黄金の王 白銀の王
沢村凜(著)
/角川文庫
作品情報
二人は仇同士であった。二人は義兄弟であった。そして、二人は囚われの王と統べる王であった──。翠(すい)の国は百数十年、鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)という二つの氏族が覇権を争い、現在は鳳穐の頭領・〓(ひづち)が治めていた。ある日、〓は幽閉してきた旺廈の頭領・薫衣(くのえ)と対面する。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられた二人の王。彼らが選んだのは最も困難な道、「共闘」だった。日本ファンタジーの最高峰作品!!(〓は禾偏に魯)
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商品情報
- シリーズ
- 黄金の王 白銀の王
- 著者
- 沢村凜
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2012.01.01
- Reader Store発売日
- 2012.04.13
- ファイルサイズ
- 0.9MB
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この作品のレビュー
平均 4.4 (153件のレビュー)
-
務めを果たし続ける、ということ
昔々、ある国に仲の良い双子の王子たちがいた。しかし、大人になると、彼らは王座を巡ってあらそった。
争いは彼らの代では終わらず、その子孫も憎み合い、殺し合い、そんな時代が100年以上続いた。
旺厦と鳳穐…。それが二つの氏族の名前。
どちらの王統が王となるのかをめぐり殺戮が続く中、鳳穐の王は旺厦との和睦を申し出る。
旺厦の頭領は、一族を皆殺しにした鳳穐を憎みながらも、和睦を受け入れ、
鳳穐の王の妹との縁組みにより、長年の対立は終わる。
・・・あれ?
まだ、全体の五分の一くらい?
そう、実はここからが本題。
「務めを果たし続ける」という言葉を義兄弟となった二人は使う。
和睦とは一時になしえることではなく、なし続けなければならないこと。
「維持」というのは、小説としては地味なテーマだ。
が、現実的に考えると一番重要なものである。
秦の始皇帝の成し遂げた中華統一も、豊臣秀吉の成し遂げた天下統一も、
結局のところ、続かなかった。
多くの場合、小説家は「統一」か「崩壊」に焦点を当てて小説を書く。
その方がドラマチックになるからだ。
が、この物語は「和平の維持」に重点が置かれている。
対立は終わった。
そのはずである。が、快く思わないものはたくさんいる。
それが、和解の直後に現れるとは限らない。
平和に見えて、水面下で憎しみをあおり、「敵」に報復しようとする者もいる。
王たるものは常にそれに目を配っていなければならない。
そして、降伏して「敵」の義弟となった旺厦の頭領はどうすればよいのか。
自分を担いで再び旺厦を立て直そうとする「忠臣」たちに対して、どうすればよいのか。
そんな話である。
地味で堅実なテーマである。
が、それをテンポよくドラマチックに読ませるところに、作者の力量を感じた。
思考回路がしっかりとした歴史小説や大河ドラマ系。
ただひとつ、難を言えば、この義兄弟二人の考え方が、非常に賢明で、合理的で、達観しているのである。
最終的にそこに至るのはかまわないのだが、本書序盤あたりですでに、
「上に立つ者として真に必要なこと」を理解している二人には少々違和感があった。
何が彼らをこんな人間にしたのか?そこが気になった。
が、そこを膨らませると「和平に至る道」が中心となり、「和平の維持」が付け足しのようになってしまって、
本書の目の付け所の面白さが薄くなり、単純な成長物語になってしまうのかもしれない。
「務めを果たし続けるのは、華々しく死ぬことよりも、ずっと困難なのだ。」
と、旺厦の頭領は言う。
そんなことを言って鳳穐に従う頭領の姿は、旺厦の忠臣たちには弱腰に思える。
鳳穐の忠臣たちも後顧の憂いを断つために旺厦を滅ぼせと言う。
そんな忠臣に苛立つ。我慢する。誰かが暴走する。それを一番穏健な形で抑える道を考える。
耐える。いろいろ耐える。
何でこんなに立派な人になったのかはよくわからないけれど(笑)、
王と義弟の冷静な判断と忍耐力には心を打たれる。
いつのまにか短絡的な忠臣たちにイライラし、二人の努力が実ることを祈っている自分に気付く。
成長物語無かったけどいいか、と思えたりする(笑)
この作者の論理的な思考は結構好みなので、別の作品も読んでみたいと思った。
続きを読む投稿日:2014.12.01
-
骨太な歴史物語
本書はタイトルと表紙イラストに魅かれ購入。軽い気持ちで読み始めたのですが、大きな間違いでした。対立する二つの氏族と国を、二人の王が一つに統べるまでの、その子・孫に至るまでの長い物語は、かつてよく読ん…だ歴史書を彷彿させました。
歴史テイストを取り入れただけの甘い話ではないです。安直な人間関係で終焉しない、本当の歴史書として覚悟して読んでください。「終章」を読み終えた時、国を統一するとはこういうことなのだと知ることができる筈です。
その国もまた時の流れの中で、新たな戦いが生まれ混沌としていくことは、歴史の自明なのですが、本書は小説(物語)であり、以後の歴史が語られることはありません。それが救いです。
続きを読む投稿日:2013.11.10
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