
神=自然とやるのは、まあいいとしても、人=神の部分集合とやると、その通りではあるけれど、悪用する部分集合がでてきて、「小さい自己を脱して大きな自己に生きろ」とほかの部分集合に言いはなち、くだらん戦争で突撃をするための飾りになってしまう。ほんらいなら、戦争なんかやめて家にかえって、部分集合としての自分をありがたく生きれば、それでいいんじゃないかと思う。西田さんもそう思っていたんじゃないかと思う。
西田さんはきちんと座禅をした人なんだが、明末あたりの中国思想じゃ、禅は異端だったり、過激思想で「アカ」扱いだったりする。王陽明も若いころ禅にころんだらしいが、結局、「現実の起伏に即した」(荒木見悟)把握をめざすことになる。儒家にいわせると、禅師なんてのは、世の中の経営の苦労をバカにして、思わせぶりで、悟りを鼻にかけて、まったく気にくわない人たちじゃなかったのかなと思う。禅宗の内部でもインスピレーションだけじゃだめだよということで、祖師をきちんと学ぼうという動きがあって、『宗鏡録』をよめといってみたり、戦乱下の民衆の救済を考える社会派の禅僧(覚浪道盛)なんて人もでてくる。
だけど、儒家がやっている君臣だの、親子の関係のあるべき姿だのが、禅にくらべて、せせこましくみえるのは否定できない。だけど、こういうせせこましいところに、みんなが通る道があって、現実に即して考えることもいっぱいあって、あんがい奥深いんだぜというところが理解してもらえなかったりする。そこがつらいところなのかもね。
『善の研究』をほんとうに生かせば、こういう儒家の立場もはいってくると思うし、ほんとうに面白い本である。「我々の神とは天地これに由りて位し万物これに由りて育する宇宙の内面的統一力でなければならぬ」(第四編第二章)なんてのは、これ『易』の「太極」だよなーと思う。『易』はいちおう儒家がおもんずる古典なんである(道家も『易』は好きだけど)。方以智は『易』が中国最初の以心伝心であるといっている。
西田さんも『善の研究』で終わったわけじゃないから、つづきをよまないといかんなーと思う。ということで、つぎは『西田幾多郎哲学論集Ⅰ』なのである。「場所」は一回読んだけど、もちろん忘れている。なんともこまったもんである。投稿日:2017.09.18
この人の本は大学にいるうちに読んでおきたかった。キーワードは「主客合一」。この観点から、認識論、実在論、倫理(善とは何か)、そして神について語っていく。もっとも、あまり初心者向けではない。 内容の解説…は他の人にお任せするとして、個人的に気に入ったのは、論理の流れが非常に把握しやすいところ。各章がA→A1→A2→B→B1……という風に順序立てて構成されており、話がすっと頭に入ってくる。もっとも、それを理解できるか否かはまた別の問題ではあるのだが……続きを読む
投稿日:2018.07.29
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