―昭和史発掘―幻の特務機関「ヤマ」
斎藤充功(著)
/新潮新書
作品情報
日本にもかつて防諜、謀略を担っていた極秘の組織があった。その名は通称「ヤマ」。戦後これまでも世に出ることはなかった存在である。わずかながらの手がかりを元に生き残りの関係者や資料をたどっていくと、次第に驚くべき実態が露になってきた。信書の開封、電話の盗聴、スリを使った秘密文書の入手、時に人殺しすら……。そして定説を覆す、「二十世紀最大のスパイ事件」ゾルゲ一団の摘発の真相も明らかに。
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商品情報
- シリーズ
- ―昭和史発掘―
- 著者
- 斎藤充功
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2003.07.23
- Reader Store発売日
- 2012.01.27
- ファイルサイズ
- 2.4MB
- ページ数
- 190ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
幻の特務機関「ヤマ」の名称は何に由来するのか。 それは「山」と言えば「川」のヤマからとられた。ふざけてるわけではない。ただの秘匿名だから正式名称は違うし、そもそもそんな機関は存在しないのが表向き。
…
「ヤマ」は陸軍大臣直轄の防諜機関だったため、国内で諜報活動をするスパイを捕らえることに活動の主眼があった。
「ヤマ」の活躍により逮捕にいたった最大のスパイは、誰もが知るゾルゲだ。ゾルゲを逮捕したのは憲兵隊ということになっているが、電波探知のプロであった「ヤマ」の人間による執拗な調査、そして登戸研究所によって開発された新装備によって初めて可能にだった。
ゾルゲ事件についての本を読んだことがないので確かなことは言えないが、たぶんこのゾルゲ摘発を可能にしたのが「ヤマ」だというのが、新事実なのだろう。
スパイは本国にむけて必ず無線電波をつかって連絡をとらなくてはならない。それはできるだけ短く、そしてどこから発信しているのかをバレてはいけないのが鉄則だ。そして、その当時の常識では、これくらいの電波で、これくらいの時間だったら発見されないだろうと考えられていた範囲内だった。そしてその予想通り、憲兵隊には発見できなかったのだが、最新設備を使い、防諜訓練を積んだ「ヤマ」の人間には発見できたというわけだ。
吉田茂の近辺にも「ヤマ」は貼りついていた。吉田は戦前戦中を通して、親米英の立場をとっていたので、捜査、監視の対象となっていた。なんとか決定的な証拠をおさえたいということで、スパイを書生として潜り込ませていた。
吉田は米英を利する行動をおこしたわけではないので、犯罪を犯してはいないが、親米英派の一掃という政治的な駆け引きのなかで、逮捕されることになる。その際には「ヤマ」が集めた証拠が採用されている。
興味深いことに、吉田の家にはもうひとり中野学校出身の諜報員が書生として潜り込んでおり、そのあたりの事情は『私は吉田茂のスパイだった』という本に詳しいらしい(自分は読んだことはない) どうも、お互いがスパイだということは知らなかったようだ。
文献資料がほとんどなく、元機関員と関係者の口承だけで伝わってきた幻の機関なので、全貌がよくわからないのが現状だ。
明らかになる日があるのだろうか。続きを読む投稿日:2014.02.05
このレビューはネタバレを含みます
2003年刊。◆戦前日本に存在した防諜機関。その組織はトップシークレットで、活動内容も不明なまま現在まで推移。が、所属メンバーのメモが発見され、これに関係者のインタビューを加え、日本国内の防諜機関の実…像に迫る。◆なお、日本有数のスパイ摘発事件ゾルゲ検挙。この検挙を奏効に導いたゾルゲ所在地の特定に、特務機関「ヤマ」が重要な役割を果たしたのは興味深い。◆ただ、関係者が次々死亡する中、残存資料も乏しいテーマを、本書のごとく追跡し続けるのは困難な気がしなくはない。本書ですら「ヤマ」のさわりにすぎない内容だから。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2017.01.21
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