ヒトラーの側近たち
大澤武男(著)
/ちくま新書
この作品のレビュー
平均 3.4 (12件のレビュー)
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ある組織で、有能な部下に恵まれ有能な指導者が成功し、そして独裁し、徐々にイエスマンだけが残り、最後は惨めに終わる。
この歴史が常に繰り返されてきた。歴史という記述から学ぶことはできるが、自分と同時代の…人々の現実として、日本の多くの企業の中で同様のことが起こるようになって久しい。私自身もこの十年くらい独裁者とイエスマン側近の姿を身近で見るようになったし、見聞きする日本のいろいろな組織の話にもそのような例が多くなった。先日東京の本屋でこの本を見かけて、究極の一例としてのナチスドイツとヒトラーという典型の中で、側近たちとヒトラーの日々がどのようなものだったのか興味を持って購入した。
ゲッペルス、ゲーリング、ヒムラー、ボルマンといった有名な人たちも当然登場するが、エッカルト、ベッヒシュタイン夫人、ハンフシュテンベルグ、グラーフ、ショイブナー、ワグナー家のヴィニフレットなどのナチス党の発展に寄与した人たちとの関係などは、初めて知ることが多かった。経済を統制したシャハトの仕事は、機会があれば別の文献等でもう少し調べてみたい気もする。
本書はヒトラーが第一次世界大戦で従軍した後から、ベルリンの地下壕で死ぬまでを時系列でたどりながら、彼の周囲に居た人々について説明をしてくれるのでとてもわかりやすい。
本書のエピローグのタイトル「彼らはどこで誤ったのか」が本書のテーマであり、読者の興味である。このエピローグをいくつかにわける小見出しは「国民の不満と過激な若者集団」「個人崇拝のエスカレート」「反ヒトラーは、むしろ軍部から」「ドイツの悲劇」と連なり、著者の結論は「問題はヒトラーを囲む彼らはあまりにも長く総統の独裁に黙ってつき従ってしまったことである。」ということだが、これは敗戦が決定的になっても2年間にもわたって事態を放置された「ドイツの悲劇」の原因として述べた結論であって、第二次世界大戦やユダヤ人の虐殺をもたらした原因として述べているのではない。
著者はこう結んでいる。
「二〇一〇年十月から今年の二月にかけて、ベルリンのドイツ歴史博物館において「ヒトラーとドイツ人」という異例の展示会が開催されたが、そのなかでヒトラーに最後までつき従ってしまったドイツ国民のテーマは、まだまだ尽きることのない反省と議論と回顧の対象であることを明らかにしている。」「ヒトラーの手先となってしまった側近たちは、その問題の中心的存在なのである。」
最近になって、「ヒトラー~最期の12日間~」や「ワルキューレ」など、ヒトラーに絡む映画がつくられているのは、理由はともあれ同様の関心を持つ人が世界にいるということなのかもしれない。
誰もが自分が「愚かな独裁者」や「暴君」になりたいとは思っていない。なりたくないものに進んでなって行ってしまう人間の性質を学ぶには、他人の事例を知り、自分で経験を積んでいくしかない。その「知りたい」という欲求が高まっている事実が背景にあるといえよう。
第二次世界大戦終結後これまでの70年間は、私達世界の人間のある多数にとって反省と議論と回顧の期間であったのだろうが、今の我々の身の周りはすでにその反省と議論を生かした行動が求められる時代になっているのである。
独裁者の暴走を防げるのは側近だけであり、側近の無為を防げるのは独裁者だけである。絶望的なこの命題を解く鍵はあるのだろうか?
つい最近になって読んだ「動的平衡」にも述べられているように、生命体は自らの分子を高速で入れ替える流れによって自己を維持させているのである。私は一つのヒントをそこに見いだしている。
もちろん単に「若返り」がすべてを解決する訳でもないし、唯一の方法でもない。しかし生命を維持させているのが多様性、補完性であることは広く応用が利く知識である。
ロンメル(本書では「ロムメル」)将軍は国民に人気があり、名声の高いままに死んだ。ケネディや山本五十六もそうだった。しかし彼らは自ら進んで退場したのではない。彼らがそのまま生きていたら彼らの名声がどうなったかはわからない。
独裁者の陥穽は自身の心の中にある。それは独裁者の崇高な使命とはかけ離れた小さな個人の心理に関係がある。「もし人から好かれたまま死にたいのなら、前と外を向いたまま去って行くことだ」としか今の私には言えない。数多くの事例はそれを示している。
一度頂点にたってしまったら、死なずとも何らかの方法で消えるしか道はないのだ。今のところ。
本書を読んでその私の考えが変わることはなかった。続きを読む投稿日:2012.07.29
ヒトラーとナチス・ドイツのことは、授業で習った以上には知っていた。
ヒトラーがあれほどの権力を握るために、
側近たちが果たした役割は大きい。
それ以上に、あれほどの事をやらかした裏にも、
側近たちの…存在も非常に大きい。
イエスマンばかりの側近たちに囲まれて、
ヒトラーは優越感に浸っていたのだろうか。
側近たちは、権力が欲しいためだけに、イエスマンで居続けたのだろうか。
せめて側近の誰かには、間違っていることを鋭く糾弾してほしかった続きを読む投稿日:2021.08.20
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