谷中・首ふり坂
池波正太郎(著)
/新潮社
この作品のレビュー
平均 3.0 (6件のレビュー)
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全11篇の短編集。
江戸市井モノが主ですが、池波さん得意の松代・真田家モノ、赤穂・浅野家モノもあります。昭和の小学校で見かけた銅像でお馴染みの、二宮尊徳(二宮金次郎)を偉人ではなく、人間っぽく描いた…「尊徳雲隠れ」も興味深かったです。
“鬼平”ファンとしては“夜兎の角右衛門”が登場する「看板」が良かったですね。女乞食・おこうの存在感が何とも言えない余韻を残しました。
表題作「谷中・首ふり坂」は、茶屋の女との色恋が武家の妻にバレて、その武家の妻が夫に襲いかかる場面があるのですが、男を守る為に茶屋女が武家の妻を持ち上げて川に投げ込むという、シュールすぎる展開に注目です。
他の短編も丁度良い感じに、人々の悲喜こもごもが描かれていて、(「内藤新宿」は歴史随筆な感じでしたが)どれも読みやすく楽しめました。続きを読む投稿日:2020.08.07
「池波正太郎」の短篇時代小説集『谷中・首ふり坂』を読みました。
ここのところ11冊連続で「池波正太郎」作品です。
-----story-------------
男たちの心意気が沁みる――。
「池…波」作品の醍醐味が詰まった傑作短編集。
養子に入った武家の妻にへきえきしていた男が、初めて連れていかれた谷中の茶屋の女に魅せられ、武士の身分を捨ててしまう表題作。
自堕落に暮らしていた息子が、濡れ衣を負って処刑された父の敵を討とうと決心した途端に人柄が変わってしまう『夢中男』。
そのほか『尊徳雲がくれ』 『へそ五郎騒動』 『舞台うらの男』 『かたきうち』 『伊勢屋の黒助』など、全11編を収める傑作短編集。
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1960年(昭和35年)から1970年(昭和45年)に発表された短篇や掌編、エッセイ11篇が収録された作品… 比較的初期の作品ですね。
■尊徳雲がくれ
■恥
■へそ五郎騒動
■舞台うらの男
■かたきうち
■看板
■谷中・首ふり坂
■夢中男
■毒
■伊勢屋の黒助
■内藤新宿
■解説 八尋舜右(やひろしゅんすけ)
「二宮金次郎」は、悪役人の妨害があったことから、仕法家としての大切な仕事を放り捨てて野州(栃木県)桜町の陣屋を出奔、たまたま川崎大師で自殺をしようとしている女「おろく」を助け、身の上話を聞いているうちに情感をそそられるが、「おろく」の狙いはそこにあり、「金次郎」に金をせびり始める… それでも、「金次郎」は、「おろく」との情事に溺れながら、愚痴を聞いてもらううちに、起死回生の対策を思いつき、実行に移す『尊徳雲がくれ』、
「児島右平次」は、松代十万石の権勢をほしいままにし、藩政を私している「原八郎五郎」を斬ろうとするが、「原」がいなかったため仕方なく藩主「真田伊豆守信安」の愛妾「お登喜」を襲う… 「森万之助」にとって「右平次」は旧知の仲であり、「原八郎五郎」の政治手法に異を唱えているのも一致していたが、藩主「信安」の上意により、「万之助」は「右平次」の追っ手に任命され、「万之助」が気の向かないまま「右平次」を追うことになる『恥』、
信州「松代藩」は倹約を重ねており、それが家風となっていた「山崎家」へ「平野家」の次男だった「小五郎」は養子として迎えられ、質素な生活を過ごしていたが、ある日、「関口喜兵衛」がやってきて、その倹約ぶりを嘲笑する… 「小五郎」は、藩主の側に仕える「関口喜兵衛」の口から出たその言葉を見過ごすことが出来なくなり、ある決断をして行動を起こす『へそ五郎騒動』、
幼いときから器用で、見事な細工物をつくることが得意だった赤穂「浅野家」の「服部小平次」が、京に勤めているとき、家老の「大石内蔵助」と知り合い、二人は連れだって遊びに出かけるようになるが、ある時、「小平次」の内職が発覚、「内蔵助」に叱責されたことから、売り言葉に買い言葉で、「小平次」は「浅野家」を退身… その後は、「鍔屋家伴」と名を変え道具屋となった「小平次」の視点から『忠臣蔵』の裏側を描いた『舞台うらの男』、
「鬼塚重兵衛」は「森山平太郎」の命を狙っていた… 敵討で本来狙われているのは「鬼塚重兵衛」であったが、「重兵衛」は返り討ちにしてやろうと待ち受けており、剣術に自信のない「平太郎」は、本心では「重兵衛」に会いたくないと願っていた、その「重兵衛」の財布を盗もうとした「六助」が片腕を斬られてしまう事件が発生したことから、二人の運命が大きく変わっていく『かたきうち』、
盗賊「夜兎の角右衛門」は盗っ人の三ヵ条を守る本格の盗賊を自認していたが、ある日、その振る舞いに感心して馳走した右腕を失った女乞食に、その理由を聞き顔面蒼白となる… そして、自ら火付盗賊改方の長官「長谷川平蔵」のもとへ。『鬼平犯科帳』シリーズの先駆けとなる短篇『看板』、
妻「満寿子」に辟易していた「三浦源太郎」は「金子辰之助」にそそのかされて、鬱憤晴らしに谷中の岡場所に繰り出し、そこで「源太郎」についたのは「おやす」という大女をとても気に入ってしまう… 「源太郎」は頻繁に「おやす」と会うようになるが、それに気付いた「満寿子」は稽古用の樫の薙刀で「おやす」に襲いかかる。武士の身分を捨ててまで、惚れた女との生活を選ぶ『谷中・首ふり坂』、
金貸しをしていた父「十右衛門」が、「小村郡兵衛」の取り立てに行ったところ、そのような借金をした覚えはないとしらを切られ、この件は訴訟に持ち込まれたが、「郡兵衛」の巧みな企てにより、状況は「十右衛門」に不利になり死罪を言い渡されてしまう… 父の金をくすんで遊んでいた息子の「林小十郎」が、父の無念を晴らそうとする『夢中男』、
幕府の表御番医師「吉野道順」のもとに、かつて嫁にもらおうとしていた「お千代」から「大事なことがあるからすぐに会いたい」と書かれた手紙が届けられる… 「お千代」に会った「道順」は、「お千代」からある人物を毒殺したいので毒薬が欲しい、毒薬をくれないと昔のことを洗いざらい喋る脅される『毒』、
魚屋の「弥吉」は病気で瀕死の状態であったが、金がなく医者も呼べない… そう思っていたある日、枕元に小判が三枚置かれており、そのおかげで快復した「弥吉」は、後日、馴染みの店に顔を出し、そこに居着いている黒猫の「黒助」のツラを拝もうと思っていたのだが、「黒助」は小判を盗もうとして殺されていた。「弥吉」と黒猫の「黒助」を描いたファンタジックな『伊勢屋の黒助』、
「徳川家康」が江戸に入府した際に、「青山忠成」をもって厚木大山道(青山通り)を警備させたのと同様、「内藤清成」に甲州街道筋を警備させた折りに、与えたのが現在の新宿だったことから、現在の新宿は、かつては内藤新宿と呼ばれてい… 「内藤氏」に与えられた土地は、現在でいえば、東は四谷、西は代々木、南は千駄ヶ谷に及ぶ広大なものだった。新宿の成り立ちについて語った歴史随筆風の作品『内藤新宿』、
比較的初期に描かれた作品だからか… 「池波正太郎」作品にしては、やや物足りない感じがありましたね、、、
でも、後の『鬼平犯科帳』シリーズの原点となった『看板』や、力持ちで大女の農婦が登場する『谷中・首ふり坂』や、牛蒡のような女・便牽牛が登場する『夢中男』のように、その後の作品でも登場する人物に類似したキャラが登場するのが興味深かったですね… 印象に残ったのは、意外な「二宮金次郎(尊徳)」像が描かれた『尊徳雲がくれ』かな。続きを読む投稿日:2023.05.01
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