勝てないアメリカ 「対テロ戦争」の日常
大治朋子(著)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.1 (11件のレビュー)
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ゼミ同期の毎日新聞大治記者の渾身の作品。
アメリカはもちろんのこと、戦地であるアフガニスタン、隣国のパキスタンまで足を運び非対称戦争の持つ意味や今後予想される未来まで、事実に裏打ちされた確かな文章で読…む者を感心させた。続きを読む投稿日:2015.11.07
2001年のニューヨークでの大規模テロを受けてアメリカはアフガニスタン、そしてイランへと派兵し戦争を継続してきました。軍事力の質・量では圧倒的な米軍が大きな犠牲を払っても勝利を得られない現実を様々な角…度から報告する1冊です。4部構成となっており、1章は帰還兵が直面するTBI(外傷性脳損傷)と呼ばれる爆風によるショックが生み出す脳機能への影響、2章は米軍と戦争を報道するメディアとの関係、3章は著者によるアフガニスタン最前線での従軍取材記録、4章はアメリカが本格的に導入した無人機による弊害、について詳しく述べられています。
装備がより充実し兵士の死傷率が下がる一方、以前であれば命を落としていたような衝撃を受けても命を落とさなくなった結果、慢性的な頭痛や疲労、記憶障害を併発し、自殺の増加や社会復帰できない帰還兵が激増しているという現実は、戦場に兵士を派遣すれば避けることができない事実であると感じます。
本書のタイトルにもありますが、質・量で圧倒的なアメリカ軍がアフガニスタン、イラクのテロ組織を相手に決定的な勝利を得られない構図として、戦う相手が正規軍でなく、戦場とそれ以外の区域の境界が明確でないことが挙げられています。
現地に駐留するアメリカ軍としては、現地民間人の世論は何としても味方につけて「アメリカ軍はテロ組織から民間人を守る」という意識づけを試みますが、民間人に紛れ込んだ武装組織メンバーからの攻撃を繰り返し受けるうちに、民間人の誤爆や巻き添えを生み、次第に敵視されるようになります。
これら現地に派兵することで発生する諸問題を解決する切り札として投入された無人機ですが、宣戦布告もなく、また現地政府に無断で武装組織の要人を殺害する手法は、主権侵害との誹りや、無人機での誤爆も引き起こし、アメリカに対する反感を増長する結果をもたらしています。特にCIA主導の運用では、誰をどういう容疑で殺害したのかといった重要な事実が安全保障上の機密として公開されないケースが多く、恣意的な運用を疑われる温床となっており、これは今後、中国が無人機を広く運用した場合に付け入る隙を与えているとも言えます。
アメリカとしては武装勢力を一掃した後、現地の人による統治、治安維持の道筋をつけてテロリストの温床とならない国づくりまでを目指したのですが、GHQが日本の民主化に成功したのとは異なり、長年紛争地域であったアフガニスタンでは国としての成り立ちが脆弱で、識字率の低さや、道路などのインフラの不足など様々な問題から成果は上がっていない現実が述べられています。
本書は2012年に発売となっており、その後のイスラム国の盛衰や、アメリカとイランの対立には言及していませんが、本書で危惧されている事がまさに現実となっている感があります。
また、最前線の従軍取材紀は著者が乗車したアメリカ軍装甲車が地雷を踏み、その爆発に実際に遭遇した様子など、非常に臨場感あふれるルポでした。
著者はジャーナリストとして数々の賞を受賞した毎日新聞の記者であり、本書も根気よく様々な情報源にあたり執筆されている印象を受けます。本書で取り上げられているアメリカ、イラン、アフガニスタンだけではなく「持てる国」と「持たざる国」の対立の構図を理解するにあたり、非常に情報量も豊富で説得力のある1冊であると思います。続きを読む投稿日:2020.09.02
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