この作品のレビュー
平均 3.7 (187件のレビュー)
-
読む人を選ぶ気もするが、いい刺激をもらえる本
新書というのはターゲットが難しいな、といつも思う。
第一章で、「筆者と知識や世代を共有するオタクたちにも向けられているが、同時に、オタクのことなど考えたこともないし、考えたくもないと思っている多くの読…者にも向けられている」とある。
私は、この想定と内容は少々ズレがあるかな、と思った。
オタクに興味があるか否か、筆者と同年代であるか、それは問題ではないと思う。
が、「知識を共有する」という点がネックになるのではないかと思う。
それはサブカルチャーの知識ではない。現代思想の基本的な知識だ。
タイトルの「ポストモダン」でわかると思うが、著者は現代思想の人であり、
そうした視点からオタク系文化を考える本である。
「オタク」に関しては、日本のみならず、フランスやアメリカなど世界各地で
社会学者や思想史家が取り上げている。
本書も、新書であるとはいえ、やはり「現代思想としてのオタク史」である。
おそらく、著者としては丁寧に説明しているつもりであろうが、紙面の関係上、
思想史に馴染んでいない人に親切なものであるとは言えない。
たとえば、
近代=西欧に対してポストモダン=日本があり、日本的であることがそのまま歴史の最先端に立つことを意味する、
というこの単純な図式は、歴史的には、戦前の京都学派が唱えた「近代の超克」の反復だと言える。
という一節がある。そして、これに関してそれ以上の説明も注釈もない。
今は京大文学部の学生でも「京都学派」という言葉を知らなかったりする。
それを注釈なしに使うということは、それなりに読者を選ぶ本である。
もっとも、本書が雑誌『ユリイカ』に掲載されていた文章をベースにしているということを最後の方で知り、
それならば、と納得した。多分、『ユリイカ』の読者というのは、
個別的なサブカルチャーについては知らなくても、サブカルチャーをアカデミックに論じるのが好きな人が多い。
私は『ユリイカ』や『現代思想』を時々読んでいるが、実は「難しいなあ」と思うことが多いので、
本書も少し難しく感じた。
ただ、本書でも先行研究として何度も取り上げられる大塚 英志のサブカルチャー論をいくつか読んでいたこともあり、
少し入っていきやすいところもあった。
と、思うと、万人におすすめできる本ではないなあ、と思ったりもする(苦笑)
サブカル論としては大塚英志が先の方がいいかも。
問題提起は面白い。
日本のアニメやゲームなどのオタク系文化が世界に広がっている。
我々はそれを「日本的」と思ってしまうが、それは本当に「日本的」なのか、
そもそも「日本的」とはどういうことなのか。などなど。
ボードリヤール、リオタールなどの理論を用いて日本のオタク文化を論じるのは、なかなかに魅力的。
具体的な話としては、ガンダムファンが求めるものと、
エヴァンゲリオンファンが求めるものの違い、
その背景には何があるのか、など。
本人が言っているので、あげつらうこともないかもしれないが、「オタク」が主に男性のオタクを考察対象としており、
女性のオタクについての考察はあまりされていないのはちょっと残念である。
オタクの思考や行動というのはジェンダーの差が大きく出る分野だと思うから。
まあ、そこも著者指摘しているのだが。
おそらく、社会学とかを専攻してサブカルチャー論で卒論を書くような学生は、
著者の主張を先行研究として何らかの評価を下さなければならないのだろう。
そう思って読むと、自分が著者に対して何か建設的な批判をすることができるほど、現代思想について知らないということに気付いた。
例えば、リオタールの「大きな物語の凋落」は何かとよく聞くが、実は元のリオタールの著書『ポストモダンの条件』を読んでいない。
だから、著者の論じ方が適切なのか、今の私には判断できない。
途中からよくわからなくなり、もう半ば諦めながら一応最後まで読んだのだが、
注や参考文献に挙がっている本を見ると、そちらを読みたいという気持ちが高まった。
本書を読まなければリオタールやボードリヤールの理論を全然わかっていないことにすら気付かなかっただろう。
そういう意味で、いい刺激をもらったと言える。
続きを読む投稿日:2014.11.28
-
モダンは大きな物語があった。この大きな物語とは技術的革新による科学や工学の信仰、社会的イデオロギーの信仰などのことを指し、簡単にいえば万人に共有された思想や観念のようなものである。
その大きな物語…が上手く機能しなくなり、社会全体としてまとまりが無くなる。この大きな物語の凋落後をポストモダン(近代の後)と定義し、ポストモダンでは、どのような社会の形が残っているのか。オタク系文化に共通する事柄から、ポストモダンに残った社会の形、そして今後の社会の姿をを紐解いていく本。続きを読む投稿日:2024.03.26
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。