ファスト&スロー (上)
ダニエル・カーネマン(著)
,村井章子(訳)
/ハヤカワ・ノンフィクション
作品情報
我々の直感は間違ってばかり? 意識はさほど我々の意思決定に影響をおよぼしていない? 心理学者ながらノーベル経済学賞受賞の離れ業を成し遂げ、行動経済学を世界にしらしめた、伝統的人間観を覆す、カーネマンの代表的著作。2012年度最高のノンフィクション。待望の邦訳。
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商品情報
- シリーズ
- ファスト&スロー
- 著者
- ダニエル・カーネマン, 村井章子
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ・ノンフィクション
- 書籍発売日
- 2012.11.25
- Reader Store発売日
- 2012.12.28
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 376ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.2 (77件のレビュー)
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自信を揺らがせ、深い自省の念を抱かせる好著
脳は、因果関係が大好きだが統計的な推論にはとんと弱く、偶然の罠にもたやすく陥る。後講釈も大好きで、一貫したストーリーを作りたがるが、予想外の出来事が起こるとたちどころに記憶を消去し修正する。
平均への…回帰なんて説明では満足できず、そのため直感は、不可避的にバイアスがかかる。だけどその修正は、ホームランを打つチャンスを減じてしまう。
「主観的な自信は感覚であって判断ではない」が印象的。
これからはある予測や行為に自信を感じたら、それは正しいことだからではなく、脳がつじつまが合ってると喜んでいるに過ぎないと思おう。
著者は、直感を信じるなと言ってるのではない。過信するなと言ってる。過去や歴史を十分に理解し教訓が得れるなんていうのは幻想だし、将来や未来を知り得るとというのも思い込みにすぎない。倫理的にも社会規範的にも支持される行為であっても、われわれが本来備えている見方と合致しなければ、その望ましい結果にまで目を瞑ることになる。
社会も、標準業務から逸脱したがらない役所の連中や慣例通りの治療に満足する医師のように、リスク回避に走る生き方が一般的になりつつある一方で、一発逆転の無謀な賭けに出るギャンブラーが時に無批判で賞賛されている。
ニスベットとボージダの「人助け実験」の結果は考えさせられる。統計的な数字に納得しても、いざ感じの良い被験者を見ると、そんなことはすっかり忘れてしまうのは、総論賛成各論反対のいまの政界や、財政再建のために増税が必要だと分かっていもいざ報道で低所得層にどれだけ負担が増すかを知ると先延ばしする心性に通じている。
本書の端々で「自分がこの分野の第一人者である」ことを読者に分からせる書き方。
最後に著者近影を見て、鼻の穴の大きなドナルドダッグみたいな顔だと思った。
読み通すのに時間がかかるのは仕方がない。頭では分かったつもりなのにそう見えてしまう有名な錯視の2本の線を終始見続けてるよう。自信は打ち砕かれ、何をよりどころとすれば良いのか(統計か?)途方に暮れるのだから。
本書を読んで、深い自省の念を抱くか、自覚的に利用してやろうというよこしまな気持ちが芽生えるかは読者次第。続きを読む投稿日:2013.12.11
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2000文字では紹介しきれない
著者はノーベル経済学賞をとった心理学者。似た様なテーマの選択の科学、錯覚の科学も良かったが1冊だけ読むならこちらがおすすめです。ただしボリュームはあるけど。
まずはシステム1(fast)とシステム2…(slow)という本書の主人公?の紹介から。
システム1は自動で働き直感的な判断を支配する。話をしながら歩いても前から来た人とぶつからないのも、人の顔をぱっと見て感情を読み取るのも簡単な計算に即答するのもシステム1。難しいことができないと言うのではなく訓練によって高度な技能もシステム1が支配できるようになる。例えば羽生さんが一目で指し手が見えたり、イチローが瞬間的に打球の行方を判断したりといったこともできる。ただしシステム1は注意深くなく簡単な結論に飛びつきがちである。自信満々の政治家は頼もしく見えるが統計的には自信たっぷりの態度と成果にはなんら関係がない。
システム2は注意力を要する雑音の中で特定の人の声を聞き分ける、2桁のかけ算をするなど。例えば歩きながら1桁のかけ算は問題なくできる。しかし多くの人は歩きながら2桁のかけ算をしようとするとリソースがシステム2に集中するため足が止まってしまう。難しいことをするかどうかではなく集中力を振り向けることに関連する。面白いことにシステム2が働くときには瞳孔が開くらしい。
人の話を注意して聞いているか、聞き流してるかは目を見りゃわかると言うことですな。しかしシステム2は怠け者で疲れてくるとシステム1の直感的な答えを受け入れるようになる。
問題1
バットとボールは合わせて1ドル10セントです。
バットはボールより1ドル高いです。
ではボールはいくらでしょう。
直感的に浮かんだ答えが間違っていたとしたらそれはシステム2が怠けてシステム1に判断を任せてしまったからだ。
認知容易性
中身が全く同じだとしても手書きで字が汚かったり、フォントが小さく改行もなくて読みにくかったりすると印象が悪く、中身自体の評価を落とされてしまう。見た目の悪さがシステム2を呼び起こしてしまうようだ。
単純接触効果
繰り返し聞かされた言葉にはなんとなく好意を持ってしまう。コマーシャルや選挙演説もこれを狙っている。好きなコマーシャルを見て笑顔になるとシステム1の働きで何となく商品に好意を覚えるが、名前を連呼するだけのおっさんの話は無意識にしかめ面になり、きちんとシステム2が監視するので好意は持てないということか。ざまあみろ。
結論に飛びつくマシン
本文中で時々実験をさせられる。
ABC,ANN aproached the bank,121314と3つの文字が並んでおり、さあどんな仕掛けだろうと見ていたが気がつかなかった。
Bと13が全く同じ字だったのだ。システム1は自動連想でBと13をそれぞれ認識してしまった。
アンカリング効果
未知の数字を見積もる時にある数字が提示されるとその数字がアンカー(いかり)となって見積もり結果に影響を与える。昔タイに行った時にパッチもんの時計を買ったことがある。3000バーツと言うので一声300バーツと言ったらあっさりOK。ふっかけられるのは分かっているが3000がアンカーで、1/10と見積もったわけだ。ではスタートが5000や1000だったらいくらと答えたのだろうか。あるいは100や30000だったら?多分それ以上相手にしなかったと思うあまりにも外れた数字はアンカーにならない。
じゃあどうやって交渉するのか?
「そこで私は交渉術のクラスで、次のように教えている。相手が途方もない値段を吹っかけてきたと感じたら、同じように途方もない安値で応じてはだめだ。値段の差が大きすぎて、交渉で歩み寄るのは難しい。それよりも効果的なのは、大げさに文句を言い、憤然と席を立つか、そうする素振りをすることだ。そうやって、そんな数字をもとにして交渉を続ける気はさらさらないことを、自分にも相手にもはっきりと示す。」続きを読む投稿日:2014.01.01
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