ドストエフスキー『悪霊』の衝撃
亀山郁夫(著), リュドミラ・サラスキナ(著) / 光文社新書
作品情報
新訳『悪霊』刊行記念! ドストエフスキー最大の問題小説をめぐり、日本語新訳の翻訳者と、ロシアにおける研究の第一人者が、作品の「魂」について語り合う。天才、美貌、冷徹、少女凌辱、毒殺、奇行、世界遍歴――数々の謎のエピソードで語られる主人公・スタヴローギン。ドストエフスキーは彼を「自分の魂の中から取り出した」と言った。それはなぜか? ドストエフスキーは彼に何を託したのか? 刺激に満ちた文学論。
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商品情報
- シリーズ
- ドストエフスキー『悪霊』の衝撃
- 著者
- 亀山郁夫, リュドミラ・サラスキナ
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社新書
- 書籍発売日
- 2012.04.20
- Reader Store発売日
- 2012.06.15
- ファイルサイズ
- 0.5MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (4件のレビュー)
-
私にとって『悪霊』はドストエフスキー作品への入り口であり、大学の講義のテキストとして強制的に読まされたにもかかわらずその破滅的な物語の魅力に今でもとりつかれている。この本は亀山郁夫先生とリュドミラ・…サラスキナさんのトークセッション及び後日亀山先生がメールで送った質問表と、サラスキナさんの回答で構成されている。
例えばスタヴローギンと『罪と罰』のラスコーリニコフはどちらも美形の青年として描かれているが、最初から自殺する道しかないスタヴローギンと、ソーニャによって救われたラスコーリニコフはどう違うのか。『罪と罰』から『悪霊』までの5年間に、作家の心理にどのような変化があったのか。亀山先生の数々のディテールへの突っ込みと、サラスキナさんのロシア人研究者ならではの回答はどれもドストエフスキーファンにとってはたまらなく面白いものである。彼女の「一線を越えた人物の本質とは、犠牲者の目で世界を見ることがないというところにある」という一文はとても印象に残っている。また、スタヴローギンが選んだ縊死は、キリスト教社会では最も醜い自殺方法とされる(ユダと同じ)という指摘も興味深かった。
この複雑で死の色が濃い物語を「全編に漂う、登場人物相互の不信感と敵対心」「この小説はある町の”集団ヒステリー”を描いている。僭称者たちによる権力の乱用によって町の人々の心に入り込み、一人残らず混乱させていく」と要所要所で総括しているのも自分の理解と一致していて深くうなずける。
『悪霊』のモデルはネチャーエフ事件であるが、当時のロシアの民主主義者たちはこの小説の登場人物のようにはならないと反発。だがやがてテロリズムが横行し、政治的な動機を持つ殺人は正当化されて小説が示した教訓は生かされなかった。ここは難解だが非常に読みごたえのあるところ。
ただ、過去の著作からも大変なロマンチストであることが窺える亀山先生による長いプロローグと終盤の「アウラを求めて」の章がかなり読みにくく、サラスキナさんによる「アイスランドのスタヴローギン」もあまり興味が湧かなかった。本編はとても面白いだけにそこが残念。続きを読む投稿日:2021.11.12
ドストエフスキーの傑作小説、『悪霊』について、あの亀山郁夫氏とロシアの研究者であるリュドミラ・サラスキナ氏の対談、往復書簡、論文が収録された本です。『悪霊』のレビューでも書いた通り、この小説はさらっと…読んだだけですっきり腑に落ちるものではありませんので、このような「まとめサイト」が出版されていることはとてもありがたく思いました。
対談と往復書簡は、主に亀山氏が問いかけ、サラスキナ氏が応答するという流れになっています。なぜニコライ・スタヴローギンのような人物が要請されたのか?という根本的な疑問に始まり、小説のストーリーとはあまり関係のない細部に関する質問まで、とにかくよく練られています。亀山氏の『悪霊』に対する思い入れは異様なレベルのものがあるように感じました。
リュドミラ・サラスキナ氏の論文は、ドストエフスキーがちらっとストーリーに忍ばせた「アイスランド」というディテールを掘り下げていく内容です。正直に言うとこの論文はわたしにはものすごくマニアックなお話のように映り、あまりよくわかりませんでした。
最後に収録された亀山氏の論文は、『悪霊』を善と悪のあいだにある「基準」ならびに「アウラ」の喪失、という軸で読み解いていくものです。徐々に、スタヴローギンとは何だったのかという多くの読者の問いに対する答えが導かれていく構成になっています。
"スタヴローギンは、ニヒリズムに対して批判的である一方、キリスト教の信仰に対しても冷静に距離を置く。だからスタヴローギンは、『悪霊』という物語のすべての悲劇の根本原因であると同時に、そこからは完全に超越した存在でもある(…)スタヴローギンとは、楽園への帰還を拒否された堕天使=悪魔である"続きを読む投稿日:2014.06.14
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