「縮み」志向の日本人
李御寧(著)
/講談社文庫
作品情報
日本人がはじめて開発し、世界に送り出した商品は扇子であった――。卓抜な視点で日本人の「縮み志向」を鮮やかに説き、日本文化の本質や日本が工業化社会のトップに躍り出ることができた秘密を明快に分析する。「拡がり」に弱い日本的特性も指摘して、“数ある日本人論のなかでも最高傑作”といわれる名作。
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商品情報
- シリーズ
- 「縮み」志向の日本人
- 著者
- 李御寧
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 1984.10.15
- Reader Store発売日
- 2012.03.30
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 348ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (3件のレビュー)
-
異色の日本人論。結びは感動的ですらあります。
日本人ほど日本人論が好きな国民はいないと言います。そして数多くの本が出てはいますが、どれを読んでも、ふ~んとは思いますし、納得できる部分もありますが、ま、そんなもんかなというのが、誰しも思う正直な感…想ではないでしょうか?
それでこの本です。このタイトル、そして著者が韓国の人であることから、批判的な本なのかと思っていました。ところがどっこい、そうではありません。読み終わってみて、まさか、この手の本で感動するとは思ってもみませんでした。流石は名著と言われるだけのことはあります。
まず、著者の膨大な知識と教養に驚かされます。古事記、日本書紀等は勿論、国寄せ神話も出てきますし、俳句、短歌は言うに及ばず、古典落語にも精通していらっしゃることがわかります。そして、当然、日本文化には欠かせない歌舞伎、茶道、華道、庭園造り等々においては、私の知らない人の名前や事柄が沢山出てきて、それを一つ一つ調べながら読み進めていると、興味深い内容に先が読みたいにもかかわらず、なかなか前に進まなくて閉口しました。
さて、内容の方はというと、日本人論を語るには西洋との比較ではなく、隣国である中国、韓国と比較した方が明確になるというコンセプトに基づき、日本文化を鮮やかに論じていくものです。
最初の内は、「縮む」というより「小さい」ものが日本人は好きなのかな?つまり志向は、嗜好ということかなと思いながら読み進めていきました。雛人形、扇子、こけし、姉さま人形(若い人わかるかな?)、お弁当文化に盆栽。勿論、うん?そうかな?と思う部分もありますが、トランジスターラジオや電卓、ウォークマンの発明まで、至極納得のいく事柄ばかりでした。ことに、啄木の歌からの入れ子志向を説かれる辺りは、まさに目から鱗が落ちます。
そして次第に論点は、日本人のまさしく「縮み」志向に移っていきます。この「縮み」とは小さくするというより、一つに集約するということですね。「詰めていく」という言葉にも、それは現れているというわけです。そうでないものは、「つまらない」と言いますな。この一つに集約していく文化の特性を忘れた時、日本は不幸になると説きます。
日本の領土的拡大路線は先の大戦によって、とりあえず終わりました。でも、その後、西欧文明に追いつき追い越せと駆け足で生きてきた日本はどうなのでしょうか。
著者は言います。どうあがいても日本人は白人にはなれないのだから、もっと東洋人であることを自覚すべきである。このままではコウモリになってしまう。「縮み」から「拡がり」に転換し、それが失敗する時、日本ばかりでなく隣国も不幸になる。秀吉の朝鮮出兵、韓国、満州の植民地化、太平洋戦争等々。んじゃ、どうするか?
そこで最後に引用されるのが「古事記」のなかに出てくる「枯野の船」の話です。この話は、最後に木から琴をつくり、その音色があまねく世界に響き渡ったと結んでいます。木で船を作って世界中に行動範囲を広げて交易したところで、たかがしれている。それよりも、形の上では縮んだ姿である琴のように、その音色、つまりは美しい日本文化こそを世界中に広めて欲しいと、著者は結んでいるのです。また、一方、マザー・テレサの言葉も引用されいます。「この地球上では二つの飢えの地帯がある。一つはアフリカであり、いま一つは日本である。前者は物質的な飢えであり、後者は精神的なそれである。」
この本は20世紀に書かれたベストセラーです。そのため、現状の分析や解説は、現在とそぐわない箇所もありますが、逆に、その頃と何も変わっていない実情にもびっくりもします。まぎれもない不朽の名作でることは間違いありません。続きを読む投稿日:2015.04.25
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比較文化論
「縮み」というキーワードで日本文化の様々な容態を批評論評している。韓国文化や中国文化との対比をさせている点が面白い。随分と昔の本ではあるが、多くの点で現在でもその鮮度を失っていない。もっとも日本経済が…衰退しつつあり、韓国経済が基調としては上り調子な点が、この本が書かれた当時と大きく異なっているが。
記載されている主張には納得できるもの、納得できないもの様々であるが、縮み->詰め込み->全体主義.個人の埋没という点は今回のコロナ禍で何度も言われている「同調圧力」と同根と思いひどく納得してしまった。紋章 社章にも同じ流れがあるが、昭和から平成令和となってこちらの方は意識が変わってきたかな。紋章好き->名刺好き->象徴好き->天皇制の流れには納得しがたいものがあるが。続きを読む投稿日:2022.07.13
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