成熟社会の経済学 ――長期不況をどう克服するか
小野善康(著)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.1 (21件のレビュー)
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別にイロモノではないと思う
管政権の経済政策ブレーンをつとめ、「増税で景気回復!」みたいな主張が切り出して取り上げられて話題になったりもしましたが、もう少し奥があるようなので読んでみたものです。
財政支出重視だからケインズ派な…のかな?と思っていましたが、そういう訳ではないようです。ケインズ派の想定する不況は「短期」の現象ですが、こちらは「長期」の不況を想定しているとのこと。さらに乗数効果への批判のところで分かりましたが、財政支出も増減税もぜーんぶクラウディングアウトしてしまいますよ、という所はゴリゴリの新古典派。けっきょく財政によって創り出されるところの所得移転以外の効用そのものが問題であり、そこから経済成長・雇用確保ができると主張しています。発想の根っこは新古典派に近いですが、供給力は足りているとの認識で需要サイドを問題にしているところと、貨幣への偏愛を問題にしているところとがケインズ風味でしょうか。
お金を保有したくなってしまう欲求にはキリがないというのがとにかく大事なポイントのようで、しかもこの場合の「お金」は通常の意味での貨幣に限りません。本書ではあまりそこは直接に解説されていませんが、ところどころの記述から推測するに、株だって土地だって価値を表象していて取引がされるのであれば「お金」的要素があると考えてよいみたいです。そうなると、お金への欲望が土地や株に向かえばバブルが起こり、お金そのものに向かえばデフレと不況が起こる、と。両者はコインの裏表でしかなく、背後にあるのはモノ・サービスに対する供給力過剰と需要欠如という訳です。これは肌感覚的に説得力がありますし、スマートな理論ですね。
かと言って、、、じゃあ需要不足を解消するために、政府が高齢者へ現物支給するだとか言われると、「ホントにそこまでのことなのか?」と思ってしまいます。いや、議論の方向性は分かります。社会保障にしろ震災復興にしろ環境にしろ、ある程度やった方が良さそうで、政府がやることでよさそうで、今現在十分にできていないことはたくさんあるでしょう。でも、この本の議論はあんまりに極端で引いてしまうところもあります。そこまでしないと需要を見出すことができないのでしょうか?
なお、金融緩和の効果に対しては否定的ですが、金融政策について記述されている分量自体が少ないし、議論もなんだかフワッとしてここでは力が入っていない感じです。アベノミクスへの評価もちょっと聞いてみたい気がします。続きを読む投稿日:2013.11.08
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管政権の経済政策ブレーンをつとめ、「増税で景気回復!」みたいな主張が切り出して取り上げられて話題になっていたが、もう少し奥があるようなのでとりあえず読んでみる。
流動性選好っぽいのや財政支出重視でケ…インズ派なのかな?と思ったが、そういう訳でもないらしい。ケインズ派の想定する不況は「短期」の現象だが、こちらは「長期」の不況を想定しているという。さらに乗数効果への批判のところで分かったが、財政支出も増減税もぜーんぶクラウディングアウトしてしまいますよ、という所は新古典派的。けっきょく財政によって創り出される、所得移転以外の効用そのものが問題であり、そこから経済成長・雇用確保ができると。発想の根っこは新古典派に近いと思うが、供給力は足りているとの認識で需要サイドを問題にしているところ、貨幣への偏愛を問題にしているところが違う、かな?
お金を保有したくなってしまう欲求にはキリがないというのがとにかく大事なポイントだ。この場合の「お金」は通常の意味での貨幣に限らない。本書ではあまりそこは直接に解説されていないが、ところどころの記述から推測するに、株だって土地だって価値を表象していて取引がされるのであれば「お金」的要素があると考えてよいみたいだ。そうなると、お金への欲望が土地や株に向かえばバブルが起こり、お金そのものに向かえばデフレと不況が起こる。両者はコインの裏表でしかなく、背後にあるのはモノ・サービスに対する供給力過剰と需要欠如だ。これは肌感覚的に説得力があるな。
かと言って、、、じゃあ需要不足を解消するために、政府が高齢者へ現物支給するだとか、環境だ新エネだとか言われると、「ホントにそこまでのことなのか?」と思ってしまう。いや、議論の方向性は分かる。社会保障にしろ復興にしろ環境にしろ、ある程度やった方が良さそうで、政府がやることでよさそうで、今現在十分にできていないことはたくさんある。バカバカしい公務員人件費削減の自虐プレイなんかしていないで、多少は増税しようが何しようがそういうことにしっかり資源を投入することは必要だろう。でも、この本の議論はあんまりに極端で引いてしまうところもある。そこまでしなくとも需要を見出すことはできるのでは?具体的にどうしろとは言えませんが。。。高齢化しても供給力過剰は続くとの見方だが、そこは危ういのではないか。リタイア年齢を延ばす余地がどれほどあるか、いわゆるロスジェネで未熟練な労働者(あるいは失業者)が増えているであろうことなど考えるとどうだろう。
金融緩和の効果に対しては否定的だが、ここは分量も少ないし、議論もなんだかフワッとして説得力がない。しかし、こここそ、貨幣愛が株・土地に向かってしまう可能性を持ち出すと面白いのでは。
しかし経済学ではいろんな論争があるが、意外と最大公約数がありそうと言うか、政策の実施にあたってはその論争にケリをつけなくたってできることは多い気がする。小野理論は理屈は違ってもけっきょく処方箋はケインズ理論と似ているし、輸出で稼ぐことばかり考えていないで稼いだ国富で消費しろと言うと、野口悠紀雄とまで似たことを言っていることになる。続きを読む投稿日:2018.11.05
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