中途半端な密室
東川篤哉(著)
/光文社文庫
作品情報
テニスコートで、ナイフで刺された男の死体が発見された。コートには内側から鍵が掛かり、周囲には高さ4メートルの金網が。犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げた!? そんなバカな(^_^; 不可解な事件の真相を、名探偵・十川一人(とがわかずひと)が鮮やかに解明する(表題作)。謎解きの楽しさとゆる~いユーモアがたっぷり詰め込まれた、デビュー作を含む初期傑作5編。
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商品情報
- シリーズ
- 中途半端な密室
- 著者
- 東川篤哉
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社文庫
- 書籍発売日
- 2012.02.20
- Reader Store発売日
- 2012.02.17
- ファイルサイズ
- 0.2MB
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この作品のレビュー
平均 3.4 (87件のレビュー)
-
ユーモア・ミステリのスタイルはデビューの前から
全作品、いわゆる安楽椅子探偵モノの体裁をとっており、読みやすくまた後味も悪くありません。
時間つぶしに肩肘張らないお手軽な謎解きミステリを、という人に向いていると思います。
≪収録作品≫
●中途半端な…密室
連続婦女暴行事件が起きている町で、金網で囲まれたテニスコート内で腹部をナイフで刺され死んでいる男が発見される。コートに入る唯一の出入り口は内側から鍵がかけられており、現場は密室だった。テニスコートに屋根がないことを除けば・・・。
中途半端な密室状況下での事件。金網を乗り越えれば出入りできるのになぜ内側から鍵がかかっていたのか?
不可能犯罪ならぬ不可解犯罪な謎に、名探偵十川一人が新聞記事を手がかりに挑む。
読み終えてみれば全ての手がかりがひとつにスーッと繋がっていたことに納得します。
奸智に長けた犯人の企みを看破するというトリック作品ではありませんが、都筑道夫氏の短編に似た味わいがあります。
●南の島の殺人
南の島「S島」にバカンスに出かけた友人の柏原則夫が体験した全裸殺人事件談を手紙で受け取った岡山の某大学の学生である「敏ちゃん」と「ミキオ」が、なぜ「全裸で死んでいたのか」の謎解きに挑戦する。
叙述トリックと殺人事件の真相に至るロジックを組み合わせた所に新鮮味がありますが、現地の人でしかわからないことが事件解決の鍵になっているので、誰もが解けるというわけでなく、少々ズルイ謎かなとも思います。
●竹と死体
古本屋でバイトをする「敏ちゃん」と退屈な敏ちゃんに呼ばれて来た「ミキオ」が、一面が無くなっていて売り物にならなくなった昭和11年の新聞記事に掲載されている東京で起きた老婆首つり事件。一見なんの変哲もない自殺と思いきや、その老婆は高さ20メートルの竹で首をつっていたのだ。地上17メートルの首つり死体。はたして自殺なのか他殺なのか。なぜ老婆は高さ20メートルの竹で首つり死体になったのか。「敏ちゃん」の推理が導き出す意外な真相とは。
新聞の一面を隠すことで、読者が容易に解決に至らないようにしている所に東川篤哉さんの苦心が見受けられます。
ミステリクイズ的なネタで、本編の中で一番(良い意味で)アマチュアらしい謎の作りとなっている作品といえるかも知れません。
●十年の密室・十分の消失
十年前の夏に密室状態の丸太小屋のアトリエで首つり自殺をした画家の中江陵山。十年後、母の死をきっかけに父の自殺の真相を知るため、中江美也子は途中で出会った大学生、柏原則夫と共に再び事件のあった緑雨荘に帰ってくる。
出迎えるのは、十年前の事件当時、緑雨荘いた叔父の中江孝太郎と使用人の老夫婦の3人。美也子を迎える老夫婦の顔はなぜか暗かった。
翌日の早朝、部屋の窓から見える丸太小屋のアトリエが雪が降り始めて十分で消失してしまうのを柏原則夫は目撃する。
密室と消失のふたつの謎、10年前の真実に、柏原則夫からの手紙を受け取った「敏ちゃん」と、手紙を声に出して読まされるために呼ばれたトホホな「ミキオ」が挑む。
密室と消失という、本格ミステリの中でも最も魅力的な謎ですが、謎の解決自体は、やや非現実的だと思います(消失)。
しかしこの作品は、「どのようにしてやったのか」ではなく、「なぜしなければならなかったのか」に重点を置いており、トリックに比重を置くとかえって作品のバランスを崩してしまうことになるので、これで正解なのかも知れません。
読み応えもあり、本編で随一、読後に事件関係者への思いをはせる作品です。
●有馬記念の冒険
有馬記念のテレビ中継を見ている最中に強盗に押し入られた被害者は、強盗に襲われたのはは有馬記念のスタート時間だったと言う。
しかし、事件現場から2.5キロ離れたアパートに住む有力容疑者は、その真向かいのアパートにいた若者二人の証言でスタート時間の2分半前には部屋にいたとことが判明する。2分半で2.5キロを往復することは可能なのか。
「敏ちゃん」が強盗事件の真相を暴くとともに後輩のピンチも救う。
本短編集で唯一、長編デビュー後の作品です。他の作品と比べユーモアはかなり抑えられております。これは編集者の意向なのかもしれません。その分、東川篤哉さんの魅力が減少しており、良くも悪くも、普通のアリバイ・本格ミステリになっているように思います。続きを読む投稿日:2013.10.05
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思い込みは禁物
短編が5作ありますが、結果は知ると何だそうなのか!と思わせる作品ばかりです。
ミステリーや推理小説をたくさん読んでいると、文章の流れから勝手に推測をして思い込んでしまいます。
書籍説明に書いている”男…の死体"って言葉を聞くと十中八九被害者と考えますよね?
その時点で作者の術中にはまってしまっているんです。
言葉巧みに、推理を導かれていくような感じですが、最後結末を見るとやられたって感じるんですが悔しさより爽快感があります。続きを読む投稿日:2013.09.27
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