鼠 鈴木商店焼打ち事件
城山三郎(著)
/文春文庫
作品情報
利潤を追求する企業と、不況にあえぐ大衆、大衆を扇動するかのようなマスコミ。まさに今日的問題を、歴史上の事件を題材にえぐる。大正七年、一介の商店から三井・三菱と並ぶ大商社に成長した鈴木商店は、米の買占めを噂され、大衆をあおる新聞の論調もあって、米騒動の群集の焼打ちにあった。第一次大戦による好況から戦後の不況へ、そして昭和初頭の恐慌に至る激動の時代に諸悪の根源と指弾された同店の盛衰とその大番頭・金子直吉の劇的な生涯を描く異色作。
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商品情報
- シリーズ
- 鼠
- 著者
- 城山三郎
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 1980.01.01
- Reader Store発売日
- 2011.11.04
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- ページ数
- 366ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (13件のレビュー)
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鈴木商店の焼き討ちは新聞が煽ったものだったのか
神戸製鋼、日本製粉、帝人、ダイセル、Jーオイルミルズ、双日、IHI、昭和セル石油、日油等
鈴木商店記念館の協力企業は28流れを組む会社はさらに多い。最近まで知らなかったが自分の今いる会社も母体は東京毛…織と言う鈴木商店系列の紡績会社で、昭和2年に鈴木商店が倒れた時に整理委員を務めた賀集益蔵が設立時に常務、財閥解体後に分割された際に社長になっている。賀集が本書に出てくるのは焼き討ち後に駅に金子を出迎える一瞬だけだったが鈴木商店倒産後スフの製造が上手くできない新光人絹に帝人から技師が貸し出された記述がある。
鈴木商店の事実上の経営者でいけいけ拡大主義者の金子直吉、娘婿で近代経営を目指す日商の創始者高畑誠一、金子を信奉する土佐派と高畑を代表とする高商派の中を取り持つ支配人の西川文蔵の3人を中心に鈴木商店の拡大と没落を描いている。初版は1966年なのでもう50年も前だし、有名な米騒動の焼き討ちはさらに50年近く前の出来事なのだが城山三郎が存命中の人物にインタビューし鈴木商店が米の買い占めをしてたかを調べていくと、どうもはっきりしない。
1950年代の決定版と言える「米騒動の研究」の証言者を追うと新聞に書いてあった、噂が流れてたというばかりだ。「あくどいことをするやつはやっつけろと、いうことになったんじゃな」「そういう噂だったな。・・・いや、噂じゃない、実際やっとった。」「やっとるから、噂に流れてくるんや。」今なら風評被害と言うところだが煽ったのは寺内政権と後藤新平に近い鈴木商店を攻撃する大阪朝日新聞。捏造記事を掲載し記事を訂正しながらも自分のことは棚に上げそれも疑われる鈴木商店にも非があるとかく辺り昔からマキャベリズム的な体質は変わらないのかと思わせる。当時の新聞が公平とは言えないが朝日は同時期に日比谷焼き討ち事件の原因となる記事も書きポーツマス条約の講和に反対し結果としては日露戦争継続を煽っている。庶民の味方というポジションが欲しいだけなのか。
金子直吉自身には所有欲は無く、ただ国のためには鈴木商店が大きくなり産業を興し、従業員を雇うとまあ今なら割と当たり前の経営方針ながらいつかはわかると敵視されることに無頓着だった。それでも焼き討ち自体が没落の原因だったわけではなく拡大策のあまり資金繰りを借り入れに頼っており、第一次大戦で業績が急拡大したのに対し、不況と関東大震災が重なって資金繰りが行き詰まったのが直接の原因だ。それでも教科書のイメージのようなただの成り上がりではなく、鈴木商店そのものは破綻したが多くの企業が底から生まれている。
帝人元社長の大屋晋三などは入社すぐに樟脳と薄荷で1日百万円(1960年代換算で数億円)の取引を任されたとありかなり自由な会社だった。一方で事業の切り離しにしても、世間の目に対して廉価米への協力金の拠出にしても金子が一切受けつけなかった。破綻時に支配下、関係会社の総数は49社、総投資額は約10億に上り日銀券発行高に匹敵する額だった。続きを読む投稿日:2015.04.13
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業を営む者の鑑
今日、YAHOOニュースに鈴木商会を偲ぶ会合が催されたとあった。
若い人は「お家さん」で鈴木商会を知った人も多いだろう。
本作は鈴木商会の大番頭、金子直吉に焦点を当てた名作です。特に若手の男性ビジネス…マンに勧めたい。
実業家、企業家、起業家、経営者・・・どう称しても良いが、人を雇用し事業を営む者の、ある種の
理想像を私は金子直吉、鼠に見出す。「働きたい者に仕事を与えるそれが企業家の責務である」、この
言葉を口にした人物を、私は寡聞にして他に2人しか知らない。湯婆婆(鈴木敏夫)と池田勇人である。
アメリカ流の経営学に疎いが、わが国における企業の存在意義はこれが第一であろうと愚考する。
それと、ビジネスとはやはり個人のセンスだと思う。ビックデータやら、戦略分析フレームワークやら
結構だが、そこからは「BUY ANY STEEL,ANY QUANTITY,AT ANY PRICE.」は出てくるのだろうか?
男子たるもの生涯に一度は、このような業務指示を出す、または受けたいものだ・・・と思う人も多いの
ではないだろうか?そういう意味で若手の男性ビジネスマンに勧めたい。
城山三郎、吉村昭、新田次郎の3氏には原則、レビューを書くのは畏れ多く憚られるが、つい拙を枉げてしまった。城山三郎で言えば、本作を気に入った人は、石田禮助の「粗にして野だが卑ではない」もお勧めです。続きを読む投稿日:2015.05.27
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